レッドハットは11月15日、記者会見を開いて日本国内のエッジビジネスの展開について語った。同社は6日に「Red Hat Device Edge」の一般提供を開始しているなど、国内でもエッジソリューションの展開を強化する。

Red Hat Device Edgeはエッジに最適化したOS「RHEL for Edge」と軽量版OpenShiftの「MicroShift」、エッジデバイスの運用自動化のための「Ansible」をまとめて提供するエンタープライズ向けのプロダクト。

同製品は、主にアプリケーション運用の一貫性と、エッジアプリケーションの機動的な開発および運用の2つのユースケースで使われているという。前者はクラウド利用時のネットワーク回線やストレージコストを抑えながら、セキュリティの課題にも対応するために、エッジとクラウドを一体化したプラットフォームを構築する際に用いる。

後者は元々エッジで使っているシステムをスマート化する需要に対応しているという。小売業のPOSシステムや製造業のSCADA、HMIなど固有のシステムもスマート化の対象となる。Red Hat Device Edgeを活用しクラウド側の開発環境とシームレスに接続するアプローチが取られているようだ。

  • 「Red Hat Device Edge」のユースケース

    「Red Hat Device Edge」のユースケース

説明会の中では、「Red Hat Device Edge」を先行的に導入しているジェイアール東海情報システム(以下、JR東海情報システム)のDX企画部長を務める石川勝隆氏が活用事例を語った。同社はJR東海の子会社として、運行管理システムや設備管理系システムの構築と運用を担う。

同社の鉄道事業部門では、画像認識技術やAIにより鉄道輸送の安定性を向上させるオペレーションの改善に課題を抱えていたそうだ。特にコロナ禍では鉄道利用客が減少したことからも、収益の面で急務の課題となっていた。

  • JR東海情報システムが抱えていた課題

    JR東海情報システムが抱えていた課題

これに対し同社は、IoT/機械学習プラットフォームをエッジとクラウドで構築している。現場の設備については現場の保守担当者が最もよく分かっている前提のもとで、機械学習モデルの推論はエッジで行い、結果などのメタデータだけどクラウドへ送信する仕組みを検討している。

この際、各ユースケースで必要となる共通機能はプラットフォーム化して、自動化に対応している。また、現場設備の保守担当者は機械学習モデルの開発に専念しており、モデルのデプロイはプラットフォーム上で自動化する。

  • IoT/機械学習プラットフォーム構築の背景

    IoT/機械学習プラットフォーム構築の背景

下の図は、IoT/機械学習プラットフォーム上で画像データを機械学習に用いるアーキテクチャの概要図。設備の保守を担当する現場社員が、画像データを使って目視点検を効率化するような場面の想定だ。

まずはカメラやドローンで撮影したデータを、RTMPサーバなどのエッジデバイスがファイル化してからクラウドへ送信する。クラウドでは動画ファイルを画像データに分割するといった前処理を施し、機械学習モデルを適用する。

これを、将来的にはコンテナレジストリに登録されているデータに対し、Red Hat Device Edgeを用いてエッジ側で機械学習モデルを実装することで、異常判定をエッジで行いメタデータだけをクラウドへ送るような設計を検討中とのことだ。

  • IoT / 機械学習プラットフォームのアーキテクチャ図

    IoT / 機械学習プラットフォームのアーキテクチャ図

石川氏は「Red Hat Device Edgeを使うことで、エッジでの機械学習モデルやコンテナアプリケーションのデプロイが自動化できる。また、今後エッジのデバイスを増やしてスケールしていくことを想定すると、Red Hat Device Edgeによって全体のオペレーションを効率化できるはず」と、製品への期待を語っていた。

  • JR東海情報システム 取締役 DX企画部長 石川勝隆氏

    JR東海情報システム 取締役 DX企画部長 石川勝隆氏

レッドハットはエッジ環境において、ハードウェアを中心としたビジネスに対してソフトウェアでスマート化していく戦略を取っている。従来のエッジのプロダクトはハードウェアとソフトウェアを一体化して提供する例が多く、配線が複雑化しやすい課題があった。これに対しハードウェアに対しソフトウェアを集約して実行するプラットフォームを展開することで簡素化を狙う。

一方で、ソフトウェアを中心としたソリューションはアプリの更新が問題となる。更新する場合にはアプリのテストや検証の工数が増加し、またアプリが動作しないリスクも伴う。反対に、アプリを更新しない場合にはセキュリティリスクが増加するほか、時間経過と共にOSやアプリが陳腐化しかねない。

  • エッジデバイスの課題

    エッジデバイスの課題

これらの課題に対してレッドハットは、必要な場所で柔軟かつ自由にワークロードをデプロイできるような戦略でアプローチし、ポートフォリオを拡充している。

  • レッドハットの国内におけるエッジ戦略

    レッドハットの国内におけるエッジ戦略

レッドハットのクラウドスペシャリストソリューションアーキテクト部の小野佑大氏は、今後の国内戦略について、「Red Hat Device EdgeはアプリだけでなくOSも含めた更新の効率化に焦点を当てた製品。これからは主に産業と通信の分野で展開する。産業分野ではクラウドネイティブな技術を活用してエッジ環境のシステムのモダナイゼーションに貢献する。通信ではスマートデバイスを効率的に提供するデバイスエッジクラウドの実現を目指したい」とコメントしていた。

  • レッドハット クラウドスペシャリストソリューションアーキテクト部 小野佑大氏

    レッドハット クラウドスペシャリストソリューションアーキテクト部 小野佑大氏