今から30年前の1993年6月15日に、デジタルドキュメントの「PDF」ならびに「Adobe Acrobat」が発表されたことを受け、PDFの開発元であるアドビは6月14日、PDFおよびAdobe Acrobatの30周年を記念した記者会見を開催した。

同会見ではPDFならびに編集・作成などの機能を備えたツールであるAdobe Acrobatの進化やエピソードを交えつつ、これまで歩んできた30年間を振り返るとともに、働き方改革などさまざまな場面で活用が進む、デジタルドキュメントのアップデート情報などが紹介された。

会見には、米Adobe デジタルメディア事業部 Document Cloud プロダクトマーケティングディレクターの山本晶子氏、アドビ ソリューションコンサルタントの永田敦子氏、マーケティング本部 デジタルメディア ビジネスマーケティング執行役員の竹嶋拓也氏が登壇した。

本稿では、その一部始終を紹介する。

  • 会見の様子

「PDF&Adobe Acrobat」 30年の軌跡

最初に山本氏が登壇し、「Adobe Document Cloudの歴史」について振り返った。

「1991年から1993年にかけて、Adobe Acrobatが誕生し、PDFフォーマットが開発されました。その後、1993年から2012年にかけて、消費者とビジネスがWebに移行し、文書を信頼できる形でやりとりする必要性が発生してくると、2012年以降『PDFの再利用とコラボレーション』が必要とされるようになりました。こうした状況を踏まえ、弊社はモバイル版AcrobatのリリースやBtoB向けにDocument Cloudをリリースするなどの施策を行いました。また、2022年以降は『ドキュメントインテリジェンスの時代』と定義付け、あらゆる場所でPDFを活用できるように、Adobe Sensei のAIおよび機械学習でビジネスプロセスを加速したり、繰り返し行われる文書タスクを自動化したりと、30年間にわたりデジタル文書業界をリードしてきました」(山本氏)

  • Adobe Document Cloud の歴史

また山本氏は、PDFとAdobe Acrobatの30年間を振り返り、以下のようにコメントした。

「PDFは30年間にわたって、新しい働き方を推進してきました。Document Cloudでは、ワークフローを自動化することによって、煩雑なタスクから解放し、本来人間がもっているインテリジェンスを駆使した働き方を支援していきます。これからもビジネスをリードしていきたいと考えております」(山本氏)

このような歴史を持つPDF とAdobe Acrobatだが、「デジタル文書はビジネスを加速しサステナビリティへ貢献する」ということも会見では述べられた。

これはさまざまな指標で見た時の数字からも明らかで、2022年にアドビ製品で開封または作成されたPDFファイル数は4,000億以上に上るという。また、メールやWeb、クラウド上でやりとりされているPDFファイルの数は数兆という天文学的な数に達することも分かっており、山本氏は「PDFはいわば『インテリジェンスのコンテナ』」と説明した。

6月15日は「PDFの日」

続いて登壇した永田氏は、Adobe Acrobatの最新機能としてモバイルアプリでの閲覧機能と、Microsoft Teamsでの編集作業やPower Automateでの連携などについて、デモンストレーションを交えて紹介した。

「現在、ほとんどの方がMicrosoft OfficeやMicrosoft Teamsを活用していると思います。そのため、今あるツールを活用しながら、PDFをどれだけ簡単に、時間をかけずにサクサクと利用していただくために、ネイティブにMicrosoft Teamsとインテグレーションしています。これは新しい機能ではありませんが、PDFを介して意見の交換をする共有レビューに関しても進化して、Teamsから簡単に行われるようになっています」(永田氏)

山本氏はこの機能の進化によって「離れた場所のメンバーとのドキュメントワークがさらに便利になる」との見解を述べている。

また、2024年6月に障害者差別解消法が改正されることに伴い話題となっている、Webアクセシビリティへの対応義務化に関して、「誰もが使いやすいPDF」に関するデモンストレーションも行われた。

続いて登壇した竹嶋氏は、日本記念日協会により、6月15日が「PDF(Portable Document Format)の日」に制定されたことを発表した。

  • 「PDFの日」制定のイメージ

この「PDFの日」制定に関して、竹嶋氏は以下のように喜びのコメントを寄せた。

「6月15日が『PDFの日』として認定されたことを大変うれしく思います。アドビでは、これからもこの記念すべき日を大切にし、さまざまなイノベーションを起こし続けたいと考えています」 (竹嶋氏)

この竹嶋氏の言葉の通り、アドビでは30周年を記念したミュージックビデオ「People Dancing Future」を公開したほか、30周年記念ソーシャルキャンペーンとして、PDFについてより多くの人に知ってもらうことを目的として「#PDF検定」が6月15日、PDFの日から開催されることも発表されている。