欧州南天天文台(ESO)は7月25日(現地時間)、ESOの超大型望遠鏡(VLT)とアルマ望遠鏡を用いて、地球から5000光年以上の距離にある若い星「いっかくじゅう座V960星」(以下「V960星」)の近くに、巨大惑星に成長していく可能性がある、ダスト(塵)を多く含んだ大きな塊を検出することに成功したと発表した。
同成果は、チリ サンチアゴ大学のフィリップ・ウェーバー氏を筆頭に、同 セバスチャン・ペレス氏、チリ ディエゴ・ポルタレス大学のアリス・ズルロ氏らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された。
今回は、まずVLTに搭載されている分光偏光装置「SPHERE」を用いた観測が行われた。V960星は、2014年にそれまでの20倍の明るさまで急激に増光したことで注目されるようになった天体だ。このように急激に明るくなる「アウトバースト」が始まった後、すぐにSPHEREを用いた観測を実施した結果、V960星の周囲を回っている物質が、複雑な渦巻構造の腕の部分に集まっていることが明らかになったとのこと。その渦巻構造の腕は、太陽系全体の大きさよりも広い範囲に広がっているという。
続いてこの発見をきっかけとして、同じV960星系に対するアルマ望遠鏡のアーカイブデータの解析が行われた。SPHEREを用いた観測は、星周辺のダストが多く含まれる物質の表面を調べることができるのに対し、アルマ望遠鏡ではその構造をより深く探求することが可能だ。そのアルマ望遠鏡のアーカイブの解析から、渦巻構造の腕が分裂している最中であることがわかったとしており、惑星の質量と同じくらいの重さの塊が形成されていることも確かめられたとする。
巨大惑星のでき方には、「コア集積説」と「重力不安定説」という2つの考え方がある。コア集積説は、ダストが降り積もっていくことで惑星が成長していくというものだ。一方の重力不安定説は、中心星の周りに大きな分裂破片ができて、分裂破片が収縮して自分の重さでつぶれて惑星が形成されるというものである。研究チームによると、これまでの研究では、コア集積説を支持すると考えられる観測例がいくつもあるのに対し、重力不安定説を支持するものはほとんどなかったとしたうえで、重力不安定説を支持すると考えられる観測例は、今回が初めてだとしている。
研究チームは、今後のさらなる惑星形成現場の観測の進展が期待されるとしている。