シャープが、創業から111周年を記念し2023年11月10日から11月12日まで東京ビッグサイトにて開催していた技術体験イベント「SHARP Tech-Day」。XRグラスや可搬型5Gシステムなど、持ち運びが可能で、かつビジネスや観光に活用できるソリューションの展示が行われていた。

会話を盛り上げる話題の提案や観光ガイドまでしてくれるXRグラス

シャープの子会社であるダイナブックは、日常生活の会話や観光に利用することを想定したXRグラスの提案を行っていた。

日常生活において、パソコンに何台もディスプレイを接続して表示領域を拡張して作業を行っている人もいるだろう。しかし、このXRグラスを活用すれば、ディスプレイを何台もつなげなくとも、表示領域が拡張してみえる仕組みとなっており、どこでも思いどおりの作業が可能になる。また、この拡張機能のメリットとして、どんな作業をしているか他の人には見えないことも挙げられる。例えば公共の場で、何かの作業をする必要が生じた際も、他人に見られる心配がないため、企業ごとの規則によるところもあるだろうが、重要情報などを閲覧することもできるようになるという。

  • 拡張機能によりXRグラス越しに複数のディスプレイをつなげたかのような表示が可能になるデモンストレーションの様子

    拡張機能によりXRグラス越しに複数のディスプレイをつなげたかのように広大な作業領域が広がるデモンストレーションの様子

  • XRグラスの外観

    XRグラスの外観

ほかにも、会話のリアルタイム翻訳や文字おこし、XRグラスを通して、その先のチラシなどの文章を要約してグラス上に表示する機能、会話中に次の話題を提案してくれる機能など、これまであまり見かけない日常生活を便利にするユニークな機能が提案されていた。

  • 現実世界の文章を自動で要約してグラス越しに表示してくれる

    チラシなどに書かれた文章を認識すると自動でXRグラス越しの現実空間にその要約を表示してくれる。スマートフォン画面に映っている文章をXRグラス上からみることができる

また、日常生活以外にも観光におけるXRグラスの活用も提案されていた。例えば、観光地でXRグラスをかけて歩くだけで、現実空間に名所の案内や店舗情報などのガイドがグラス越しに表示されるため、観光ガイドが不在でも観光地をより楽しむことができるようになるとしていた。

  • XRグラスをつけながら観光地をまわるデモンストレーションの様子

    XRグラスをつけながら観光地をまわるデモンストレーションの様子

訪日外国人観光客はコロナ禍を経て増加傾向にあるが、日本では海外からの来訪者を意識した日本語以外の標識や看板が少なく、また文化も大きく異なる場合もあり、各名所であってもその意味を理解しづらい場合もあるという課題を解決し、日本での観光を楽しんでもらいたいという思いから開発に至ったという。今後は、日本のみならず世界中のどこでもガイドをしてくれるといった機能面の向上や、より目立たず、ただ眼鏡をかけているような機能面の小型化を中心とした仕上がりの進化を目標に開発を進めたいとしている。

可搬型ローカル5G「Instant 5G Network」でどこでも5Gを実現

このほか、シャープでは、キャリーバッグにローカル5Gの仕組みをすべて搭載することで持ち運びを可能としたローカル5G「Instant 5G Network」の展示も行っていた。

  • 可搬型ローカル5G「Instant 5G Network」の外観

    可搬型ローカル5G「Instant 5G Network」の外観

Instant 5G Networkは、専用の防水キャリーバッグに、コアネットワークや基地局、アプリケーションサーバ、バッテリなどローカル5Gを構築するために必要な機器一式が搭載されており、どこでも5G環境を構築できるソリューション。今回は災害時にドローンなどで被災地の状況を確認するイメージで紹介されていた。

5Gの高速通信を活用することで、ドローンで撮影された映像をAIを活用してリアルタイムに解析、その結果を手元の端末で視聴することを可能としていた。今回のデモではカメラで撮影された人や車両をAIで解析し、人の場合は赤枠を、車両の場合は青枠で囲う形に処理された映像がタブレットに飛ばされていた。

  • 映像をAIがリアルタイム解析し、人がいる部分には赤枠が、車両がある部分には青枠を表示している

    映像をAIがリアルタイム解析し、人がいる部分には赤枠が、車両がある部分には青枠を表示している

AI処理された映像はそれぞれアーカイブされており、それらをサムネイルでまとめた一覧画面には映像ごとに何が映っていたか瞬時に判断できるように、人や車両などのマークを表示。万が一、人間の目では見落とされていた部分があっても、そうしたマークを頼りに見直すことができるため、見落としを減らすことができ、それによって人命を守ることにつなげることができるようになると担当者は語っていた。

  • 「Local 5G USB ドングル(試作機)」をドローンやカメラに取り付けることで映像を端末に飛ばすことができる

    「Local 5G USB ドングル(試作機)」をドローンやカメラに取り付けることで基地局と5G通信が確立され、映像を高速に端末に飛ばすことができる

実はInstant 5G Networkの重量の多くはバッテリが占めているが、100Vのコンセントからの給電も可能だという。そのため、利用する場所によってはコンセントに接続して使うことだけが決まっている場合、バッテリを取り外して搬送することもできるため、力の弱い人であっても持ち運びしやすくなるという。なおバッテリでの駆動時間は約2時間としており、建設現場などでドローンを活用した場合は、15分ほどの作業が一般的とされているため、十分実用的な時間は確保できるだろうとしている。

長期間の5G通信が必要であれば、最初から基地局を立ててしまうのも1つの方法だが、ごく短期間のしかも一時的な利用だけで済む場合であれば、持ち運び可能なInstant 5G Networkを必要な時だけ持ち込めば良いという考え方も、設置場所などの選定などが不要といった面も含め非常に便利だと思われる。今回は災害時での利用を想定したデモが披露されていたが、工事現場やイベント会場など幅広い用途での利用が期待できることから、今後さらに開発を進めていき、2024年4月以降に実際にソリューションとしての提供を目指すとしている。