ヤマハ発動機は、2021年10月に千葉大学予防医学センターとの間で共同研究契約を締結していた、“公道用電動カート(低速モビリティ)”を使った移動が健康促進に寄与するのかに関する検証について、2022年度に行われた5か月間の実験で一定の効果が見られたことを報告した。

  • ヤマハ発動機の公道用電動カートを使用した実証実験の様子。

    ヤマハ発動機の公道用電動カートを使用した実証実験の様子。(出所:ヤマハ発動機)

同共同研究では、社会課題へのソリューション提供の一環として、公道用電動カートの導入による高齢者の外出や社会参画の促進と、介護予防や健康増進に対する効果の関係を明確化することを目標としている。なおこの研究では、ヤマハ発動機が提供する電動カートを使用しているという。

2021年度の実証実験では、大阪府河内長野市(南花台)、千葉県松戸市(河原塚地区・小金原地区)の協力のもと、2021年10月中旬から12月中旬まで実験運航を実施。約2か月間にわたる走行前後の変化を、「電動カート利用群」と「非利用群」へのアンケートによって比較したという。その結果、走行後に聴取した健康行動・心理的な変化については、走行前の基本属性を考慮した上でも、非利用群に比べて電動カート利用群の方が良好な方向に変化していることが確認されたとする。

そして2022年度の実証実験では、河内長野市(日東町・大師町)、奈良県王寺町(美しヶ丘)地区の協力を受け、2022年8月から2023年1月まで実験運航を行い、走行(約5か月間)前後の変化を前年度と同様の手法で比較した。すると、健康促進・介護予防に寄与しうる各項目について電動カート利用群の方が良好な効果が見られる傾向は、さらに促進したとのこと。特に「家族以外の人と話す機会」「日常における楽しみ」「気持ちが明るくなる機会」の項目で、非利用群と比べて30%以上スコアが増加したという。

さらに、実験期間で両年度の結果を比較したところ、2022年度の実験では「日常における楽しみ」「外出先」「生きがいを感じる機会」「歩く機会」の項目で、2021年度の実験に比べて10%以上スコアが向上し、そのほかの項目でも5か月間にわたる実験の方がスコアが高い傾向が見られたとする。

  • 各項目について、カート導入前に比べて「電動カートをきっかけに増えた」と答えた人の割合の比較。

    各項目について、カート導入前に比べて「電動カートをきっかけに増えた」と答えた人の割合の比較。黄色が2021年度の検証結果で、青色が2022年度の検証結果を示す。(出所:ヤマハ発動機)

ヤマハ発動機は今回の研究成果を踏まえ、2023年度も導入から1年後の効果検証を計画し、電動カートの活用による介護予防・健康増進効果の“見える化”を目指すとしている。

  • 実証結果のイメージ図

    実証結果のイメージ図(出所:ヤマハ発動機)