Ansysは7月25日(米国時間)、最新リリース「2023 R2」を発表した。

最新版となる今回は、強化された数値計算機能、パフォーマンスの向上、および分野横断的なエンジニアリングソリューションなどが提供され、分散したエンジニアリングチームに新しいテクノロジーとパフォーマンスの向上を提供すると同社では説明している。

半導体技術のトレンドの1つとして3D ICがあるが、1つのパッケージ内により多くの半導体が搭載されることとなり、熱、電磁界(EMI)、電力といった課題を複雑化されており、そうした分野に同社では電気-熱ソリューションを活用することで高い信頼性を得ることが可能になるとしており、半導体向けマルチフィジックスサインオフソリューション「Ansys RedHawk-SC」の最新版では、熱解析ワークフローの高速化を実現したとするほか、IC設計のための電磁界シミュレーションとモデリングチェーンは、「Ansys High Frequency Structure Simulator(HFSS)」、「Ansys Q3D Extractor寄生パラメータ抽出解析」、「Ansys RaptorX EMソルバー」を統合したとする。また、「Ansys EMC Plus(旧Ansys EMA3D Cable)」では、完全なEMC(電磁両立性)ワークフローを提供するとしており、これら統合された新機能により、複雑化する製品要件の中で、エンジニアはハイテクに関する課題に効率的に対応できるようになると同社では説明している。

さらに、電気自動車(EV)におけるパワーエレクトロニクスの電気-熱解析ワークフローにおいては、シグナルインテグリティ、パワーインテグリティ、EMI解析のための「Ansys SIwave-CPA」およびAnsys Q3D Extractorにより、パワーICからパッケージ、基板までのソリューションを提供。EV設計者は、「Ansys Motion」、「Ansys Sound」を統合したワークフローにより、シミュレーションを使用してサウンドソノグラムを可視化し、ブランドを定義する音響をモデリングすることもできるともしている。このほか、航空宇宙、防衛、自動車業界のエンジニアは、組織全体の安全分析プロジェクトの中心的なハブとして機能する「Ansys medini analyze 2023 R2」の新プラットフォームの恩恵として、既存のデスクトップクライアントに代わる新しい「Ansys Digital Safety Manager Webアプリ」によって、mediniの安全‍およびサイバーセキュリティプロジェクトの計画、監視、検証を一元的に行うことができるようにもなったという。

  • Ansys 2023 R2のイメージ

    Ansys 2023 R2では、Ansys SIwave-CPAと Ansys Q3D Extractorを使用して、パワーICからパッケージ、基板までのEVパワーエレクトロニクスの電気-熱解析ワークフローを提供する

加えて、Ansys 2023 R2の流体製品ライン‍では、産業用シミュレーションをGPU上でネイティブに実行できるようになったことで、計算時間と総消費電力の削減が可能になったともしている。例えば、スライディングメッシュ、圧縮性流れ、渦消散モデル燃焼シミュレーションにマルチGPUのサポートが拡張されており、内燃エンジン、遠心ポンプとファン、ターボチャージャーとコンプレッサ、撹拌機とリアクター、油圧機械の解析が「Ansys FluentマルチGPUソルバー」で高速化できるようになったともしている。

また、「Ansys Discoveryシミュレーション駆動型3D設計ツール」では、リアルタイムの構造解析により予測精度が向上し、薄板構造のGPUメモリ要件が最大10倍削減されるともしており2023 R2では乱流モデル、電磁界解析、製造制約を含む50の機能が提供されるとする。加えて、「Ansys Speos光学システム設計ソフトウェア」もGPUアクセラレーションを活用することで、レイトレーシングを使用した光学シミュレーションの完全サポートを果たしたとするほか、GPUアクセラレーションによる3D照射にも対応、設計者は光の寄与をより正確に分析できるようになったとしている。光子レベルでも、「Ansys Lumericalシミュレーションツール」の時間領域差分法(FDTD)ソルバーに新しいExpress Modeが追加され、NVIDIA GPUでのシミュレーションが可能になったとしている。