アドビは6月13日、アドビのジェネレーティブAI「Adobe Firefly」およびAdobe Creative Cloudに関する最新アップデート情報を紹介するオンライン記者説明会を開催した。

同説明会には、アドビ Creative Cloudエバンジェリストの仲尾毅氏、マーケティング本部 マーケティングマネージャーの岩本崇氏、マーケティング本部 マーケティングマネージャーの轟啓介氏が登壇し、アドビのジェネレーティブAI「Adobe Firefly」および各製品への搭載機能、Adobe Creative Cloud製品の最新情報についての説明が行われた。

本稿では、その一部始終を紹介する。

アドビのジェネレーティブAI「Adobe Firefly」

今回の会見でメインテーマとなった「Adobe Firefly」は、「誰もが自分のアイデアをイメージ通りに表現できるべきだ」という信念の下、アドビが過去40年以上にわたって開発してきたテクノロジーの一環として生まれたジェネレーティブAIで、2023年3月21日に発表された。

商用利用に特化した画像生成を念頭に設計されており、最初に搭載するモデルは、Adobe Stockが収録する何億枚もの画像、オープンライセンス画像、著作権が失効したパブリックドメイン画像でトレーニングされている。

また、コンテンツクレデンシャル機能を通じて、デジタルコンテンツの透明性を提唱するという特徴を持ち合わせている。

「デジタルツールとAIの進化は私たちに大きな進歩を与えたと同時に、AI機能を悪用することから起こる『ディープフェイク』と『デジタル作品の盗用』といった社会問題を巻き起こしてしまっているという現状があります。アドビとしては、この問題を解決するために有効なソリューションを構築することはツールプロバイダーとしての責任であると考え、コンテンツの帰属と検証可能な事実によってフェイク情報に対抗する取り組みで、コンテンツの真正性を担保することをお約束します」(仲尾氏)

  • コンテンツ認証イニシアチブについて説明する仲尾氏

同社は6月13日からは、「Adobe Illustrator」や「Adobe Express」のベータ版にもこの「Firefly」を活用した機能を実装したことを発表した。

AIで「Illustrator」を多彩なカラバリを生成できるツールへ

まず「Illustrator」は、アドビが提供するグラフィックデザインツール。ロゴやアイコン、グラフィック、イラストなど、さまざまなデザインをプロ仕様の精度でカスタマイズでき、リピートオブジェクトの作成や「オブジェクトを一括選択」などの作業時間の短縮に寄与する機能も利用できる。

今回の「Firefly」を活用した機能としては、既存の「オブジェクトを再配色」機能のAI実装版といえる「Generative Recolor(ジェネレーティブリカラー)」が発表されている。

これは、作成済のデータに、AIを使ってさまざまなカラーバリエーションを生成できる機能で、あらかじめ用意されたサンプルプロンプトを選ぶだけで、イメージを新しくできるほか、プロンプトを入力することでオブジェクトの再配色ができるというもの。

  • 「Generative Recolor 」のイメージ

発表時点では、英語のみの対応となっているが、日本語版の提供も予定されているという。

6つの新機能を発表した「Adobe Express」

もう1つの「Firefly」が搭載されたツールである「Adobe Express」はオールインワンのコンテンツ制作アプリ。アドビが提供するAdobe Creative Cloud(PhotoShopやIllustratorなどの定番クリエイティブツールを利用できるサブスクリプションサービス)の必要最低限の機能を搭載している。

同製品においては、「Firefly」を活用した機能の実装以外にも「高品質なテンプレートとアセットを豊富に収録」、「コラボレーション、共同編集、共有のために再構築」、「豊富なエコシステムをサポートする拡張性と組み込み性」といった6つの新機能が発表されている。

  • 「Adobe Express」6つの新機能

「Adobe ExpressにFireflyを搭載することによって、画像、音声、べクター、動画からブラシ、カラーグラデーション、動画変換などのクリエイティブな素材を使って、簡単な説明文だけでユニークな画像やテキスト効果の生成を可能にします。『テキストで画像作成』や『テキスト効果』といったAI機能により、言葉で説明するだけで際立ったデザインにすることができるほか、AIを活用して、パーソナライズされたテンプレートとフォントの生成が行えるようになります」(轟氏)

  • Adobe ExpressへのFirefly搭載イメージ

また同社は、この2つのツール以外にも、5月23日は、Adobe Photoshopにクリエイティブな副操縦士として「Firefly」を搭載し、「生成塗りつぶし」という機能を実装したことも発表している。

加えて、2023年後半には「Premiere Pro」および「After Effects」にもFireflyを導入することを目標にしていることを明らかにした。