突如として訪れた新型コロナウイルスの脅威によって、私たちの生活が大きく変わってしまったのは言うまでもない。アーティストのライブや友人らとの宴席、病院の診察などがオンラインで代替されるようになったが、ビジネスも例外ではない。われわれのようなメディアの仕事も、オンライン上での記者会見や取材の場面が増えた。
筆者はいまだに、オンラインよりも対面での取材が好きである。電車での移動時間が煩わしくはあるのだが、やはり人と直接会って話をした方が微妙なニュアンスや相手の熱量を感じられる。そして何より、直接会って聞いた話ほどよく覚えられる。相手の顔や雰囲気もそうだ。
Web会議ツールをはじめ、オンライン上でのコミュニケーションを支援するソリューションが多数ある中で、アウトドア用品を手掛けるスノーピークの子会社であるスノーピークビジネスソリューションズは、離れたオフィスなどを等身大で常時つなぐコミュニケーションツール「Conova」を提供している。もともと2016年から手掛けているソリューションではあるが、コロナ禍を契機に活躍の場を広げている。
Conovaの音声・映像通信を裏側で支えているのは、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)が手掛ける「SkyWay」だ。これは、アプリケーションやWebサイトなどに音声・映像通信を組み込む際に利用できるソフトウェア開発キットである。
今回、SkyWayを基盤としてConovaを構築したスノーピークビジネスソリューションズとNTT Com双方の担当者に、共創に掛ける思いを聞いた。
共創のきっかけは価値観の一致
スノーピークビジネスソリューションズが2016年から手掛けていたConovaだが、当時利用していた映像通信基盤がサービス終了を発表したことで、同社は代わりとなる通信基盤を検討していたそうだ。そこで見つけたのが、NTT ComのSkyWayである。
スノーピークビジネスソリューションズでConovaの開発を担当する伴崇史氏は「Conovaの開発においては、ただ単にデジタル技術で空間をつなぐのではなく、人と人が自然につながるような場所づくりをしたいと思っていました。2月にNTT Comが開催したSkyWayのイベントに参加してみて、離れた場所でも空気感や雰囲気を伝えられるようにしたいというNTT Com側の価値観に共感できたので、一緒にやりたいと思い声を掛けました」と、共創のきっかけを振り返る。
NTT ComでSkyWayを手掛ける二井実奈子氏も、「私たちも、人と人が自然につながる場所を作りたいというスノーピークビジネスソリューションズの思いに共感できました。SkyWayはあくまで通信の基盤であり、形として目に見えるサービスではないので、Conovaのように実際のソリューションが目に見える共創は非常にうれしかったです」とコメント。互いの価値観が一致していたことが、両社のコラボレーションを前に進めたようだ。
ところで、スノーピークといえばやはり、キャンプギアをはじめとするアウトドア用品のイメージが強い。話を聞いてみると、スノーピークビジネスソリューションズはもともとスノーピークとは別の会社で、ITコンサルなどを手掛けていたそうだ。
その中でさまざまな働き方に注目しており、キャンプによる組織活性化などを試みていたのだという。同社は当時から岡崎市と名古屋市に拠点を持っており、せっかくキャンプを通じて築いた関係性が、オフィスが離れてしまうことで逆戻りしてしまうことに課題を感じていたという。そこで開発を開始したのが、Conovaの前身となる「INTERACTIVISION(インタラクティビジョン)」である。
「等身大の空間が常時接続されていて、お互いの雑談が聞こえるような距離感を作りたかったんです。スノーピークは製品を作るだけではなく、お客様同士やお客様と当社社員がつながるイベントを実施していて、"コミュニティブランド"と呼んでいただく機会が増えました。離れた場所に温度感を届けるConovaも、そういう意味ではスノーピークらしいソリューションだといえます」(伴氏)
自然なUI設計がSkyWayの強み
Web会議やオンラインコミュニケーションを支えるソリューションは、世の中に複数存在している。しかしその多くが海外のものであり、必要としているドキュメントにたどり着くまでには予想以上に労力を要する場合がある。
これに対して、SkyWayはNTT Comのエンジニアが開発しているため、日本語の説明やドキュメントが多いのが特徴だ。また、開発者向けの情報発信も積極的に行っているようで、他のソリューションと比較して、日本人でも必要な情報を得やすいのだという。
さらに、エンドユーザーへの導線設計もSkyWayの強みとのことだ。例えばオンライン英会話サービスを想定すると、Zoomのように専用のアプリケーションが必要となる場合には、エンドユーザーからすると本来の目的とは異なる作業が発生するため、離脱につながりかねない。
一方で、SkyWayは自社のサービスやアプリケーションに自由に組み込んでエンドユーザーに提供できるので、余計な作業を発生させなくてもよいのだという。また、画面配置やボタンのデザインなども自由に設計できるため、SkyWayを導入するサービス側のブランドイメージやコンセプトに応じたUI(User Interface)を提供できる。
Conovaを通じた等身大のオンラインコミュニケーションを「docomo business Forum’23」で
スノーピークビジネスソリューションズが手掛けるConovaは、10月12日(木)と13日(金)にザ・プリンスパークタワー東京(東京都 港区)で開催される「docomo business Forum’23」で展示される。
「Conovaはお互いの等身大の姿をリアルタイムで届けられるソリューションです。記事や写真では伝わりづらい部分もあると思うので、ぜひ会場で体感してほしいです」と伴氏は語る。
Conovaは、スノーピークビジネスソリューションズの東京都内のオフィスと愛知県岡崎市のオフィスをつないでいる。「自社のオフィスにConovaを設置してみて、ミーティングでの利用以外にも、ただ手を振ってみたり、『あ、あの人が向こうに出社しているな』『元気そうだな』と感じられたりするだけで、社内に一体感が生まれます。そういった非言語的なコミュニケーションにこそConovaの価値があると思います」とも、伴氏は話していた。
Conovaを裏側で支えるSkyWayは、医療や教育の分野からの引き合いが増えているそうだ。その他、遠隔地での接客業にも需要があるという。
NTT Comの二井氏は「イベント当日、私は岡崎からConovaを通じて会場に顔を出す予定です。会場にはSkyWayを使ったスマートインターホンなど、Conova以外の事例も展示しますので、ぜひ体験しに来てください。SkyWayがどのように使えるのかについて具体的なイメージが湧いていない段階でも、アイデア創出からお手伝いできるはずです」と述べていた。