日本オラクルは11月13日、「Oracle NetSuite」事業に関する戦略説明会を開催した。同社の調査によると、テクノロジー企業でIPO(新規株式公開)をした企業のうちNetSuiteの顧客の割合は約6割。そして、生成AI(人工知能)スタートアップにおけるNetSuiteの顧客の割合は5割を超えている。説明会で日本オラクル三澤社長が語ったこととは?
Oracle NetSuiteは、中小・中堅企業およびスタートアップをはじめとする成長企業向けに提供しているクラウドERP(統合基幹業務システム)。ハイパースケールのIaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)を提供する「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」、そのOCI上に大企業向けのクラウド型のSaaS(Software as a Service)をフルスイートで提供する「Oracle Fusion Cloud Applications」に加え、Oracle NetSuiteはオラクルの主力事業だ。
NetSuiteは、クラウドERPシステムの先駆けとして1998年に設立された。クラウドベースの統合型ビジネス・アプリケーションを25年以上にわたり提供し、現在、世界219カ国・地域(27カ国の言語に対応)の3万7000社を超える企業で利用されている。2005年に日本での事業を開始し、2016年にオラクルに参画した。
同社の調査によると、テクノロジー企業でIPO(新規株式公開)をした企業のうちNetSuiteの顧客の割合は約6割。そして、生成AI(人工知能)スタートアップにおけるNetSuiteの顧客の割合は5割を超えている。
Fusion Cloud Applicationsとの共通点は「単一のクラウド・アーキテクチャ・データモデルで稼働している」こと。また、自動でバージョンアップし(NetSuiteは半期に1回、Fusion Cloud Applicationsは四半期に1回)、システムライフサイクルコストを削減できたり、最新機能のメリットを享受できたりといった点も共通した特徴だ。
Fusion Cloud Applicationsは、大企業でも導入しやすいよう、ERPやSCM(Supply Chain Management)といったモジュールが独立した形で段階的に部分導入がしやすい設計になっている。一方、NetSuiteは中小・中堅企業およびスタートアップでも導入しやすいよう、それらのモジュールが統合された形で提供される。
13日の記者会見で日本オラクル取締役執行役員社長の三澤智光氏は、「大企業がERPを導入する場合、経営部門や財務部門がしっかり存在する。SCMに関しても、製造部門や販売部門がきちんと存在する。顧客企業側にそれなりの耐性を要求するのが、いわゆる大企業向けのERPの特徴。しかし、中小企業になると、そこまで十分な耐性を顧客企業側に求めることは難しい。統合化されたモジュールの特徴を生かして、迅速な導入を可能にしているのがNetSuiteだ」と、説明した。
オラクルは、日本におけるNetSuite事業の戦略をどのように描いているのだろうか。日本オラクル バイスプレジデント NetSuite事業統括 カントリーマネージャーの渋谷由貴氏は「今、私たちが直面しているインフレや円安といった変動に対処するために、柔軟性の確保、リスクからの保護、 複数のシナリオを想定した計画に焦点を当てている」と説明した。
柔軟性の確保、リスクからの保護に関しては、先述した自動アップデート機能が対応し、時代の変化へ追従できる仕組みとなっている。バージョンアップやインフラ更改がなくなるため、「システムライフサイクルコストを削減できる」(三澤氏)としている。 また、NetSuiteは複数のシナリオを想定し、国際的な管理基準や報告要件にも対応している。指名請求書や手形といったさまざまな日本独自の要件に対応。
導入前後でのサポートも抜かりない。導入前には企業がNetSuiteを導入する際の戦略的な意思決定をサポートし、導入の際には効果的に導入、カスタマイズ、および運用するための専門的なサポートとアドバイスを提供する。
そして、導入後にはNetSuiteの標準的なサポートを超えて、企業がNetSuiteソリューションを最大限に活用できるように、より高度なカスタマイズ、最適化、およびサポートを提供するサービスを提供している。
さらに、AI活用にも力を入れる。OCIの生成AIサービスである「Cohere」を積極的に活用し、「だけでなく、すべての業務アプリケーションに生成AIのテクノロジーを組み込んでいく」と、三澤氏は説明した。
「私が言えば怒られるかもしれないが、業務アプリケーションの世界は過去10年間大きな進化がなかった。しかし、AIによってこの世界は大きく変わり非常に面白くなる。そして、業務アプリケーションそのものを進化させていくAIを適宜取り入れていくには、単一のクラウドで動いている仕組みが必須だ。この世界観を大企業だけでなく中小企業まで広げていきたい」(三澤氏)