デジタルの進歩はあらゆる業務に影響を与えてきた。それは経理業務においても例外ではない。請求書や納品書といった紙類のデジタル化、AI-OCRによる文字の自動認識、さまざまなクラウドサービスの登場など、経理の世界にもDXによる大きな変化の波が着実に訪れているのだ。
とは言え、デジタル化に要するコストやリソースへの懸念から、デジタル化に踏み切れない企業も少なくない。そうした企業が今後デジタル化に取り組む際には、何かしらの指針が必要だろう。
7月21日に開催された「TECH+セミナー 経理業務変革 Day 2023 Jul.法令改正に適した経理DX」に花王ビジネスアソシエ ビジネスサポートセンター会計サービスグループ 部長 上野篤氏が登壇。グループを挙げて取り組む経理DXについて語った。
AIやシチズン・デベロッパーで経理DXを推進
花王ビジネスアソシエは花王グループのシェアードサービス企業だ。国内17社の経理業務を事業として行っており、設立は1940年と長い歴史を誇る。
その歴史の中で、花王グループの会計財務部門は幾度となく変革を繰り返してきた。例えば、1980年代にはすでにキャッシュレスや手形レスを導入し、2009年には経理業務をBPO化して内部統制の充実を図ってきた。近年ではアウトソーシングしていた業務を再び内製化し、AI業務を拡大するなど、絶え間ないデジタル変革を続けている。
そんな花王グループの特徴として、グループ各社が支払い能力を持たないことが挙げられる。親会社の花王に資金を集約しており、グループ各社の取引先に対しての支払いを親会社が代行しているのだ。このやり方には、グループ間における資金融通などの効率化や、内部統制を図るなどの目的があるという。
このように、花王グループは経理業務に対して強いこだわりを持ち、これまで歩んできた。上野氏は「こうした諸先輩方による変革を絶やすことなく、後輩メンバーにも引き継いでいかなければならない」と想いを語る。
一方で近年、花王グループにおける経理業務の歴史の中でも稀に見るほどの大変革が起きているという。