独自のがん免疫療法の実用化・事業化を目指しているノイルイミューン・バイオテックは6月28日、東京証券取引所(東証)グロース市場に上場。併せて東証にて記者会見を行い、当面のがん免疫療法の事業展開見通しなどを説明した。

  • ノイルイミューン・バイオテック社の玉田耕治代表取締役社長

    図1 ノイルイミューン・バイオテック社の玉田耕治代表取締役社長

同社の玉田耕治代表取締役社長(図1)は、「今回の上場によって約30億円を入手し、これまでに確保していた約30億円と併せた約60億円を、当面のがん免疫療法の実用化を進める事業化資金として確保できた」と説明した。この約60億円の事業化資金と「これからがん免疫療法の薬事承認を得るまでに開発途上で、前臨床などの進行途中で入る“マイルストーン”と呼ばれる提携先企業からの“達成金”収入などを併せると、当面は事業資金を安定的に確保できたと考えている」と述べた。

同社は独自のがん免疫療法として、CAR-T細胞治療というがん治療法の実用化を目指している。T細胞(リンパ球の一種で細胞性免疫の中心的な役割を担う細胞)に、CAR(キメラ抗原受容体)を導入して強力ながん殺傷効果を持つ細胞を人工的に作製し投与するがん治療法の実用化を目指している。このT細胞は、がん患者自身から採血した血液からT細胞を回収し、そのT細胞にCAR遺伝子を導入したCAR-T細胞をつくり、増殖し、当該患者に投与する。

がん患者数が多い“固形”がんでは、「プラスαの攻撃手段の活用法が次世代CAR-Tの改良点と考えている」と説明する。

同社の強みは「(共同)契約済みの企業に武田薬品工業、中外製薬、第一三共という国内大手3社を含む“グローバル企業5社”とパートナーを組んでいることだ」という。

6月28日に公開された事業計画事項の説明資料によると、がん免疫療法の開発品目数は「自社製薬事業は『NIB101』など5本、共同パイプラインは『ADAP01』など4本を開発」と記されている。

この事業計画事項の説明資料と同社Webサイトのパイプライン説明図は1部異なっており、Webサイトに掲載されている共同パイプラインの説明図では、自社製薬事業のパイプラインが「NB101」から「NB105」までの5本、そのうち「NB102」と「NB103」は武田薬品工業をパートナーにしている(この場合、武田薬品工業が開発を進め、その事業化が進むと“マイルストーン”収入が同社に入る)。一方の共同パイプライン事業は3本が記載されている。共同パイプライン4本のうち、開発コードの名称が未確定となっているものが2つあり、それらは「1つが中外製薬、もう1つが第一三共と事業化を進めているもの」だという。

  • 図2 同社の製薬事業パイプライン

    図2 同社の製薬事業パイプライン (出所:ノイルミューンWebサイト)

なお、ノイルイミューン・バイオテックは創業メンバーが勤務していた国立がん研究センター中央病院内(東京都中央区)に2015年4月に設立された山口大学、国立がん研究センター発のベンチャー企業。その後、2015年10月に玉田社長が山口大学医学部勤務時代に、出願していた自身の研究開発内容を基にした関連する特許を、特許の所有権者である山口大から独占実施許諾として取得。製品化に向けた研究開発ならびにパートナーシップがこれまで進められてきた。