【〈特集〉まつ毛美容液】市場規模は120億円に急拡大 体感性を武器にリピート促進

まつげ美容液の市場が急拡大している。データ調査会社のインテージによると、2022年の店販のまつげ美容液の市場規模は、2017年比約2倍の60億円となったとしている。複数のメーカーによると、まつげ美容液の市場は、通販と店販でシェアが半々になっているという。通販も、店販と同様、60億円程度の市場規模になっている可能性がある。まつげの長さやボリュームアップの面で、体感性の高い製品も増えている。ヒト幹細胞培養液エキスやフラーレンを配合して差別化を図る企業も増えているようだ。

【インタビュー】ELEVATE 宮崎麗果 社長 体感性重視で開発、1年で3万箱超を出荷

▲Instagramでは約37万人のフォロワーがいる宮崎麗果さん

サイエンスコスメブランド「GENiS Professional(ジェニス プロフェッショナル)」を運営するELEVATEは2022年9月から、敏感肌向けまつげ美容液「Lashgenic(ラッシュジェニック)」を展開している。ヒト幹細胞エクソソームや豆乳発酵エキスを配合した、「体感性」を重視したまつげ美容液だという。発売直後から人気が急騰し、2023年7月末までに、3万5000箱以上が売れたとしている。同商品について、同社の社長で、インフルエンサーとしても知られる宮崎麗果氏に、人気の理由を聞いた。

 

<科学と古来美容の融合>

――まつげ美容液「Lashgenic」はどんな商品ですか?

最新のテクノロジーであるエクソソームと、古来の美容成分である発酵成分をミックスしたサイエンスコスメブランド「GENiS Professional」の第1弾商品として開発しました。

▲「GENiS Professional(ジェニス プロフェッショナル)Lashgenic」

私は敏感肌で、刺激の強い成分が肌に合いません。私と同じように、敏感肌の人でも使えて、まつげを伸ばしたりボリュームを増やしたりする効果を確かに期待できる商品として開発しました。

私は、化粧品の素材や美容成分について、マニアックに研究しています。

まつげ美容液については、「まつげが伸びた」「ボリュームが増えた」と確実に体感できるように、こだわって開発しました。

エクソソームは、ヒト幹細胞を培養した際の上清液から得られる成分です。若返りの伝達に大きく関係するといわれています。再生医療でも使用されており、希少価値の高い成分です。まつげの発育にも大きく影響します

豆乳発酵エキスは、イソフラボンを多く含んでいて、美白やアンチエイジング効果が期待できます。肌に対する刺激がとても弱い成分です。

「しっかり体感できる」「敏感肌でも使用できる」という二つのポイントを両立したまつげ美容液となっています。

――「GENiS Professional」の最初の商品としてまつげ美容液を選んだのはなぜですか?

スキンケア製品は、肌への効果を体感するのに、一定期間使い続けなければならず、時間がかかります。

まつげ美容液は、使い始めると、まつげの伸びやボリューム感のアップを、比較的短期間で体感できます。

すぐに効果を実感したいというユーザーに、ピンポイントで訴求することができるよう、まつげ美容液を第1弾として選びました。

 

<4回目の継続率は80%>

――まつげ美容液のユーザーの反応はどうですか?

リピート率が非常に高いです。

「Lashgenic」は公式ECサイトで、定期購入を中心に販売していますが、初回購入から2回目購入に至る人が90%以上となっています。4カ月目以降も定期購入を継続する人が、80%以上になっています。

継続率が高いのは、一度使うと、まつ毛のボリューム感アップを体感する人が多いからだと思います。

お客さまからは、「まつげ美容液を使っても肌が荒れなかった」というお声がとても多く聞かれます。

他のメーカーのまつげ美容液では、使い続けると肌が荒れるという人が少なくありません。

理由の一つに、まつげのボリュームアップのために刺激の強い成分を使っているということがあります。成分によっては、まぶたが下がってきてしまったり、色素沈着が発生したりするものもあります。

まつげ美容液は、衛生面にも課題があります。ブラシタイプは、まつげに液を付けた後、液の中に戻します。目は粘膜ですから、肌に何度も塗ったものを、粘膜に近い位置に使い続けるのは、リスクとして感じる人もいます。

当社の「Lashgenic」では、使い切りタイプの綿棒を採用しています。衛生面を気にすることなく、1回分をふんだんに塗ることができるので、お客さまの満足感が高いです。

 

――どんな形でブランドの認知拡大を図っていきますか?

これまでは、インスタグラムの私の投稿を見て、購入してくれるお客さまが多かったです。現在は、安定して在庫が確保できるようになったので、ウェブ広告も少しずつ出稿して反応を見ています。

美容サロンを経営するお客さまからは、「お店で取り扱いたい」というお声をいただくことも少なくありません。一部のサロンに向けて卸販売もできるよう検討しています。

まつげ美容液市場については、大手から中小まで多くのメーカーが参入して、レッドオーシャンになりつつあります。ただ、体感性や衛生面のリスクから、満足する製品に巡り会えていないユーザーがたくさんいると思います。

「まつげを伸ばしたい」と強く考える、モチベーションが高いユーザーに、体感性が高い当社の製品をしっかりとリーチさせていきたいです。競合商品がたくさんある中で、品質が高い確かな製品を開発して、ニーズが高い層にリーチさせることを、私は「オアシスマーケティング」と呼んでいます。

頭皮美容液やシートマスク、プロテインなど、まつげ美容液以外のジャンルでも、「オアシスマーケティング」で、プレゼンスを高めていきたいです。

 

【インタビュー】TENSHIN 西山結美社長 「Makuakeで目標金額の8.5倍を達成」

女性向けのヘアケア用品メーカーのTENSHINは8月、「La chicyou(ラシックユー)」ブランドからまつげ美容液を発売した。同商品の発売に先行して、クラウドファンディングサイト「Makuake」で応援購入を募集したところ、公開直後に目標金額を達成したという。最終的に目標金額の8・5倍に当たる255万円以上を売り上げたとしている。まつげ美容液の応援購入者の約34%が50代以上だったという。TENSHINの西山結美社長に、「La chicyou」のまつげ美容液を開発した背景について聞いた。

 

▲TENSHIN 西山結美社長 

<傷んだまつげをケア>

――「La chicyou」のまつげ美容液はどんな商品でしょうか?

アイメークやまつエク、ビューラーなどによるまつげのダメージをケアするために開発した商品です。

▲「La chicyou(ラシックユー)」のまつげ美容液

アイメークをしたりビューラーを使ったりすると、「まつげが傷む」「ビューラーの重みで、まつげが切れる」といった悩みを持った女性が多いです。私と同年代の人には、そうした悩みを持つ人が特に多いのではないでしょうか。

まつげが切れたり抜けたりして、まつげが減ってしまうと、鏡を見たときにとても違和感があるのです。多くの女性が感じたことのある悩みだと思います。

女性は産後になると、髪の毛が抜けやすくなりますが、まつげも弱くなるのです。

「まつげで自信を持ちたい」「途中で切れないようにしたい」「簡単に抜けないようにしたい」と強く思って、まつげ美容液を開発しました。

「La chicyou」のまつげ美容液には、ヒト幹細胞順化培養液エキスや、育毛の有効成分「キャピキシル」「ワイドラッシュ」など、5種類の機能性成分を配合しています。

独自の浸透技術「ドラッグデリバリーシステム」も採用しています。まつげケア成分を、皮膚や毛の表面を覆う角層まで、効率よく高速浸透させます。

他メーカーのまつげ美容液は、粘度が低い液体状の剤型が多いです。当社の製品は、ジェルタイプを採用しています。ジェルで固めることで、物理的に強くすることができます。

まつげは4カ月で生え変わります。まつげのボリュームアップや強化を図る場合、ケアを始めてから4カ月間は使い続けるのがいいと思います。

私は、もともと製薬メーカーで、薬剤師の資格を持ち、臨床開発の仕事をしていました。この商品は、薬剤師としての知見と、複数の育毛の専門家による試行錯誤が組み合わさって、作り上げられた製品といえます。

<50代以上の購入者は34%>

――「Makuake」での販売の結果はどうでしたか?

先行販売した「Makuake」では、応援購入の開始後すぐに、目標金額に到達するなど、とても多くの反響がありました。商品のコンセプトの中でも、「開発に関するストーリー」に興味を持って購入してくれたユーザーが多かったようです。

まつげ美容液のユーザーは、20~30代が多いというイメージですが、購入者の34%が50代以上であることも興味深かったです。60代も7・2%いました。まとめ買いをしてくれる人も少なくありませんでした。

公式ECサイトでは8月1日から販売を開始しましたが、幅広いターゲットに対して、訴えていきたいと考えています。

――今後はどういった形で商品をPRしていきたいですか?

公式ECサイトでは8月1日に販売を開始します。アマゾンでは、8月中旬に販売を開始します。

「Makuake」では、「産後の抜け毛のケア」や「傷んだまつげを強くするしみこむ次世代美容液」という開発コンセプトが受け入れられたようでした。

製品の開発コンセプトが伝わるよう、雑誌やSNSを中心に、お客さまと作る世界観をしっかりPRしていきたいと思います。

▶「La chicyou」のまつげ美容液の購入はこちら

https://www.tenshin-inc.com/lp?u=lachicyou

【DINETTE「PHOEBE BEAUTY UP EYELASH SERUM」】

<まつげメモリやハートのカードで継続率アップ>

コスメブランド「PHOEBE BEAUTY UP」を展開するDINETTEは、主力商品として、まつげ美容液「EYELASH SERUM」を展開している。同商品はD2Cで販売しており、2カ月ごとの定期配送を行っている。商品を使用しているユーザーが、自分のまつげがどれくらい伸びたかを把握できるよう、まつ毛の長さを測れる「メモリカード」などを同梱している。継続率を高めるさまざまな工夫を行っているという。

▲「PHOEBE BEAUTY UP EYELASH SERUM」

<ママ層がロイヤルユーザー>

同商品は、2023年でブランド創設4周年を迎える。「Be”ME”(ビーミー、なりたい自分になる)」というブランドコンセプトを持って誕生したという。「見た目はかわいいけれど、昨日は超優秀」といテーマを掲げ、商品開発を行っているとしている。

同社のまつげ美容液には、「キャピキシル」「ピディオキシジル」「センブリエキス」という三つのまつげケア成分を配合している。まつげが根元からしっかりと生えてくるようにサポートする成分となっている。ヒト幹細胞培養液やコラーゲン、ヒアルロン酸など、23種類の美容成分も配合している。

ユーザーのボリューム層は25~35歳となっている。30歳のユーザーが最も多いという。定期購入の継続率が高いロイヤルユーザーは、ママ層が多いとしている。産後の女性は、まつげのボリューム感に悩みを持つ人が多く、まつ毛美容液のメインユーザーになっているようだ。

インスタグラムの広告を見て、ECサイトに流入するケースが多いという。同社のブランドカラーであるピンクのクリエーティブが、インスタグラムのユーザーに刺さりやすいとしている。

 

<同梱物で継続率アップ>

同商品は、2カ月分を2カ月おきに定期配送するD2Cで展開している。同社では、定期購入の継続率を高めるために、自分のまつげがどれくらい伸びたかが分かるカードを同梱している。カードをまつ毛に当てると、まつげがどれくらい伸びたか分かるという。美容液を使う前と、使い始めてしばらくたった後で比較することがかのうだとしている。

▲同梱物を工夫して定期利用の継続率を高めている

商品には、ハート形の特別なカードも、ランダムに同梱して配送している。ハート形のカードが集まると、特典と交換できるサービスも行っているとしている。

【シーオーメディカル「湘南美容まつ毛美容液」】

<「LDK the Beauty」でベストバイにも>

化粧品やサプリの企画・販売を手掛けるシーオーメディカルは「湘南美容まつ毛美容液」を展開している。同商品は、「湘南美容クリニック」の医師のアドバイスを基に開発された。2021年には、専門家や編集者がユーザー目線で商品を検証する雑誌「LDK the Beauty」に、「ベストバイコスメ」として選出され、前年の5倍を超える売り上げを記録したという。それ以降、量販店などの店舗販売を中心に人気が継続しているとしている。

「湘南美容まつ毛美容液」は、「ワイドラッシュ」や「キャピキシジル」「ケラチン」「ヒアルロン酸」などの12種類のまつげ美容ケア成分を配合している。

▲「LDK the Beauty」でも取り上げられた湘南美容まつ毛美容液

「湘南美容クリニック」の医師が、開発段階でアイデア提供を行い、サンプルの段階でアドバイスも行ったとしている。

柔らかいブラシタイプを採用するなど、美容液を塗った際にまつげ全体に行き渡りやすくしているという。

同商品は、売り上げの9割近くが、ドラグストアやバラエティーショップでの店販によるものだという。シーオーメディカルの公式ECサイトや、楽天市場、アマゾンでも販売している。

「LDK the Beauty」では、2021年の12月に紹介されたという。同雑誌の編集部が、2カ月間、20種類のまつげ美容液を使って、まつげの、「伸びた長さ」や「ボリュームの増加量」のビフォーアフターを比較した。その結果、同商品が最も効果が高かったと評価されたという。商品の使いやすさや、バランスの良い処方も評価されたとしている。

「LDK the Beauty」で紹介された後は、同商品の売り上げが前年の約5倍に伸び、欠品する時期もあったという。現在でも、好調な売れ行きが継続しているとしている。

同社では、「『LDK the Beauty』を見て購入した人が、まつげのボリュームアップを体感し、その後も店頭でリピート購入をしているとみている」(合田稔取締役本部長)と話している。

同商品の価格は、4ml入りで税込1980円。ECとクリニック限定で、アップグレードした「CO ロングラッシュリッチ」も販売しており、こちらは税込4054円となっている。

【オルト「濃いまつ毛美容液 バンビウィンク プレシャスアイラッシュセラム」】

サプリと併用で体感性アップ

サプリメントや化粧品の開発・販売を手掛けるオルトは、「濃いまつ毛美容液 バンビウィンク プレシャスアイラッシュ セラム」を展開している。同商品は、アンチエイジングにつながる成分であるフラーレンを、高濃度で配合している。同社は、”まついく”サプリ「バンビウィンク」も展開しており、サプリと併用することで、まつげのボリュームアップをより強く体感できるとしている。

「プレシャスアイラッシュセラム」は、まついくサプリ「バンビウィンク」のユーザーの声を基に、サプリだけでなく、外側からまつ毛のケアができるようにと開発された。

▲濃いまつ毛美容液 バンビウィンク プレシャスアイラッシュセラム

サプリのユーザーからは、「他メーカーのまつげ美容液は、肌荒れしたり、肌に色素が沈着したりする」といった声も聞かれていた。安心して使えるまつげ美容液を開発したいと考えたという。

「プレシャスアイラッシュセラム」は、ユーザーがまつげの長さとボリューム感に満足できるよう、エイジングケア成分の「フラーレン」を、メーカー基準で高配合しているという。育毛成分の「オクタペプチド」や「ピディオキシジル」も配合している。サプリ「バンビウィンク」と同様に、「ビオチン」や「ビワ葉エキス」なども配合している。

同商品は、50種類以上のパターンから容器を選定するなど、容器の使いやすさにもこだわったという。美容液をまつ毛に塗る部分には、平らで塗りやすいチップタイプを採用した。キャップの口部分が細いデザインを採用しており、チップに美容液が適量つくよう工夫しているという。

▲オルト直販部リーダーの鎌谷典枝さん

美容液をまつげに塗る際に、手が顔に当たらないよう、柄の部分を長くするなど、デザインにも工夫を施している。

▲柄を長くして塗る際に手が顔に当たらないようにしている

「プレシャスアイラッシュセラム」の価格は、税込5830円。サプリと併用することでまつ毛のボリュームアップを体感する人が多く、売り上げは好調に推移しているという。

ユーザーのボリューム層は30代後半から40代。楽天市場などのECモールでは、夜間や、正午前後の時間帯に売れる傾向があることから、働く世代の女性のニーズが高いのではないかとしている。