東京都町田市は、アバターを利用した採用試験の動画を作成するなど、市の広報活動においてメタバースを活用している。そこで、その狙いや効果を担当者に聞いた。

メタバースを活用する背景

メタバースを導入したきっかけについて、町田市 政策経営部デジタル戦略室担当係長 和田進吾氏は、次のように語る。

「町田市には、『町田市未来づくり研究所』という組織があり、その中で、2050年の未来の町田市について、シナリオプランニングという手法を用いた研究を2020-2021年に実施しました。研究の一環として実施したワークショップでは、世の中の技術の進展や人口動態が変化することを前提に、町田市がどういう都市像を目指すべきかについて、複数チームに分かれてディスカッションを行いました。その結果、複数あるシナリオの一つとして、現在は物理的な制約があって、市や県といった行政区域に分かれていますが、デジタル化が進むと、オンラインですべて完結できるようになり、オンライン市役所のようなものができるだろうという結論になりました。それはメタバースのような技術で実現されているだろうというところから出発しました。デジタル戦略室は、デジタル技術の調査研究も所掌事務ですので、今の技術で安く簡単に行うにはどうしたらいいのかというところからメタバースの研究を始めたのが2022年の4月で、それが出発点です」

  • 「町田市政策経営部 デジタル戦略室長 兼 経営改革室長 高橋晃氏(右)と町田市政策経営部デジタル戦略室基盤系システム担当係長 和田進吾氏(左)

    町田市政策経営部 デジタル戦略室長 兼 経営改革室長 高橋晃氏(右)と町田市政策経営部デジタル戦略室基盤系システム担当係長 和田進吾氏(左)

和田氏自身は、VR空間でコミュニケーションするゲームを5年ほど前から体験していたため、メタバースの技術や知識もある程度身に付けており、技術的に敷居の高さを感じることなく取り組みを開始できたという。

メタバース上に仮想の町田市役所を作って動画を作成

同市がメタバース技術を最初に採用したのが、職員採用試験のプロモーション動画だ。

  • 就活生に告ぐ!町田市の試験が受けやすい理由!<2023年度町田市職員採用試験(1期)

    就活生に告ぐ!町田市の試験が受けやすい理由!<2023年度町田市職員採用試験(1期)(出典:町田市)

「町田市役所はチャレンジングなことに取り組めるというところをアピールするため、メタバースやアバターなどのトレンド技術を取り入れることにしました。具体的には、、若者向けにメタバース上に仮想の町田市役所を作って、プロモーションビデオを撮影しました」(和田氏)

同市の採用試験ではSPI試験もWebで受けることができ、一次面接もオンラインで実施している。こうした取り組みを行う背景には、応募者が東京23区のほか横浜市や川崎市などの近隣の大都市と併願するケースが多く、人材を獲得しづらい状況があるためだという。

デジタル技術を利用した採用活動について、町田市 政策経営部デジタル戦略室長 兼 経営改革室長 高橋晃氏は、「多くの人が動画を見てくれました。LINEによる応募を皮切りに、WebでのSPI受験、Web面接というデジタルで通貫した流れにより、採用試験のDX(デジタルトランスフォーメーション)ができていると思っています」と評価する。