米国商務省のジーナ・レモンド商務長官が2023年12月2日(米国時間)、米国カリフォルニア州シミバレーのロナルド・レーガン大統領図書館で開催された年次「レーガン国防フォーラム(RNDF)」の座談会に参加したことを商務省が公表した。その席にて同氏はNVIDIAを強く非難し、企業の収益より国家安全保障を優先させると述べるとともに、中国は史上最大の脅威であるとも述べたと複数の海外メディアが報じている。

米商務省は中国へのAI半導体の輸出規制を継続

それらによると、レモンド長官は対中半導体輸出規制の実施後に性能をやや落とし、規制をクリアしたAI半導体を再設計することで輸出を継続し収益を上げたNVIDIAを非難。「NVIDIAは今後、中国に先端半導体を供給しようとするいかなる努力も無駄になる。商務省は、中国による米国の最先端技術の入手、とりわけNVIDIAのAI半導体の入手を拒否する」と発言し、米国企業は収益よりも国家安全保障を優先する必要があると強調したという。また、NVIDIAが中国向けに性能を落としたAI半導体を改めて設計しなおした場合であっても、その製品は翌日には輸出規制下に組み込まれるだろうと警告したともしている。

輸出管理強化のために追加予算を議会に要求

このほかレモンド氏は、米国議会議員、シリコンバレーのハイテク企業、米国の同盟国に対し、中国による国家安全保障に不可欠な半導体チップや先端技術の入手を阻止するために協力を呼び掛けたという。

また同氏は、中国政府は史上最大の脅威であるし、米国の友人ではないことを強調し、中国が常時、米国の輸出規制を回避する方法を模索していることを踏まえ、商務省の当局者が日々、輸出規制の強化に向け、同盟国を交え協力して対応を進めており、こうした取り組みに応じて中国との輸出管理規制を効果的に執行するための予算追加を議会に要求したことも明らかにしたという。具体的には、商務省傘下の産業安全保障局(BIS)が輸出管理措置を進めるためには、さらなる予算が必要だとして「現在、戦闘機数機分の費用に相当する2億ドルしか割り当てられていないが、中国の脅威を真剣に受け止めるにはさらに多くの資金が割り当てられるべきである」と述べたという。

NVIDIA CEOが来日、岸田首相と面会

NVIDIAのJensen Huang最高経営責任者(CEO)は12月4日、日本を訪れ、岸田文雄首相を訪問。首相から日本国内でできるだけ多くのGPUの提供を要請され、「できる限り提供できるようにしていきたい」と答えたという。同氏によると、NVIDIAのAI半導体を活用している日本の企業と今後さらなる提携を進めていくとしたほか、生成AIと日本の製造業の専門知識、経験を組み合わせることで日本勢は強みを生かせるようになるとも語ったという。中国での販路拡大が厳しくなったことを踏まえ、日本などほかの地域での事業拡大を目指した動きと見られる。

米商務省が2024年1月に台湾で対中輸出規制の説明会を開催の可能性

このほか、台湾の半導体サプライチェーン関係者情報として台湾DigiTimesが、米商務省が2024年1月に台湾ならびに日本、韓国に対して、対中半導体規制に関する説明段を派遣することを予定していると報じている。

台湾では、新竹サイエンスパークと台南サイエンスパークで説明会が開催される予定で、台湾の半導体製造、IC設計、材料、装置産業に向けて、規制に関する詳細な最新情報を提供することを目的としたものとなるという。

また、この動きを受けて台湾政府経済部の王美花(Wang Mei-hua)経済部長(日本の経済産業大臣に相当)が、台湾の半導体業界の企業に向けて、米国が課すこれらの輸出規制に関して、「台湾のファブレスやファウンドリは、米国メーカー由来のEDAや製造装置を活用しており、米国の掲げる規則を守る必要がある」と呼びかけを行った模様だという。さらに、米商務省の台中半導体規制に関する書類は300ページを超えたものであり、台湾企業がそうした輸出規制を十分に理解するためには、詳細な説明が必要かもしれないとの見方を示したともしている。 なお10年以上昔の話となるが、台湾のAU Optronics(AUO)やChimei Innolux(現Innolux)を含む世界の主要LCDパネル・サプライヤ各社は、反トラスト法違反の調査において、価格操作の疑いで米国から起訴されたことがある。AUOは無罪を主張したが、AUOの幹部2人が米国で3年間の禁固刑を受けたほか、Chimei Innoluxの当時の最高経営責任者(CEO)も1年の禁固刑となっている。台湾の半導体業界関係者の間からは、台湾政府は、この1件以来、米国の規則を遵守することに神経質になっていると指摘する声もある。