研究チームは今回の技術開発について、いくつかのポイントを挙げる。まず、正規表現によるパターンの確認を実施するプログラム(正規表現エンジン)の振る舞いを、理論モデルとして厳密に定義した点があるという。加えて、理論モデルに従って修正結果となる正規表現に誤りがないことを保証する条件を生成する方法を提案したことも、重要なポイントだとする。
さらに、誤りがないことが理論的に保証された正規表現を出力するアルゴリズムを考案した点も重要とのこと。このアルゴリズムでは、条件を生成する方法を活用し、修正対象となる正規表現および利用者が望む正規表現に対するポジティブな例(受理される文字列)とネガティブな例(拒否される文字列)を与えることで、処理時間短縮のための正規表現の抽象化機能と抽象化された正規表現を、誤りがない具体的な正規表現にする機能を交互に繰り返し実行するとしている。
なお今回の技術では、Webアプリケーションなどで広く利用されている「ECMAScript2023」に完全に準拠した正規表現エンジンの振る舞いを厳密に定義したともする。
今回の技術開発のように、プログラムがある性質を満たすことを論理的に検証し、特定の不具合が存在しないことを保証する手法は「形式検証」と呼ばれる。形式検証は、従来の発見型のレビューやテストによる網羅性を持たない検証の問題点を解決でき、高品質なソフトウェアを効率的に生成できるものと期待されているという。
現在、AIを用いたプログラムの自動生成が一般的になりつつあるが、非熟練者がAIを用いて作成したプログラムに含まれる誤りにどう対処するのかという新しい問題も生まれている。研究チームは、正規表現の誤りを自動修正する今回の技術が、AIによる自動化のメリットを損なうことなくプログラムの安全性向上に寄与できるものと期待されるとしている。