読者の皆さまは、今年の夏をどのように過ごすだろうか。
新型コロナウイルス感染症が2023年5月に「5類感染症」へ移行となったことにより、これまで規制されてきた外出へのハードルが一気に下がったことは間違いない。
ここ数年の閉塞感から解き放たれ、今年の夏はアクティブに過ごす方々も多いはずだ。
家族や友人、パートナーなど他者と予定を共有できるスケジュールアプリ「TimeTree」では、ユーザーが登録している予定データを、個人を特定できないかたちで集計・分析してサービスの向上に役立てているという。今回は、TimeTree 取締役 CDOの松田駿一氏に、TimeTreeに登録されている「2023年の夏」の予定にはどのような傾向があるかを伺った。
果たして、本当にレジャーを楽しむ人は増えているのか。さまざまな規制が解除されて初めての夏、どのような場所が人気なのか。実際に登録されている予定データの文字情報から2023年夏の傾向を紐解いていく。
※記事内で掲載している予定データは、TimeTree社が匿名性を保った状態で収集し統計的に処理したものです
コロナ禍を終え、夏の風物詩は復活したのか?
まず見ていきたいのは「夏特有のイベント予定がコロナ禍の終幕で増えているのか」を示すデータだ。下記のデータは、「祭り」や「フェス」など夏特有のイベント予定が前年に比べてどれほど増えているかを示している。
2. データ定義
- 対象:2023年7月1日時点の、対象ワードがタイトルに部分一致で含まれている予定
- 2023年合計の予定数が2022年合計の予定数の何%あるかを示したもの
※ ユーザー増加による影響は除く(ユーザー増加率で予定数増加を割り戻し)
上記のグラフから、祭りや花火大会など、コロナ禍では中止ないし自粛を余儀なくされていたイベント群が予定に多く組み込まれていることがわかる。夏の風物詩が本格的に復活を遂げたといってもよいだろう。
「花火やお祭りの予定は昨年には徐々に回復傾向にあったものの、今年に入ってコロナ禍以前の水準に戻ってきているようです。外出の選択肢がかなり増えたことが伺えますね」(松田氏)
数多くのアクティビティが復活した中で、特に「海外旅行」においては、その数だけではなく、「日数」にも変化があったようだ。スケジュールに「海外旅行」に関連する予定が入っているデータを見ると、予定開始から終了までの平均日数は回復傾向にある。
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折れ線グラフが平均の予定日数、積み上げの棒グラフは「2019年を100%とした各年の予定登録数の割合」を示している
中・長期間の旅行を楽しむ人が増えているだけではなく、予定数はコロナ禍以前を大きく上回った。
以上の結果から、多くの人がここ数年の自粛ムードから解放されていることがわかった。感染症のリスクには引き続き留意する必要があるものの、イベントの復活や予定のバリエーションは広がっている。この夏は大いに楽しめそうだ。
気になるテーマパーク事情 ハリーポッター体験型施設は半年後も混雑予想
丸一日をフルに使える夏休みに、テーマパークへ行く方も少なくないはず。ここで、この夏のテーマパーク事情を予定データから見てみよう。
次のグラフは、日別に計測した予定データのうち、テーマパーク関連のキーワードが入っているものの数を集計したものだ。
東京ディズニーリゾートは圧倒的な予定数があることと、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンも7月、8月は予定数がかなり多いことがわかる。
また、旧としまえんの跡地に今年オープンした体験型施設「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 メイキング・オブ・ハリー・ポッター」も人気を集めている。グラフには、同施設に関連すると思われる予定「ハリポタ」「豊島園」なども含まれているが、波形を見るとすでに12月まで予定を入れている人も少なくない。チケットの確保は早めにしておいた方が良さそうだ。
夏の楽しみは当日のみにあらず? 準備のデータにも傾向アリ
ここまでは単一のイベントの予定を見てきたが、イベントに参加する際は、チケットを買ったり、水着を用意したりといった準備が必要だ。例えば、「花火」の予定が入っている人は、事前に「浴衣」という予定が入っている割合が高い傾向にある。思い出作りのためには場に合った衣装も欠かせない、これぞ夏というデータだ。このデータは以下の観点で算出されている。
浴衣の例であれば、「浴衣(KW①)をタイトルに含む予定を登録している人が、花火(KW②)を含む予定も登録している割合」は「浴衣をタイトルに含む予定を登録していない人が、花火をタイトルに含む予定を登録している割合」に比べて高かった、ということだ。 この場合、KW①がKW②のイベントの準備として計画されている可能性が高いと言える。
その他のキーワードでも、次のような関連が見いだせた。数値は、KW①を登録している人が、登録していない人に比べてKW②を登録している割合が何倍高かったかを示している。
■KW①「水着」×KW②「プール」:約10倍
■KW①「チケット」×KW②「ライブ」:約4倍
■KW①「旅行」×KW②「航空券」:約4倍
上記のような「そのイベントに参加するならば必ず必要な準備」はある意味当然かもしれないが、加えて興味深いのは次のデータである。
■KW①「日サロ」×KW②「サーフィン」:約12倍
■KW①「ジム」×KW②「海」:約2倍
■KW①「ジム」×KW②「プール」:約1.56倍
どうやら、夏のイベントでは事前の“コンディション調整”も欠かせないようだ。サーフィンと日焼けサロンの関連性は著しく高い。
松田氏「最高の夏にしてほしい」
データの分析によって、“2023年の夏”の傾向が見えてきた。これを踏まえ、松田氏はこう語る。
「ここ数年はかなり抑圧された夏を過ごされた方が多かったと思います。予定のバリエーションが増えていますから、楽しみなイベントが戻ってきたことがわかります。カレンダーを見ていても楽しくなってくると思うので、どんどん予定を増やして最高の夏にしてほしいです」(松田氏)
TimeTreeでは今後、アプリに登録された予定データを使って、より適切な情報をユーザーに提示できるように改修を進めていくという。
例えば、「大掃除は年末のこの時期に予定に入ることが多い」という傾向データから、時期になってもまだ大掃除の予定を入れていない人に大掃除の準備をサジェストするといったことを想定している。自らアプリに登録した(もしくはまだしていない)予定データを基に行われるサジェストは、興味関心にマッチする可能性も高いだろう。松田氏は「今後は、予定データから未来を予測し、ユーザーの行動に役立つ提案ができるようなデータ活用を行っていきたい」と展望を語った。