
経済産業省は、米トランプ政権による自動車への追加関税や「相互関税」の導入に対応し、中小企業の支援策を打ち出した。日本政策金融公庫が手掛ける「セーフティネット貸付」の要件を緩和し、資金繰りを支えることが柱。経産省は産業界との意見交換などで情報を収集し、さらなる支援も検討する構えだ。
セーフティネット貸付は、社会的・経済的な環境変化で一時的に売上高が減少した中小・小規模企業に低利で融資する制度。本来は売上高が前年同期比5%以上減ることが利用要件だが、関税措置の影響を受けたケースでは融資を受けることができるようにした。
また、政府系の日本貿易保険(NEXI)の融資保険を活用し、北米などで事業を行う日本企業の海外子会社が運転資金を調達しやすくする。戦争やテロなどで損害が発生した場合、保険金を支払う貿易保険の対象も拡大。関税措置の影響で輸出契約が破棄され、代金を回収できなくなった場合も補償する。
輸出品を船積みした後、関税適用除外の承認が下りるのに時間がかかり、輸送費が膨らんだりしたケースも対象に含める。
このほか、全国の政府系金融機関や商工会議所、中小企業基盤整備機構の地域本部などに約1千カ所の相談窓口を設置。自動車部品メーカーに対し、経営アドバイスなどの伴走支援を行う「ミカタプロジェクト」や、設備導入などへの補助制度を活用し、中小企業の基盤強化にも取り組む。
武藤容治経産相は4月3日に開いた経産省の対策本部の席上、「国内産業に広範囲に影響が出る可能性がある」と米国の関税措置への危機感を表明。「十分に精査し、我が国の産業や雇用を守るために必要となる支援に万全を期す」と強調した。
政府は支援策を行う一方、関税の適用除外を求めて米国側との交渉に注力する方針。石破茂首相の側近である赤澤亮正経済再生担当相を交渉の担当閣僚に充てるなど、体制整備を進める。