大阪市立自然史博物館 ネイチャーホールにて2023年7月7日~9月24日にかけて開催されている特別展「恐竜博2023 大阪会場」にて「ケラトプス科の未記載種」として展示されている実物化石が、新属新種「フルカトケラトプス・エルキダンス(Furcatoceratops elucidans)」として記載されたと国立科学博物館(科博)が発表した。

  • 「フルカトケラトプス・エルキダンス」

    今回、新属新種「フルカトケラトプス・エルキダンス(Furcatoceratops elucidans)」として記載されたケラトプス科の未記載種の恐竜博2023 東京会場での展示風景 (所蔵:国立科学博物館、編集部撮影)

科博の石川弘樹 連携大学院生(地学研究部/東京大学 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、對比地孝亘 研究主幹(地学研究部 生命進化史研究グループ)、真鍋真 副館長らによるもので、研究結果は8月12日付で科学誌「Cretaceous Research」に掲載された。

今回発見された新種は、2012年に米モンタナ州の後期白亜紀(今から約7560万年前)の地層「「ジュディスリバー層」にて見つかった完全度が高く保存状態の良い標本(標本番号:NSM PV 24660)で、これまでの研究からは角や吻部に既知の種とは異なる固有の特徴が認められていたことから新種登録を申請していたもの。恐竜博2023 東京会場でも展示されており、その際、研究者の1人である真鍋副館長も、会期中に新種として認定される可能性があることを示唆していた。

属名の意味は「フォーク状の角のある顔」というもので、目の上の角が二股フォークのように伸びていることから命名。種小名の意味は「光を当てるもの」というもので、研究例の乏しい骨の形態をも明らかにする標本であることから命名したという。

大型の角竜であるケラトプス科は、フリルが短く、縁に突起が発達していることが多い系統(セントロサウルス亜科)と、フリルが長く、縁の突起はあまり長くないことが多い系統(カスモサウルス亜科)に分けられるが、今回の研究対象となった標本は、ジュディスリバー層や近くの地層からはこれまでにも断片的なナストケラトプスの仲間の化石は報告されてきたことも含め、セントロサウルス亜科の中で、フリルの縁の装飾が控えめながら、フリルの側面のリッジが発達しているナストケラトプスの仲間であることがわかったものの、種を分類するカギになるような固有の特徴は認められておらず、一方で目の上の角芯が大きく前方に伸び、やや内側に曲がること、鼻骨の一部が前上顎骨に外側から被さるようになっているなどの特徴から、新種であると考えられていたという。

また、全長は3.5mほどだが、近縁種の成体の7割程度の体格と考えられ、骨の癒合も進んでいないこと、さらに頭部や四肢の骨には幼体型と成体型の中間的な表面組織が見られることなどから、未成熟の若い個体(亜成体)だと考えられ、詳細な調査の結果、2~3歳で死んだ個体だと考えられると研究チームでは説明している。

加えて、全身のほとんどの部位で骨の癒合が進んでいないにもかかわらず、角の付け根などでは癒合が進んでいるといった成長過程の特徴を見ることができることから、目の上の角が長く伸びているが、角の付け根の骨の癒合が早いことで発達した角を支えることができた可能性があるとも説明しているほか、上顎のクチバシを支える角竜特有の骨「吻骨」や、フリルの縁の小さな骨の特徴まで詳しく調べることができるため、今後の研究が期待されるともしている。

  • 新種として記載されたフルカトケラトプス標本の骨格図

    新種として記載されたフルカトケラトプス標本の骨格図。白色の部位の骨化石が確認されている (C)Genya Masukawa (出所:科博プレスリリースPDF)

なお、研究チームでは、同標本について、新種であるだけでなく、ジュディスリバー層から見つかった角竜としては最高の完全度・保存状態の化石であり、角竜の1つ1つの骨の特徴に関する知見を提供する重要な標本であることから、今後のジュディスリバー層産の角竜に関する分類学的・解剖学的な理解を進める可能性を持っていると指摘。今後は、国内外の恐竜研究者と協力し、近縁種との比較をさらに進めるとともに、ジュディスリバー層の恐竜の多様性とその変遷、マイクロCTスキャンなども活用して、クチバシや顎、三半規管などの内部構造や神経血管系などの特徴に関して研究を進めていく予定とするほか、同標本の発掘地での追加調査を予定しており、同じ場所から発見された角竜以外の化石についても、現在研究を進めているとしている。

  • フルカトケラトプスの復元図

    フルカトケラトプスの復元図 (C)Utako Kikutani (出所:科博プレスリリースPDF)

特別展「恐竜博2023 大阪会場」の概要は以下の通り

会場:大阪市立自然史博物館(大阪) 会期:2023年7月7日~9月24日 開館時間:9:30時~17:00(入場は16:30まで 休館日:月曜日(祝休日の場合はその翌平日) 入場料(当日券):大人(65歳以上含む)1800円、高校・大学生1500円、小・中学生700円(主なチケット販売場所は大阪市立自然史博物館ミュージアムショップ、アソビュー!、展覧会オンラインチケット、セブンチケット、ローソンチケット、イープラス、チケットぴあ、CNプレイガイド、楽天チケットほか)