パナソニック ホールディングスマニュファクチャリングイノベーション本部は、パナソニック エコテクノロジー関東および三菱マテリアルと協力し、エアコン分解工程における分解に必要な情報を蓄積する「エアコン室外機外装自動分解システム」と、室外機をロボットで分解する「エアコン外装自動分解設備」を開発したことを発表した。

  • パナソニック エコテクノロジー関東の外観

    パナソニック エコテクノロジー関東の外観

家電リサイクル法について

従来、家庭から出された廃家電品(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)は、自治体や廃棄物処理業者が引き取った後、ほとんどが埋め立てられていた。しかし、廃家電の中には資源が多くあるため、有価物と廃棄物に分け、有価物をリサイクルすることで資源の有効利用をしようという動きがあり、2001年4月「家電リサイクル法」が施行。廃家電品がリサイクル工場に多く回収されるようになった。

  • 家電リサイクル処理について

    家電リサイクル処理について(出所:パナソニック エコテクノロジー関東発表資料)

国内には多くの家電メーカーがあり、それぞれが独自にリサイクルを進めるには多額の投資が必要となるため現在は、メーカー系統ごとにAグループとBグループに分かれ、それぞれのグループが全国各地に指定引取場所やリサイクルプラントを配置しリサイクル処理を実施しているという。パナソニックはAグループに属しており、今回の取り組みはAグループに属するリサイクル工場における開発成果となる。

AグループとBグループという2つのグループに分かれている理由の1つとしては、それぞれのグループに分かれることで、技術の精度やリサイクルにおける効率を向上させ、コストを下げられるようにとの考えがあるためだとパナソニック エコテクノロジー関東の担当者は説明している。

現在の家電リサイクル工場の実態

そんなリサイクル工場では、廃家電品の回収率が今後増加する予測があるという。SDGsにむけて世界中で動きがあるほか、特にエアコンは資源が多く含まれ正規ルートで回収されないことが多いため政府としても問題視しており、正規ルートでの回収への取り組みが強化されるだろうとのこと。そのため、今後廃家電品の回収率は伸びると考えられている。

エアコンは年間369万台(2022年度、家電製品協会調べ)がリサイクル工場に持ち込まれたとされるが、これまでの作業では、室外機については熱交換器、コンプレッサー、制御基板などの部品を人の手により分解・回収した後、シュレッダーによる破砕と素材選別が実行されていたという。

一方で、回収率増加による型番の増加で人間の労働負担が大きくなるほか、労働人口の高齢化および減少が危惧されており、自動化が求められていた分野であったが、エアコンの室外機は屋外に設置されているため汚れやサビが多く、またメーカーによってもサイズやデザインが異なるため自動化を実現するのは困難だったという。

  • 現在も内装部分は人の手によって分解されている

    今回の取り組みで室外機の外装の分解は自動化されたが、現在も内装部分は人の手によって分解されている

AIを活用したエアコン自動分解システム

そこで、開発されたのが、エアコン外装の分解データベースによる認識システムと自動分解設備である。

まず分解データベースとは、三菱マテリアルのAI-OCR技術によりラベルから読み取った型番と、自動分解設備から取得したエアコン室外機のビスの本数や位置などの分解に必要な情報を紐づけて蓄積しておき、ビスの誤認識によるロボットの無駄な動きを削減させるというものである。

Aグループに回収されるエアコンは全体の62%ほど(Aグループの対象メーカーはパナソニックのほか、東芝、コロナ、ダイキンなど)である一方、現状ロボットで型番連携ができているのは、パナソニックと旧ナショナルのエアコン3000種類ほどで、全体として約30%しかカーバーできていないという。他社の型番の情報がなかなか集められないといった課題があるためだが、今後、他社連携などを進めたうえで、カバー率を現状の30%から60%まで引き上げたいとしている。

  • 分解データベースを用いて型番を確認している様子

    分解データベースを用いて型番を確認している様子

一方の自動分解設備は、エアコン室外機をカメラで撮影し、汚れやサビがあるビスをAIを用いて正確に判断。ドライバーを備えたロボットアームでビスを外した後、人が行う動きを再現する把持ハンドでカバーのはめ込みを外して分解していくというもの。

  • 汚れやサビが付着していたりさまざまな形をしているビス

    汚れやサビが付着していたり、さまざまな形状をしているビス。これらすべてロボットが判断して自動的に分解する

担当者によると、当初、このはめ込みを外す作業はロボットのアームを横に動かせば簡単にできると考えていたが、それではうまくいかず、人の動きをよく観察したところ前後に揺らすという動きがあることが分かり、それをロボットに覚えさせることで課題を克服できたという。

この解体作業をロボットに行わせると約3分半かかる。人間が行った場合だと約40秒で終える作業であるが、室外機の向きを変えること1つをとってもロボットはそれぞれのシーケンスを組まなければならず、現状の技術では人間よりも時間がかかってしまうのだという。

しかし、今回の自動化ロボットの導入は、あくまで今後のリサイクル率向上に伴う型番の増加による労働負担や労働人口の高齢化および減少などといった課題における人間のサポートとしての位置付けであるとしたうえで、今後より分解の速度をあげられるようにしたいと担当者は語っていた。

エアコン室外機をロボットが自動で分解している様子

なお、パナソニックでは今後、対象機種の拡大や生産性向上の取り組みを進めるとともに、全国のリサイクルプラントへの普及を推進していくことで、持続可能な社会の実現に近づけていきたいとしている。