岩谷産業は9月13日、独自に開発した銅鉄合金溶加材を用いることで、ステンレス配管と銅配管を溶接する新技術を開発したことを発表した。

  • 銅とステンレスの継手の外観写真

    銅とステンレスの継手の外観写真(出所:岩谷産業)

銅と、ステンレスの主成分である鉄は、混ざると合金を形成しない“水と油”のような関係で、金属を溶かして合金を形成するアーク溶接技術の確立は困難とされていた。しかし今回、岩谷産業が独自で組成などを開発した銅鉄合金溶加材を使用し、タングステンの電極棒を使用して別の溶加材をアーク中で溶融し溶接する「TIGアーク溶接法」を用いた結果、室温および低温環境下でも十分な引張強度を有する継手を得るための溶接技術の確立に至ったとする。

今回の新手法で接合した銅とステンレスの継手部は、その特徴として、マイナス40℃の環境下での引張試験でも、母材からの破断や溶接部からの脆性破壊は生じないとのこと。また疲労試験においては、配管耐圧と大気圧を200万回繰り返しても疲労破壊は生じなかったという。

なお、この現象を解明するため、東北大学大学院 工学研究科 材料システム工学専攻の佐藤裕教授によって、溶接部の金属組織に関する学術指導が行われたといい、透過型電子顕微鏡(TEM)で接合部の金属組織を観察したところ、金属結合が存在していることが確認できたとしている。

  • 銅とステンレスの継手のTEM画像

    銅とステンレスの継手のTEM画像(出所:岩谷産業)

昨今の銅市場では、世界的な鉱物資源の需要拡大に伴い、価格の高騰をはじめとする調達の課題が表面化しつつある。またこうした環境変化を受け、優れた熱伝導性を持つ銅が用いられてきた空調業界の冷媒配管に対して使用する銅の量を削減する動きがあるという。

しかし岩谷産業はこうした課題に対し、今回開発された接合技術を用いることで、銅配管の一部をステンレス配管に変換することが可能となり、高価な銅の使用量を削減することができるとする。新手法では、従来の配管溶接技術に加えて、今回開発された銅鉄合金添加剤を用いることで容易に溶接加工が可能とのことだ。

同社では現在、溶接の自動化についても開発・検討を進めながら、溶加材メーカーと共同で量産体制の構築を進めているといい、2024年には市場への供給を開始するとしている。