ClipLine社は8月22日、動画マネジメントシステム「ClipLine(クリップライン)」を新ブランド「ABILI(アビリ)」としてリブランディングすると発表した。発表会では、新ブランド名の下に展開される4つの機能・サービスがデモンストレーションを交えて紹介されたほか、ABILIを活用するユーザー企業としてPAPABUBBLEが登壇。小売業におけるデジタル活用について、自社の取り組みを語った。
サービス業を一気通貫で支える新ブランド
登壇したClipLine社 代表取締役社長の高橋勇人氏はまず、同社が実施したアンケート結果を基に、サービス業における大きな課題について説明。人手不足の要因の1つである離職について、「時給を上げなくても、教育・指導の改善や、期待値調整、やりがい増進、職場風土の改善で半分以上の離職が防げる」という推察ができることを示した。
一方でサービス業は、サービス自体が目に見えない無形性のものであることや、人によって質が異なる(流動性がある)こと、物理的な拠点がある場合、本部から現場までに距離があり、指示が上手く届かないことなどから、「ばらつきが大きくなる」と指摘。その解消がサービス業における経営のインパクトにつながると語った。
このばらつきをより包括的に解消するため、同社はClipLineのリブランディングを決定。新ブランド「ABILI」の下、データを分析・可視化するダッシュボード「ABILI Board」と、顧客満足度調査・アンケートツール「ABILI Voice」、動画型実行支援システム「ABILI Clip」、コンテンツ制作や施策の実行支援を行う「ABILI Partner」という4つのサービスを展開するという。
発表会では、ABILI Clipに搭載される生成AIを活用した新機能のデモンストレーションも行われた。新機能として搭載されるのは、動画内のセリフの自動書き起こしと自動多言語翻訳(英語、中国語、ベトナム語)に加え、顔写真を自動加工する「フェイスクラフト」である。実際、高橋氏がその場で動画を録画し、書き起こし・翻訳ボタンを押すと、即座に3言語が表示され、会場からは歓声が上がった。
「見ないデータを決めることも重要」- 小売ビジネスの在り方とは
発表会の中盤には、ABILIのユーザー企業としてアートキャンディーショップを展開するPAPABUBBLE JAPAN 代表の越智大志氏が登壇。「小売ビジネスを飛躍させるデジタルとは」と題し、ABILI を活用したPAPABUBBLEの取り組みを紹介した。
2023年4月1日に代表に就任した越智氏は、同月17日にはPOSの入れ替えを実施し、6月5日にはABILI Voiceを使った顧客満足度調査を開始、7月1日にはABILI Boardのプレ運用を開始するなど、急速なデジタル化を進めている。その理由について、越智氏は「小売のブランドにとっては、(数値・データを)見ることがまず大事」だからだと語る。数値やデータを見た上で、目標を立て、その目標を追いかけるというのは一見、シンプルなことだが、実は越智氏が就任した当初は、自店の予算を把握していない店長もいたと明かした。
「我々のようなビジネスでは、しっかりと目標を立て、現場に届けることが大切です。現場のスタッフも、毎日ただ商品を売るだけでは、モチベーションを保つことができません」(越智氏)
一方で越智氏は、「見ないデータを決めることも重要」だと言う。ダッシュボードにより、さまざまな数字が見えるようになるが、毎日現場が全ての数字を把握し、その意味を考えるのは難しい。そこで、「見るデータはこれ」という数字を明確にすることが必要なのだ。
「顧客を知り、つながる仕組み」のつくり方
PAPABUBBLEの店舗では、顧客の目の前で職人がキャンディーを制作する姿を見ることができる。このパフォーマンスが人気を呼んでいることから、スタッフにヒアリングをすると確かに「ファンが多い」「月に何度も来店がある」という声が多かったと越智氏は振り返る。しかし、同氏がさらに「実際は月に何回来てもらえているのか」「何を買ってくれるのか」と尋ねると、それは「分からない」状態だった。「お客さまのことを知らなすぎる」(越智氏)と危機感を感じた同氏は、ABILI Voiceで顧客満足度調査を実施するとともに、LINEの友だち登録機能の活用を開始。LINEでつながった顧客に情報を発信し、継続的な来店につなげ、ファンになってもらうための取り組みを進めている。
「小売業にとって、デジタルのインフラは必要不可欠です。6月30日に開始したLINEの友だち登録は8月現在で約6万人に増えました。来年の6月までに50万人にしたいと考えています」(越智氏)
ビジネスチャネルを増やし、さらなるCX向上を目指す
また、ビジネスチャネルをどれくらい増やせるかが重要だと言う越智氏が紹介したのが、PAPABUBBLEがこの夏実施したキャンディーの制作体験会だ。レジャー予約サイト「アソビュー!」に情報を掲載したところ、旗艦店である中野店では8月、物販の売上に大きな変化はないものの、体験会による売上が加わったことで、店舗としての売上は昨年比150%以上になったそうだ。さらに、8月22日からはキャンディーのデリバリーも開始し、さらにビジネスチャネルを拡充していく予定だという。
越智氏は「小売業はこれまでPOSをメインに考えられていたが、これからはダッシュボードメインで経営を考えるべき時代が来るのではないか」と語り、「売上だけでなく、スタッフの熱量も見ることができるのがダッシュボードの良さ」だと力を込めた。