10月28日から11月5日まで東京ビッグサイトでは、「Japan Mobility Show 2023」が開催されている。かつての「東京モーターショー」からリニューアルしたこの展示会内で開催中の主催者プログラム「Tokyo Future Tour」で、住友金属鉱山は、自社開発の近赤外線吸収材料を活用した新素材テクノロジー「SOLAMENT」を発表。同素材を用いた“透明なダウンジャケット”を展示している。
近赤外吸収微粒子を用いた技術を実用化に向け
住友金属鉱山がリニューアルを発表したSOLAMENTは、同社が開発し国内外で特許を保有する近赤外吸収微粒子「CWO」をもとにした、新たな素材テクノロジーだ。CWOは、可視光線に対しては高い透過率を有する一方で、波長800nm~1200nmの近赤外線に対しては強力な吸収能力を併せ持つことから、視界を確保しながら室内の温度上昇を抑えるための窓ガラス材料をはじめ、自動車のサンルーフなどの車載用途、建築材料、農業などさまざまな製品に活用されてきたという。
そして今回同社は、この近赤外吸収材料を用いた素材テクノロジーのSOLAMENTとしてリニューアル。衣服などの素材として利用を拡大させることで、素材の持つ可能性を高め、提携・活用の幅を広げることを目指すとする。
今回の出展では、SOLAMENTを用いたプロトタイププロジェクト「DOWN-LESS DOWN JACKET」を展示している。アクセンチュア傘下のDroga5 Tokyoとの共同開発により完成した透明なジャケットは、その名の通り羽毛を使用していないにも関わらず、近赤外線を含む光を当てることですぐに発熱するとのこと。住友金属鉱山が行った実証実験では、10分間疑似太陽光を当てた際の着用温度の比較において、一般的なダウンジャケットに匹敵する温度の上昇を確認したとしている。
またデザイン性や快適性に加え、羽毛を使わないという点で、環境や社会の持続可能性に配慮するエシカル消費の観点も併せ持つとする。
さらに同社ブース内では、一般的な軍手とSOLAMENTを含む軍手を用いたデモンストレーションも紹介。前者は光を当てても特に目立った発熱が見られないのに対し、後者では光を当ててから数秒後に強く発熱する様子が見られた。
ブース担当者によると、SOLAMENTは現在、粉末やインクなどの状態で提供可能が可能であり、完成した製品への塗布という後工程での実装に加え、繊維などの材料に混ぜ込むこともできるなど、素材を問わず活用ができるという。
住友金属鉱山は今後、太陽光などに含まれる近赤外光を吸収する特有の機能を活用し、アパレルや建材、農業、医療分野など、さまざまな市場への進出を強化していくとしている。