【データに見る「ECの地殻変動」】<第21回>メルカリ10周年に思う「ブレてはいけない」フリマの本質

時の経過は早いもので今年、メルカリが誕生してから満10年になる。メルカリを始めとするフリマの市場規模はいまだ拡大基調にある。2022年のフリマの市場規模は推定で1兆3676億円にまで拡大した。

筆者が初めて経産省のEC市場調査でフリマを取り上げたのが2016年であった。その年の市場規模は3152億円、つまり6年で4倍以上に拡大した計算だ。これだけスピーディーに普及したのだから20年くらい前から存在してもよかったのではと思う。

フリマ市場は二次流通の市場、いわゆるセカンドハンドの流通市場である。従来であれば廃棄されてしまう運命の商品がフリマのマッチング機能によって見知らぬ誰かの手に渡り有効活用される。環境保全の3Rでいうところの「リユース」に相当するフリマは、サステナビリティを体現しているすばらしいサービスだ。

フリマのおかげでこれまでに億レベルの数の商品が廃棄されずに済んだと想像すれば、環境保全に対する貢献度は計り知れない。

<一次流通に貢献も>

ところで「フリマ市場の特徴とは何か?」。それは一次流通市場があって成立する市場という点だろう。

そもそも新品が製造され一次流通市場に出回らないと二次流通には流れてこない。フリマ市場の盛り上がりを苦々しく思う一次流通の関係者は多いと思う。

しかし、流通構造の関係からフリマ側は過度に一次流通側を刺激したくないのが本音だろう。二次流通市場にとって新品を取り扱う一次流通市場はいわば生命線とでもいうべき重要な存在である。

フリマは一次流通の恩恵を受けるだけでなく、一次流通側に貢献する姿勢も見られる。例えばメルカリでは保有データを基に一次流通企業と連携し、マーケティングや商品企画を通じて一次流通市場の活性化に貢献しているという。フリマでの売却を前提に新品の洋服やバッグを購入する消費者も多いという話もよく耳にする。要するに二次流通であるフリマと新品を販売する一次流通市場は相互に依存する関係となっている。

<過剰生産の引き金に?>

さてこう書くと”いいビジネスモデルだね”で話は終わってしまうのだが、筆者は少し違った目線も同時に持っている。同市場が一次流通市場を刺激し、新品が必要以上に生産されていると仮定したら環境保全の点でどうだろう。余計なエネルギー資源を使用していることにならないか。

フリマでリユースといっても大半はいずれ廃棄される運命だ。フリマでの売却を前提として新品を次々と購入する消費行動は、正直なところ筆者はあまり感心しない。

フリマの市場規模拡大は大いに結構なことだ。だが、それはあくまでも純粋にリユースが増えればという観点での話。

フリマ市場規模の拡大化によってリユース品に市場価値が生まれ、それが起点となり必要以上に一次流通が拡大するとしたら筆者には本末転倒のように思えてしまう。

フリマ側の目線で売り上げを伸ばしたいと願う気持ちは十分理解できるが、収益性とサステナビリティとの間で絶妙なバランスを保つことがフリマのブレない本質と考える。