【「次世代コマース大賞」受賞】しょうゆEC「職人醤油」、受賞の決め手はコンテンツとファン化促進

小ボトルの醤油のEC「職人醬油」を運営する伝統デザイン工房は11月14日、先進的なECサービスを選出する表彰イベント「NextーGeneration Commerce AWARD2023(ネクストジェネレーションコマースアワード、NgCA2023)」で大賞を受賞した。ECサイト「職人醤油」のページ構成や、読み物として楽しめるECサイトである点などが評価されたとしている。同社では、2023年から、ユーザーのファン化を促進する施策にも重点的に取り組んできた。こうした点も受賞に影響しているようだ。伝統デザイン工房の代表取締役を務める高橋万太郎氏に、「職人醤油」の事業展開と、ファン化促進のための施策について聞いた。

<発酵食品で手間がかかるのに安定供給>

――「職人醬油」の事業について教えてください。

「職人醬油」は、100ミリリットルサイズのしょうゆをECで販売しています。現在は、全国約60カ所のしょうゆ蔵からしょうゆを仕入れて販売しています。年間約30万本を出荷しています。

 

▲「職人醬油」のオウンドメディア

私がしょうゆの販売をしようと思ったのは、貧乏旅行で全国のしょうゆ蔵を巡る旅をしていた頃でした。全国にしょうゆ蔵は約1000カ所あります。一般的なしょうゆとされる濃口しょうゆから、琥珀色をした白しょうゆ、濃厚な溜まりじょうゆ、九州の甘いしょうゆまで、地域によって味は全く異なります。

 

しょうゆは、今でこそ、スーパーなどで、1リットル200円程度の価格で買うことができます。ただ、しょうゆは仕込んでから完成まで、半年から2年かかります。発酵食品ですから、製造に当たっては微生物が製造に重要な役割を果たします。気候や温度などにも左右されます。完成品にばらつきが生じるのもしばしばです。昔は、日本酒よりもしょうゆの価格の方が高かったと言われています。

▲「職人醬油」で販売する100ミリリットルのしょうゆ

そんなしょうゆが、非常に安い価格で、安定して供給されているのです。そのことを知らない人が、一般の消費者の中には多いです。海外の人に話すと、とても驚きます。当然、味についても、そこまでこだわっている人は多くはありません。

 

しょうゆメーカーも、使い方や味の提案は、あまりしてきませんでした。「しょうゆは万能だから」「刺身に使うのが一番いい」と、皆さんが口をそろえて話します。

 

私は、いろんなしょうゆの味を知るうちに、いろんな人にいろんなしょうゆを試してほしいと思いました。そのためには、しょうゆの種類に応じて利用シーンを提案してあげた方がいいと考えました。しょうゆは通常、1リットルのボトルや一升瓶で販売されています。いろんなしょうゆを試すには、もっと小さい100ミリリットルサイズの商品を開発するのが良いと考えました。

<メディアサイトがSEO対策に>

――今回、「NgCA2023」の大賞を受賞しました。コンテンツが評価されたということですが、どんなサイトを作っていますか?

ECサイトとは別に、しょうゆに関するメディアサイトを運営しています。メディアサイトでは、しょうゆ蔵の紹介やしょうゆの紹介、しょうゆを使ったレシピの紹介、それぞれのしょうゆに合う料理の紹介などのコンテンツを発信しています。コンテンツは、すべて当社のスタッフが作成しています。

▲しょうゆ蔵を取材したコンテンツも

しょうゆに特化したメディアページとして運用してきたのですが、結果的に、ECサイトのSEO対策になっていました。今では、検索からメディアページ経由でECサイトに流入する人がとても多いです。

 

ECサイトは、BtoBのお客さまも多く、ラーメン店が購入してくれるケースも多いです。ラーメン店だと、こだわりのラーメンを作っている店が多いです。そういった店では、常に新しい味の開発を行っています。そのために、個性的なしょうゆを探しているというケースが多いです。

 

<「鉄板シナリオ」でリピート促進>

――ユーザーのファン化を促す施策も強化していると聞きました。

これまでたくさんの人に「職人醬油」で商品を買ってもらっていますが、もっとリピーターを作りたいと考えていました。「職人醤油」を好きなお客さまに情報をお届けして、情報を基に商品を買ってもらいたいと考えていました。

これまで「職人醤油」では、購入してくれたお客さまに対して、しょうゆに関するコンテンツをメルマガで発信していました。メルマガの開封率は高く、毎回20~30%あります。「職人醬油」に興味を持ってくれているお客さまが多くいます。

 

▲「職人醬油」のメルマガの配信イメージ

ただ、メルマガからECサイトの購入につなげる施策を、10年間ほとんどやっていませんでした。メルマガを送ってから、どんな層のお客さまがどんな商品を購入しているのか、可視化もしたかったのです。

そこで、2023年9月に、CRMプラットフォームの「アクションリンク」を導入しました。「アクションリンク」は非常に使いやすく、すぐに成果が出ました。特にレスポンスが高いのが、人気商品トップ10を紹介するメールです。お薦めの商品を紹介するメールも反応が高いです。初めて購入してくれたお客さまに、商品の利用状況などを訪ねる「ステップメール」としても利用しています。いずれも、「アクションリンク」が自動で作成してくれる「鉄板シナリオ」という機能の一部です。

 

「アクションリンク」を導入した翌月には、リピート売り上げが、前年同月比で67%増加しました。過去に購入したことがある人で、2回目以降買ってくれた人(リピーター)の数は、91%増加しました。

 

「アクションリンク」で当社のメルマガの開封率を調べてみると、当社のサイトはメルマガの解約が少ないことが分かりました。自分自身の場合、ECサイトで商品を注文しても、メルマガは通常すぐに解約してしまいます。それがないということは、ブランドを気に入って購入してくれている人が多いのだと思います。

このように、顧客の分析もできるようになりました。

<若い世代の育成に貢献したい>

――今後、「職人醬油」のビジネスをどのように展開していく方針ですか?

しょうゆの販売をしていくのはもちろんですが、業界の若返りにも貢献したいと思っています。我々の力で、しょうゆの作り手と買い手の関係を構築していきたいと考えています。

 

例えば、しょうゆ蔵では木桶を使っているのですが、現在、「木桶職人」というものが全くと言っていいほど、国内にいません。過去100年の間に、木桶を発注するメーカーがいなかったことで、廃業してしまったのです。

 

木桶の寿命は150年と言われていますから、あと数十年もすれば、醤油を作れる木桶がなくなってしまいます。

 

現在、醤油の木桶づくりを、複数の蔵元が参加して行う動きがあります。これまで、しょうゆ蔵同士が交流して情報交換することは常識外れだったのですが、次の世代を作るために、各メーカーが変わろうとしています。各蔵元の跡取りが生まれる動きもあります。

 

こうした業界の動きを支えていきたいです。

 

 

◆「アクションリンク」とは? データによって顧客像を把握し、顧客一人一人に合わせたメッセージ配信を自動化できる、SaaS型の顧客中心CRMプラットフォーム。過去数千回のPDCAによってリピート売り上げへの効果が証明された「鉄板シナリオ」がインストールされており、ボタン一つでツール導入直後から効果的な施策が実行できるという特徴を備える。

https://actionlink.jp/