菌ケアサービスのKINS、約15億円を資金調達 独自菌の研究開発や人員増強に活用

総合的な菌ケアサービスを展開するKINSは10月4日、第三者割当増資、および銀行借入により、約15億円の資金調達を実施した。これにより累計資金調達額は約30億円となった。調達した資金は、獲得済の独自菌・原料の事業化のための研究開発や、研究部門・事業部門の人員の増強などに活用する。

KINSは、美と健康を司る1000兆個と言われる全身の菌(常在菌)をケアすることを提案し、研究、開発、販売までを一気通貫して行う、マイクロバイオームに特化したヘルスケア企業。コンシューマーヘルスケア事業、クリニック事業、研究の全てを自社で行っている強みを活かし、慢性疾患・症状に対する効果の期待できる独自菌・原料の探索から開発までを行っている。

近年の細菌叢(マイクロバイオーム)研究の成果から、身体の様々な部位(腸内・皮膚・口腔内他)の細菌叢と疾患との関係が明らかになってきている。腸内細菌を用いて腸疾患を治療する先進医療が日本国内外でスタートするとともに、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患やうつ病を始めとする精神疾患など、全身のさまざまな疾患に対するマイクロバイオーム医薬品の開発が行われており、「菌」による創薬が世界的に注目されている。

KINSはこれまで、人、および犬猫を対象としたコンシューマーヘルスケア事業、およびクリニック事業を拡大するとともに、マイクロバイオームと慢性疾患・症状の関係に関する研究を進め、疾患・症状への効果が期待される複数の独自菌の獲得にも成功してきた。

このほど、森六ホールディングス、第一生命保険、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資、および銀行借入による約15億円の資金調達を実施した。これまでの第三者割当増資、および銀行借入を通じて約15億円の資金調達を実施しており、今回の調達による累計資金調達額は約30億円となった。

今後は、2025年までに約1000人分の検体を採取することを目標に菌バンクプロジェクトを活性化させ、さらなる独自菌の獲得への研究を進めていく。特に有望な独自菌については、対象となる疾患や症状を抱える多くの人々に自社プロダクト、および他社への原料提供を通じて届けられるよう、関連する研究を重ねてエビデンスを蓄積し、大量培養・量産体制の構築、および実際のプロダクト化までを達成することが、自社にとっての次の重要なマイルストーンとなるとの考えを示した。

独自菌の一例として、慢性疾患やがんなどの発症リスクと関連する酸化ストレスの緩和に役立つとされており、健康寿命を延ばす可能性が示唆されているポリアミンを産生するKINS独自の乳酸菌については、複数の効果についてエビデンスを獲得しており、食品やサプリメントその他のプロダクト化を検討している。また、独自の皮膚常在菌については、シンガポールで運営するクリニックや自社ラボでの研究を通じて、特定の皮膚の慢性疾患に関するエビデンスの獲得を目指す。

今回調達した資金は主として、獲得済の独自菌・原料の事業化として推進する、ポリアミン産生乳酸菌や、KINS独自の皮膚常在菌株、およびその代謝産物と対象とする慢性疾患・症状との関係についての研究や、大量培養・量産体制の確立、独自菌の他社へのB toB販売の開始、既存の自社事業領域における独自菌・原料を用いた新プロダクトの開発、シンガポール、台湾に続く新規国への参入に関する研究開発にかかる各種活動や、研究部門・事業部門の人員の増強、さらにマイクロバイオーム研究基盤の拡大に関する研究施設の拡大に活用する。

皮膚・腸内・口腔内他身体のさまざまな部位の菌と健康に関する研究を更に加速し、KINS独自のソリューションをより多くの人々に届けることで、マイクロバイオームを通じた慢性疾患・症状の解決により一層貢献していく考えを示した。

KINS 代表取締役社長 下川穣氏は、「職の医療法人理事長としての様々な慢性疾患の臨床体験から、慢性疾患の根本解決を目指して、2018年にKINSを創業しました。創業後約5年弱で、8万人を超える多くの方に菌ケアサービスをお届けし、自社ラボの設立(2020年)や自社クリニック事業の開始(2022年)などを通じ、独自の菌解析プラットフォームを構築してきました。その成果として、慢性疾患・症状への効果が期待できる独自菌・原料の獲得や、医療の領域での医薬品シーズとなりうる独自菌の研究が行える状態まで到達できました」と話し、この間自社を支えたステークホルダーや自社チームへの感謝を述べた。

「ここからはいよいよ、自社プロダクトでの活用、他社への原料の販売、創薬シーズの開発を通じて、研究の成果を世の中に届けていくことが重要になってきます。加えて、当社のコンシューマーヘルスケア事業・クリニック事業を更に拡大するとともに、シンガポール・台湾に続く新規国にも参入し、より多くの方々に弊社のソリューションを届けていきます。このような更なるチャレンジに向けて、当社の可能性を信じていただけるパートナーの皆様を今回お迎えできたことを大変嬉しく思っています。今回の資金調達を通じて、マイクロバイオームを通じた慢性疾患の根本解決に貢献するべく、これまで以上に一層まい進してまいります」とコメントした。

【引受先コメント】

■森六ホールディングス 経営企画部 事業企画担当 主幹 藤原洋平氏

森六ホールディングスは、KINS社の理念と創薬を含むマイクロバイオームへのアプローチを通じて慢性疾患を根本的に解決するとの思いに共感し、事業連携を通じて共に成長を目指す強固な パートナーシップを構築するとともに、弊社グループが中期経営計画「2030 年ビジョン」において新規事業領域の1つとして掲げたライフサイエンス領域に繋がるヘルスケア事業のさらなる拡充に挑戦してまいります。

■第一生命保険 オルタナティブ投資部長 片岡正史氏

弊社は、長期の資金供給が可能な生命保険会社の特色を活かし、社会課題の解決やイノベーション創出に挑戦するスタートアップ企業を支援する取り組みを積極化しております。近年、多くの研究成果により、マイクロバイオームと人の健康状態や様々な疾患に密接な関連性があることが示されてきています。KINS社の独自菌を活用したプロダクトの開発、人の健康やさまざまな症状・疾患に有効な菌に関する研究開発の加速に大いに期待しております。

■SMBC ベンチャーキャピタル 投資営業第二部 次長 金子竜也氏 

異なる3つのビジネスモデル(コンシューマーヘルスケア事業、クリニック事業、ラボ事業)を有機的に展開できている点、これを実現する多様性のある組織、経営陣によるマネジメント力に当社の特徴があると考えております。今後、研究開発の進化による基盤強化と海外展開、BtoB連携による事業拡大の両輪を並行して進めることで、マイクロバイオーム領域における更なる存在感を発揮して頂くことを期待致します。SMBCグループとしても事業成長をご支援させて頂きたいと思います。

■みずほキャピタル 代表取締役社長 大町祐輔氏

KINS社は、独自菌の開発を中心に、マイクロバイオームについての研究開発を進め、応用領域を人やペット向けのコンシューマーヘルスケアにも広げる、ユニークな事業を展開されています。マイクロバイオームに関する研究の進展は、慢性疾患等の悩みを抱える多くの人々やペットに恩恵をもたらすものと期待しており、みずほキャピタルは今回の出資を通じて、KINS社のチャレンジに参加出来る事を大きな喜びと感じています。みずほキャピタルは、下川社長をはじめ社員の皆様と共に、マイクロバイオームがもたらす画期的なソリューションの実現に貢献して参ります。