型にはまらないアプローチを続けるSpace BD

今回の謎解きイベントを手掛けたのは、物語の主人公が働く企業と同じく、宇宙産業における商社として事業を展開するSpace BD。人工衛星を宇宙へと打ち上げたい企業に、国内外のロケットなどを通じて最適な打ち上げ手段を提案する「ローンチサービス」や、ISSの日本実験棟「きぼう」を使った宇宙での軌道上実験をサポートする「船外施設利用サービス」など、宇宙におけるサービスを幅広く提供する企業だ。

さらにそれらの宇宙利用に直接関わる事業に留まらず、宇宙をテーマとして教育や地方創生に貢献するサービスが提供できるのも、同社の特徴の1つ。教育サービスでは、人工衛星開発のプロセスを追体験したり、宇宙ビジネス技術を利活用したビジネスの企画を行ったりと、宇宙商社としてのアセットを活かした多面的なプログラムを用意しているという。

また地方創生に向けた取り組みとしては、宇宙をテーマとして街全体を盛り上げることを目指した岩手県花巻市での取り組み「花巻スペースプロジェクト UP花巻」がある。このプロジェクトは、Space BDと、花巻での宇宙活発化に向けて立ち上がったSPACE VALUEとが共同で開始したもので、地元の花巻北高等学校を舞台とした衛星開発プログラムや、地域振興イベントとのコラボレーションなどを行っている。

今回日本橋で行われている“宇宙謎解き”は、2023年7月に開催された「Stand up 花巻」でも人気を集めたプログラムだ。その際には、花巻で生まれ育った宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』になぞらえたストーリーに没入しながら、世代を問わず多くの人がアーケードのもとで謎を解き進めていたのが印象的だった。

  • 花巻で行われた謎解きイベント『銀河鉄道の落とし物』の様子

    花巻で行われた謎解きイベント『銀河鉄道の落とし物』の様子

そして今般、11月27日から12月7日まで日本橋・室町エリアで開催されている、宇宙の仕事と出会えるイベント「HELLO SPACE WORK! NIHONBASHI 2023」の開催に併せて、連携イベントの形で宇宙謎解きを実施。花巻での宇宙謎解きが好評を集めたこともあり、Space BD社内からの発案によって2度目の謎解きが企画されたという。

同社の永崎将利代表取締役社長は、「私自身の発案ではなく社員のみんなからアイデアが出てきたのがうれしいところ」と話す。また宇宙ビジネスの成長を手助けする商社として、「宇宙産業全体を盛り上げることが我々の役目だと思っている」といい、「広く興味を集められる謎解きのようなソフトなアプローチを取れるのは、Space BDの特徴」と強調。世代などを問わず幅広い人々を呼び込んで、イベント全体を盛り上げたいとのことだ。

  • Space BDの永崎氏

    「宇宙産業全体を盛り上げることが我々の役目」と語るSpace BDの永崎氏

「もちろん会社である以上、全体として事業性や利益を求める必要はある。だがそれだけを追い求めてもつまらないし、働いていて楽しくないとやっている意味がないと思っている」と語る永崎氏。自社のためだけでなく、宇宙産業全体のために“ワクワク”を生み出す策を仕掛けるSpace BD。日本橋の地から生まれる楽しい宇宙の波に、注目だ。