アドビは6月7日、「デジタルワークの未来」をテーマとしたグローバル調査の結果を発表した。今回の調査は、米国、英国、オーストラリア、インド、日本の企業の従業員1000人以上に対して、インフレ、不況、解雇、世界的混乱といった要素が常に存在する社会経済の状況下で、テクノロジーが企業の生産性向上にいかに役立っているか、あるいは阻害しているのかについて調べたものとなっている。
同調査では、回答者の半数近くが「生産的であること」について、「企業に収益をもたらすこと」や、「より少ない人数でより多くの仕事をより迅速に行うこと」よりも、「よりインパクトのある仕事をすること」を連想しているという結果となった。
この結果から中小企業の従業員の52%が、仕事における生産性について個人的に主要な責任を担い、大企業(37%)に比べて「完全オフィス勤務」(47%)をしているとする回答が多いことも納得できる。
一方、日本に絞った結果をみると、「完全リモートワーク」で働く従業員が10%と調査対象の国の中で最も少なく、「ハイブリッドワーク」が49%、「完全オフィス勤務」が41%となっている。また、「週4日勤務の選択肢があれば、従業員の生産性が上がる」と回答した従業員は56%で、他国と比べて少ない数字となった。
現状、中小企業の生産性は外的なストレス要因や仕事量に影響を受けており、グローバル企業は経済的圧力が増えても労働者の生産性を十分サポートできていない。85%は、テクノロジーが仕事をより速くよりスマートに行い、よりインパクトのある仕事に集中するうえで重要な役割を果たすということを認識している一方で、中小企業の88%以上が、「不十分なテクノロジーが自社の生産性を妨げている」と回答するなど、デジタルリテラシーにおいてはまだキャッチアップの段階にあるという。
例えば、中小企業のほぼ半数(55%)が「自社の業務の半分以上がいまだ紙に頼っている」と回答した。こうした時代遅れの方法は中小企業の従業員のフラストレーションを増やすばかりで、3分の1以上(34%)がテクノロジーの不足を理由に業務をすべてやめてしまいたいと望んでいるとのこと。
このフラストレーションにより中小企業の58%が「1日に2~4時間分の生産性を失っている」としている。特に日本では、51%が、「自社の仕事の半分以上がいまだ紙ベースである」と回答しているほか、66%が、テクノロジーの不備により「1日に2~4時間分の生産性を失っている」と回答している。
また、テクノロジーの不備によるコストは時間だけでなくやる気にも及ぶことが分かっている。中小企業従業員の21%が仕事におけるテクノロジーの貧困さについて上司に不満を漏らし、22%がそれを原因に今後半年以内に退職することを考えているという。
日本では、自身がデジタルに「非常に詳しい、または専門家レベル」だと答えた人はわずか30%で、中小企業では25%とさらに低い数字となった。12%の社員が仕事におけるテクノロジーの低さを上司に訴え、11%が別の仕事を探し、18%が「静かに辞める」と回答しており、全体的に「静かに辞める」傾向が高いことも判明している。