パーソル総合研究所は6月27日、企業と従業員を対象に1月17日〜2月6日に実施した「男性育休に関する定量調査」の結果を発表した。男性育休の取得が企業の持続的成長と組織力強化に寄与することが明らかになった。
同調査は、企業が男性の育休取得を促進することにメリットはあるのか、どうすれば男性の育休取得率が上がるのか、男性が中長期で育休を取得するためには何が必要なのか、について明らかにすることで、企業における男性育休推進の検討に資することを目的としたもの。
その実態(企業)として、男性育休の取得率が20~50%未満の企業では1か月以上の取得者がいる割合が約6割で最も高い。取得率80%以上の企業では1か月以上の取得者がいる割合は36.8%に留まり、取得率が高くても中長期の取得ができているわけではないことが判明した。
男性の育休に関する施策の実施状況をみると、取得率5%未満の企業では、男性育休に関する「全社方針の発信」や「対象者への取得勧奨」の実施率が低かった。男性の育休に関する企業の課題をみると「不在時の対応」が上位にあがり、男性の育休は女性の育休よりも特に事例や取得希望者の少なさ、周囲のメンバーの理解不足が課題とされている。
その要因(従業員)として、男性が今後育休をとる上で懸念していることの上位は、同僚への迷惑や育休中の収入の減少、仕事能力の低下やポジションなどの中長期的キャリアへの影響であった。男女の差が大きい項目をみると、男性は特に自社の制度の有無や上司・顧客のことを気にしていた。
また、部下や同僚に育休を 「とってほしい」と考える上司・同僚は、期間が長くなるほど少ない。男性本人が感じる中長期の育休のとりやすさに影響する組織要因を見ると、男性が優遇されていること、短時間での成果創出のプレッシャーがかかる職場であること、定期異動が多いことが中長期の育休のとりにくさに特に強く影響している。
企業の育休取得による効果としては、中長期(1か月以上)の取得者がいる企業は、短期(1か月未満)の取得者のみの企業よりも「従業員の自主的な行動促進」「業務の見直しや属人化解消」「従業員の視野拡大」の効果を実感している割合が10ポイント以上高い。
男性が育休を取得したことによる効果について企業の実感をみると、取得率が5%になるまでは、中長期の取得者がいなくても取得率が上がるほど効果を実感している企業の割合が高い。取得率が5%から80%の企業では、中長期の取得者がいると効果を実感している割合が高い。
従業員の育休取得による効果としては、育休取得による本人の変化実感を見ると、中期(2週間以上3か月未満)の育休を取得した男性は、モチベーションや継続就業意向の向上、業務の見直しや属人化解消につながったと感じている割合が高い。
育休を取得した男性の3〜5割が、多様な人材への理解や時間管理といった「対人力」や「タスク力」が向上したと実感していた。これらのビジネススキルはジョブ・パフォーマンスや周囲支援行動、職場改善提案行動といった組織貢献にプラスに影響している。
対人力やタスク力の向上には、育休中の生活環境構築や職場とのコミュニケーション、自己学習、復職後の両立体制検討といった育休中の過ごし方がプラスに影響しているが、数日程度(2週間未満)の育休ではそれらの経験が乏しい。
これらの調査結果から、パーソル総合研究所 研究員の砂川和泉氏は、次のように提言している。「男性が育休を取得することにより、本人のモチベーション向上だけでなく、優秀な人材の採用や属人化の解消、女性の活躍推進などのメリットがあり、組織力の強化を見込めることが明らかになりました。男性の育休取得の推進は、自社の持続的発展に不可欠な戦略投資であり、いまだ及び腰の企業は、より積極的に男性の育休取得を推進するべきでしょう。」