【売上2倍、DL数4倍も】サブスク振興会 梶山会長や受賞企業に聞く「サブスク大賞の魅力は?」<エントリーは11/6まで>

一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会(サブスク振興会)は今年9月、今年も昨年に続き優れたサブスクビジネスを表彰する「日本サブスクリプションビジネス大賞2023(サブスク大賞)」を開催すると発表した。併せてサブスクビジネス運営企業からのエントリーの受け付けも開始した。昨年は日本テレビの「news zero」を始めとした地上波テレビ8番組とBS1番組(のべ23コーナー)に取り上げられた。大賞でなくても特別賞を受賞した企業でも、テレビ番組に取り上げられ、認知度向上に寄与したという。ある企業では、受賞後、メディアへの露出により、売り上げ増加と法人からの問い合わせなどが続いたという。サブスク振興会の梶山啓介会長に「サブスク大賞」の詳細やトレンドから、エントリーするメリット、今後のサブスク業界の変遷まで聞いた。受賞企業からは「サブスク大賞」受賞後の反響などを聞いた。「サブスク大賞2023」の申込締切日は11月6日までとなっている。

【サブスク振興会 梶原会長に聞く「サブスク大賞の概要やトレンド」】

<グランプリは賞金100万円>

ーー今年も「サブスク大賞」の季節がやってきた。改めて「サブスク大賞」の詳細と申し込み条件を伺いたい。

「サブスク大賞」は言葉の通り、今年最も優れたサブスクサービスを表彰する表彰企画。サブスクサービスを提供する全ての事業者、その中でも特にスタートアップや中小企業を支援しようと思ったことが開始のきっかけだ。

「サブスク大賞」は本振興会および有識者の審査を経て、グランプリなどを表彰する。グランプリ賞には賞金100万円と記念トロフィー、シルバー賞には賞金50万円と記念トロフィー、ブロンズ賞には賞金30万円と記念トロフィー、スポンサー賞には記念トロフィー、特別賞には表彰楯を贈呈する。

応募資格も複雑ではない。2023年8月現在で運営しているサブスクリプションサービス事業者が対象だ。ジャンルは問わない。1企業3サービスまで応募が可能となっている。

▲一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会 梶山啓介会長

ーー過去の受賞企業は?

「サブスク大賞」は今年で5回目の開催となる。初年度の1019年の「サブスク大賞」のグランプリは知育玩具のサブスクサービス「トイサブ!」を提供するトラーナが受賞した。2020年のグランプリは保育園で紙おむつが使い放題になる「手ぶら登園」を運営するBABYJOB、2021年のグランプリは旅のサブスク「HafH」を運営するKabuK Style、昨年のグランプリは登山地図アプリ「YAMAP」のヤマップが受賞した。このほか、モノを販売する企業も「サブスク大賞」で何かしらの賞を受賞している。現在サブスク業界で知名度がある企業は、「サブスク大賞」を受賞している現状だ。

<「news zero」など多数のテレビ番組に露出>

ーー「サブスク大賞」を受賞した企業のその後の反響などはどうか?

どの企業からも反響は良いと言って頂いている。昨年度では、地上波テレビ8番組 、BS1番組(合計23コーナー)に出演することができた。日本テレビ「news zero」、テレビ朝日「スーパーJチャンネル」、MXテレビ「news TOKYO FLAG」、日本テレビ「ZIP!」、テレビ朝日「グッド!モーニング」、テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」、日本テレビ「シューイチ」、TBS「ひるおび」、BSよしもと「ワシんとこ・ポスト」など、一般消費者が多く見る番組で紹介された。高いプロモーション効果になっている。ぜひ気軽に「サブスク大賞」にエントリーしてもらいたい。

ーー過去の受賞企業のトレンドは?

ここ2、3年間のトレンドはコロナ禍が関係していた。SDGs(持続可能な開発目標)やアウトドアに関するサブスクサービス企業の受賞が続いた。食品企業だとしても、食品ロス(本来食べられるにも関わらず廃棄されてしまう食品のこと)のECサイトを運営するロスゼロやロスヘルなどがそうだ。

<今年のトレンドは「本質的課題を解決できるか」>

ーー今年のトレンドはどう見るか?

今年はコロナ特需のトレンドであった「SDGs」や「環境」「健康」「アウトドア」は収まるとみている。その代わりに消費者の課題を解決できるもっと本質に寄ったサブスクサービス企業が受賞するのではないかと考えている。今市場にあるサービスではなく、ゼロから1になる、いわゆる新たなサービスが受賞するだろう。

過去グランプリを受賞した、おむつを保育園に月額定額で届ける「手ぶら登園」も、今まで市場に存在しなかった。だが、確実に需要はあったサービスだ。全てのジャンルにおいて、消費者の課題を解決できる、痒いところに手が届くサービスを提供する企業が受賞するはずだ。振興会としては、社会性があり”尖った”サービスを提供する企業の台頭を心待ちにしている。

ーーサブスクサービスに精通した振興会に伺いたい。今後のサブスク業界はどのように変化していくと考えているか?

個人的には、上記のような消費者の課題を解決するサービスは台頭すると思う。さらに今後は中小企業が大手企業にグループ入りすることも出てくるだろう。

2020年にカメラ機材のサブスクサービス「GooPass」を展開するカメラブが、ビックカメラと協業契約を締結した。ビックカメラで新品のカメラを買う前に持ち帰って試すことができる「テイクアウトレンタル」を開始した。このような大手企業に参加し、さらにユニークなサービスを提供することは増えてくるだろう。

大手企業にとっても、面白い企業の子会社化は、大手企業のさらなる発展にもつながるし、サブスク企業の社長がジョインすることで、新たなアイディアが思い浮かぶこともあるはずだ。両者にとって利点しかない。中小企業のサブスク企業にとっては、これが今後生き残る手段の一つになるかもしれない。

【受賞企業に聞く「受賞後の反響」】

「サブスク大賞」で受賞したあとの反響はどうだったのだろうか。多くの受賞企業は「売り上げ増加、認知拡大など、メリットしかない」と話す。実際に受賞した企業の受賞前と受賞後の反応の違いなどを紹介する。

<「ロスヘル」は受賞後、EC売上が2倍に伸長>

規格外の野菜を配送する「ロスヘル」を運営するエクネスは、「サブスク大賞」で特別賞を受賞した後、EC売り上げが受賞前と比べて約2倍に伸長した。受賞後、すぐにテレビ情報番組「news zero」や「シューイチ」に取り上げられた。エクネスの平井康之社長は、「本当に受賞できたことが大きかった。受賞時は当社はスタートアップでこの受賞が事業スケールアップのきっかけになった。今の事業の基盤となっている」と話す。

「ロスヘル」は規格外野菜(味は問題がないのに、サイズが大きすぎる、逆に小さすぎる、あるいは形がふぞろいといった理由で一般の流通ルートから弾かれ、廃棄されてしまう野菜のこと)を生産者から買い取り、自社ECサイトで販売している。2022年4月にサービスの提供を開始。サービス提供開始以降は、SNSの発信を中心に認知拡大に努めてきた。

2022年12月、「サブスク大賞」特別賞を受賞した。

「このときは集客方法も色々と間に合わず、SNSの発信くらいしかできなかった。SEO対策やネット広告なども着手したかったが、できなかった。ありがたいことに規格外の野菜を届けるという環境に優しいサービスであることを振興会に認められ、受賞でき、一気に認知度向上につながった」(平井社長)と話す。

▲エクネス 平井康之社長

「ロスヘル」のようにサービスを開始したばかりの企業は認知拡大に困ることが多い。ネット広告やオフライン展開など、さまざまなことを仕掛けなくてはならないが、潤沢な予算を充当できないこともある。一般消費者への認知獲得に向け、ネット広告を活用する必要があるが、近年のCPA(顧客獲得単価)高騰もあり、効率的に運用することは難しい。だが、「サブスク大賞」で何かしらの賞を受賞をすると、テレビにも取り上げられ、結果として多くの顧客からの流入と購入につながる。

「受賞は広告費が発生せず、大衆に知ってもらうことができる。サービス提供を開始して6カ月間での受賞は、本当に大切な時期での大きな受賞となった」(同)と振り返る。

現在、「ロスヘル」サービス開始後から1年が過ぎ、出荷数は1万件を超えた。テレビ番組での放送後、新規顧客獲得に成功した。それ以降は、アンバサダーマーケティングやSEO対策、LP制作など、EC運営に必要なことを磨き上げ、さらに顧客獲得を強化している。「サブスク大賞」の特別賞の受賞は、「ロスヘル」の礎になっているようだ。

<ヤマップはアプリDL数が4倍増>

登山地図アプリ「YAMAP」を運営するヤマップも、2022年「サブスク大賞」でグランプリを受賞した後と受賞前で大きく変化が現れた。2022年11月と同12月を比較すると、ダウンロード数は約4万件も増加した。テレビ番組で取り上げられた後は、約4倍にもダウンロード数が急増した。

「YAMAP」は電波が届かない山の中でも、スマホのGPSで現在地と登山ルートが分かるアプリ。基本機能は無料で、活用頻度が高いユーザー向けに「登山地図の使い放題」や「ルートから外れた際の警告機能」などの有料プランを用意している。歩いてきた道の軌跡や、登山中の写真を活動記録として残したり、山の情報収集に活用したり、全国の登山好きの人と交流したりすることができる。

2013年にサービスの提供を開始し、それ以降登山好きの中で「YAMAP」の認知は浸透していた。登山をする人の間では、山を登るときは「YAMAP」を利用することが常識となっていた。

業界の中では知られていたが、「サブスク大賞」のグランプリの受賞は、新たな顧客層へ認知を広げることができた。コロナ禍でアウトドアを好む流行も重なり、今まで山に登ったことのない人からのダウンロードにつなげることができたという。

「当社も多くのテレビ番組に取り上げられ、それを契機に多くの人に知ってもらうことができた。直接の関係があるかは分からないが、2023年6月には『カンブリア宮殿』に出演することもできた」(上間秀美PR戦略推進室長)と話す。

▲ヤマップ PR戦略推進室長 上間秀美氏

ヤマップは今後、今まで登山をしていない人たちにも裾野を広げ、山や自然へ行き、歩くことを楽しんでいただける提案を図っていく。

<「Otomoni」は企業の問い合わせ増加、共同で商品開発>

売り上げ直結のほかに、企業からの問い合わせが増加した事例もある。クラフトビールのサブスクサービス「Otomoni」を運営するmeuronでは、受賞後、大手商社から問い合わせが入り、商社の社員が使うギフト用品として商品を開発することが決まった。mueronの金澤俊昌社長は、「受賞は証明書をもらったことを意味している。きちんとした会社であることを証明してもらえた」と説明する。

「Otomoni」は全国のクラフトビールを提供する。2022年、「サブスク大賞」の特別賞を受賞した。金澤社長はテレビの露出よりも、企業から問い合わせがあったことが大きかったという。「法人から福利厚生やギフト品、オンラインツアーなどでの利用の相談が相次いだ」と話す。

受賞後、取引先の酒造会社から、賛辞の声をもらったことも、仕事のモチベーション向上に寄与しているという。

「『Otomoni』の会員数が100人というときからのお付き合いしている企業からは、『よかったね』『頑張ったね』との声をもらった。そのような声は大変ありがたく社員の活力になっている」(金澤社長)と話す。

▲meuron 金澤俊昌社長

今後のサブスク業界の発展について、金澤社長は「サブスク事業者が年々増える中でただ単に、『同じモノを定期的に送るだけ』をサブスクとして捉えている事業者では価値の創出が難しくなっていっている。その中で『サブスクである理由』を改めて考え直すと共に、サブスクサービスを事業全体としてどういう位置づけにしていくかが明確にしていくことが、優位に立つポイントになると考えている」と話す。

「当社の話でいうと、クラフトビールをサブスクで届けるが、それがただ単純に安いとか同じ商品を送り続けるなどの価値提供はしていない。当社では、例えばポケモンカードをコレクションするように、飲んだクラフトビールをコレクションできるようなアプリも自社で開発している。このように販売だけで終わるのではなく、商品特性に沿ったユニークな付加価値を提供することが、サブスク業界で生き残る方法の一つだとみている」(同)と話す。

▲クラフトビールのサブスク「Otomoni」

「サブスク大賞」の受賞は企業にとって利点しかない。あまり難しく捉えるのではなく、気軽にエントリーすることが大事だ。申し込みと申し込み対象条件は下記から確認することができる。

■サブスク大賞の概要・申込

https://subscription-japan.com/award/