昨今、生成AIが注目されており、ビジネスにおける有効活用に対し期待が高まっている。ただ、AIをどのように業務に活用していけばよいのかについて悩んでいる企業が多いのが実情だ。
セールスフォース・ドットコムが開催したイベント「Salesforce World Tour Tokyo 2023」において、三井住友フィナンシャルグループ/三井住友銀行 データマネジメント部 部長長 江藤敏宏氏が、SMBCグループ(三井住友フィナンシャルグループ)における生成AIを含むAIの活用事例を紹介したので、本稿ではその模様をレポートする。
SMBCグループ(三井住友フィナンシャルグループ)では、2014年から業務でAIを活用しており、今年の7月からは生成AIの利用も始まっている。同グルーブでは、約300万の法人顧客、約4,300万の個人顧客と取引がある。
江藤氏は、「当行は多くのお客様とお取引があり、お客様、取引の数が、結果として大量のデータを生み出すということにつながっている」と語った。
SMBCグループは、2023年度から新たな3カ年の中期経営計画をスタートし、社会的価値の創造、経済的価値の追求、経営基盤の拡大の強化という3つの基本方針を掲げている。これらを実現していくうえで、AIやデータの活用が非常に重要なファクターになると、江藤氏は強調した。
同グループがAIを最初に導入したのは2014年で、コールセンターの対応業務における品質向上が目的だったという。その後、2016年には、データマネジメント部というデータ専門組織を立ち上げ、インフラ基盤やツールの導入整備を進めることと並行して、各事業領域におけるAIデータ利活用の取り組みを進めてきた。
法人ビジネスでのAI活用
法人ビジネスでは、取引先データの分析にAIを活用している。従来、取引先の情報がいろいろなところに点在しており、営業担当は自らさまざまな媒体でデータを確認しながら対応する必要があった。その負担は大きく、顧客への提案の糸口を見つけるのに時間がかかっていたという。
この課題解決に向け取り組んだのが、営業向けのダッシュボードの提供だ。このダッシュボードでは、財務データや企業情報といった顧客属性データのほか、入出金等をはじめとした取引データや契約データなどをまとめて分析することにより、想定される顧客ニーズや課題を抽出、推定して提供している。
営業担当は、このダッシュボードを見ながら同業他社の成約事例や新商品の情報などに加え、顧客の財務指標や取引の変化を一元的に確認することができるようになっている。
また、情報に動きがあった場合は、それをトリガーにして、営業担当レコメンドメールが送信される仕組みも導入している。
そのほか、顧客への提案資料も、ダッシュボードを活用し作成できるように整備をしているという。
リテールビジネスでのデータ利用
SMBCグループでは、個人顧客向けのモバイルベースの新しい金融決済の総合アカウントとして、今年3月にOlive(オリーブ)という新たなサービスをリリースしている。
Oliveでは、銀行口座や資産運用、クレジットカードやデビットカードポイントをアプリで管理できるようにしており、顧客に関する多くのデータを連携することが可能になっている。
また、グループ会社に加え、パートナー企業との連携を進めていくことで、ポイントを軸とした事業領域の拡大も進めていきたいと考えており、購買データやマーケティングデータなどの非金融データも活用する予定だという。