日本オラクルは10月26日、記者説明会を開き、四半期ごとのアップデートによる最新のテクノロジーを搭載する同社のクラウドアプリケーション「Oracle Fusion Cloud Applications」のAI(人工知能)を含めた最新動向について解説した。

2023年9月18~21日で開催されたオラクルの年次カンファレンス「Oracle CloudWorld 2023」では、データベースや業務アプリケーションなどさまざまなサービスへの生成AI搭載が発表された。同社はすでに30以上のAI機能をリリースしており、今後は生成AIの実装を加速していく。

  • 米オラクル 会長兼CTO ラリー・エリソン氏(オラクル提供)

    米オラクル 会長兼CTO ラリー・エリソン氏(オラクル提供)

  • オラクルはすでに30以上のAI機能をリリース済み

    オラクルはすでに30以上のAI機能をリリース済み

日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括の塚越秀吉氏は「エンタープライズのAI活用に求められる要素は4つある、高パフォーマンスのAIインフラストラクチャと堅牢なセキュリティ、高いデータアクセシビリティ。そして、AIが組みこまれたビジネスプロセスだ」と説明した。

  • 日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括の塚越秀吉氏(26日、東京都港区)

    日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括の塚越秀吉氏(26日、東京都港区)

Oracle Fusion Cloud Applicationsでは、技術進化の変化に柔軟に対応できるように、組み込みAI型のSaaSを提供している。一般的なSaaS(Software as a Service)型のERP(企業資源計画)の場合、外部AIとのインテグレーションや、データの移動に伴うセキュリティリスクと多大なコストがかかってしまう。加えて、バラバラのデータモデルのため、AIが局所化される恐れがある。また、数年に一度の個別バージョンアップのため、AIの技術革新を享受しづらい側面があると同社は指摘する。

「オラクルのSaaSはインフラ(Oracle Cloud Infrastructure:OCI)上のサービスを利用することでデータ移動のコストとセキュリティリスクを削減できる。また、シングルデータモデルによる全体最適化されたAIを活用しており、加えて、四半期ごとのバージョンアップにより、最新AIの技術革新の価値を享受できる環境が整っている」(塚越氏)

  • 一般的なSaaSと「Oracle Fusion Cloud Applications」の違い

    一般的なSaaSと「Oracle Fusion Cloud Applications」の違い

また、オラクルは2023年6月、企業顧客向けに特化した、大規模自然言語モデル(LLM)サービスを提供するカナダのCohereとの連携を発表している。同社は生成AIの基礎となった論文『Attention is all you need』の著者の1人、エイダン・ゴメス氏が共同設立した会社だ。データのセキュリティとプライバシーを制御しながら、顧客企業がカスタマイズできる言語モデルを提供している。

オラクルはCohereと連携し、ビジネス向けにセキュアな生成AIサービスを提供していく。SaaSだけでなく同社が抱える豊富なデータベースに生成AIを組込んでいく考えだ。すでに生成AIを組み込んでいる例としては、人事アプリケーションの「Fusion HCM(人的資本管理)」と、顧客管理アプリケーションの「Fusion CX(カスタマーエクスペリエンス)」の2つのSaaSが挙げられる。

Fusion HCMによる生成AIの活用例としては、文書コンテンツの作成支援が考えられる。従業員のプロフィールや表彰、目標作成、職務内容などの文書をAIで生成する。またFusion CXに関しても同様で、顧客エンゲージメント結果の概要やサービス・エージェントの応答、ナレッジ記事、管理者向けガイダンスなどの生成に活用できるとしている。

今後は、ERPやSCM(サプライチェーンマネジメント)、ACX(アドバタイジングアンドカスタマーエクスペリエンス)といったSaaSに加えて、インフラやプラットフォームにも生成AIを活用していく方針だ。

  • オラクルは生成AIをSaaSに組み込み生産性向上を実現していく

    オラクルは生成AIをSaaSに組み込み生産性向上を実現していく

「生成AIはデータの“ストーリー"を伝える説明を生成できる。そして複数のソースから重要な情報を要約し、財務に特化したモデルでユーザーの専門知識を強化してくれる。これからの経営会議、働き方は変わるだろう」と、日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 善浪広行氏は考えを述べていた。

  • 日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 善浪広行氏(16日、東京都港区)

    日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 善浪広行氏(16日、東京都港区)