経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は9月27日、「日清紡ホールディングスが海水中で速やかに無害な成分に分解するイオン結合成分を持つ海洋生分解性プラスチックの開発に成功した」と公表した。

日清紡ホールディングスは、NEDOの材料・ナノテクノロジー部が2022年度から実施してきた「海洋生分解性プラスチックに関する新技術・新素材の開発」事業の一環として、今回の研究では海水に豊富に存在するNa成分と反応してイオン結合部分が切れる分解性プラスチックの開発に成功した。

この海水(Na成分)で分解するイオン結合成分を主鎖成分に入れた分解性プラスチックを、従来の一般的な樹脂(プラスチック)素材(主材)に添加して成形・加工し、海水に触れる部品・成形品などとして利用すると、海水中のNaイオンによって分解するイオン結合成分でまず分解し始め、次第に微細化し、その後は海水中の微生物によって生分解が進んでさらに微細化し、最終的にはH2O(水)やCO2(二酸化炭素)まで分解する生分解機構が働くことを目指している(図1)。生分解の反応は、添加剤部分でまず生分解が進み、その後は微細化が進んで、一般的な樹脂製の主材の部分でも生分解が促進する仕組みを目指している。

  • イオン結合部分が海水のNaイオンによって生分解が進んでいくイメージ図

    イオン結合部分が海水のNaイオンによって生分解が進んでいくイメージ図 (出所:NEDO)

このイオン結合成分を持つ海洋生分解性プラスチックを、樹脂添加剤として最適化するように工夫した上に、分解性を持つセルロース成分も添加すると、「イオン結合成分を持つ海洋生分解性が働くとともに、セルロース成分での分解性も働くことを、東京都内や千葉県内での沿岸部での海水中や土壌中での試験でも確認できた」という。

なお、NEDOは、今回の日清紡ホールディングスによる研究開発成果を基に、2022年11月にウルグアイで開催された第1回INC(政府間交渉委員会)での議論を受けて、日本政府が2023年5月から6月にかけてフランスで開催された第2回INCにて提案した「2040年までに海洋性分解プラスチックによる“追加的な”海洋汚染をゼロにする」という目標に貢献する研究開発成果・事業化まで前進させたいとの意向を示している。