AIを利活用したサービスによる社会課題解決に取り組むエクサウィザーズはこのほど、さまざまなクライアント企業・パートナー会社と協力して先進的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを紹介するイベント「ExaWizards Collaboration Day」を実施した。
本稿では、同イベントで、阪急阪神不動産のDX推進部 兼 人事部課長 向原孝樹氏が、「DXアセスメント(DIA)を起点とした阪急阪神不動産における人材育成の全体像」というテーマで行った講演の模様をお届けする。
「DXの目的は社員の仕事や組織に内在している」
阪急阪神不動産は2022年から全社を挙げてDXを推進するため、さまざまな取り組みを行っている。
1つ目の施策は2022年4月に「DX推進部」を新設したことだ。これに合わせて、経営層をメンバーとする「DX推進委員会」の設置も行った。このDX推進委員会では、月に1度、全社横断でDXに関する情報共有や意見交換などを行っているという。
「各本部にDX担当を任命するという取り組みも行いました。DX推進部と兼任する『本部推進担当』に加え、2023年4月から『各部DX担当』を70名ほど任命し、各本部・各部の事業や業務に係るDX推進の旗振り役を担っていただいています」(向原氏)
加えて、2023年4月には「DX推進戦略」も発表。このDX推進戦略は、DXにより目指す未来のまちづくり、DXバリュー(未来顧客への提供価値)、事業変革の方針、ロードマップについて、役員・社員とのディスカッションを経て策定されたものだ。
「DX推進戦略は外部に公開していませんが、全社員に共有されています。この公開に際して、DXにかける想いをまとめたトップインタビューも掲載したのですが、そこには『DXの主役は皆さん』という言葉や『DXは手段であって目的ではない。その目的は、社員の皆さんの仕事や組織に内在している』といった一文が含まれています」(向原氏)
デジタルに関心のなかった人をビジネスデジタル人材にシフト
ここまで、阪急阪神不動産の全社DX推進に向けた取り組みを紹介してきたが、DX人材の育成に関しては2021年から取り組んでいるという。
「弊社は、2022年7月にDX人材のモデルを策定しました。それは、全社のITリテラシー向上により、全社横断的なデジタル化を推進するための専門性の高いDX人材である『ビジネスデジタル人材』の育成に着手するといった内容でした」(向原氏)
同社は、DX推進において量的に必要なのは「ビジネスデジタル人材」であると定義付け、事業部門での教育や研修、Off-JT(職場や通常の業務から離れ、特別に時間や場所を取って行う教育・学習)を行ったり、デジタルIT人材と協業したりすることによって、今までデジタルに関わりの薄かった人が知識を身に着けてビジネスデジタル人材にシフトできる環境を作り上げたという。
DXにまつわる教育や研修の制度も充実しており、以下の図のような研修を開催してきたという。
エクサウィザーズが提供するデジタルスキル標準に完全準拠したDX人材アセスメント「DIA」は2022年度から継続して行っている。2021年度に選抜100名に実施されたのを皮切りに、2022年度に全社員に実施したほか、研修への選抜や経験者採用選考などの参考情報としても活用されている。
なお、研修受講者のアセスメント結果から、スコアの高い人ほど会社が提供する研修への参加意欲が旺盛であることが分かったため、今後は、デジタルが「得意な人」と「そうでない人」の差が広がってしまうことを懸念しているとのことだ。そのため、「得意な人」を伸ばす施策の充実と、継続的なリテラシー教育の実施を両輪で進めていく考えだという。
加えて、向原氏は同社として必要な人材をデジタルスキル標準の人材類型に基づき再定義する必要があることも挙げ、人材類型・共通スキルリストに基づく社内・部内の能力目標の設定や、最終的には従業員の人材類型による配置の検討も進めていきたいとの意向を見せていた。