バイオテクノロジー技術の研究開発と事業化を進めているベンチャー企業のGreen Earth Institute(GEI)は、そのバイオテクノロジー生産技術の実証・確立などを進める実証拠点としての設備装置群を、千葉県茂原市の三井化学茂原分工場内にほぼ完成させたことを記念する落成式を6月2日に開催した(注1)。
筆者注1:ベンチャー企業のGreen Earth Instituteのバイオテクノロジー生産技術の実証・確立などを進める実証拠点の落成式典には、経済産業省、NEDO、千葉大学、産業技術総合研究所、千葉県などに加え、同社と研究開発や事業化など連携する企業各社の関係者が参加していた
この落成式を記念して、GEIの研究開発と事業化への橋渡しまでを担当する同社のバイオファウンドリ研究所内に設置した3000リットルと300リットルの発酵槽設備などが報道陣に公開され、その性能などの解説が行われた。
バイオファウンドリ研究所の古城敦所長は3000リットル(図1)と300リットルの発酵槽では、「バイオテクノロジー技術の確立を目指す企業や研究所・大学などからの委託研究開発対象物を、3000リットルと300リットルの発酵槽設備で前処理から発酵・精製までなどの最適化工程の検証を請け負う研究開発事業を担当する」と説明する。また、「委託研究開発対象物の発酵物などのpH(アルカリ度や酸性度)、温度、粘度、酸素濃度・成分などを発酵槽設備に挿入したセンサーランスによってリアルタイムで精密測定し、部分的にはサンプリングを行い、発酵槽内の反応を精密に測定・推測する。そして、多様な色を用いた発酵槽内の反応などを画像・画面として表示し、多様な反応を推定・評価。委託される発酵反応の研究開発・その実証開発では、大腸菌や様々な酵母などを用いる発酵反応が当面は多いだろう」ともする。
同時に、バイオファウンドリ研究所は優れたCFD(Computational Fluid Dynamic:3次元流体解析)ソフトウエア技術の解析・利用技術を持っているので、「事前・事後に対象物の反応などをCFDによって解析し、実データとの検証を重ねて、具体的な反応を精密に推定し、反応などを最適化できる」という。このCFD向けの実証データを得るために「研究開発向けの発酵槽設備で各データを精密に計測し、CFD解析の精度を高めるノウハウを蓄えている」とするほか、「このCFD解析ソフトウエア向けのHPCも備えている」とする。
また、今回導入した設備群の中でユニークなものとして、「従来の強化プラスチック向けの2軸混練機(生産機)を導入した点に新規性があるだろう」としている。「この強化プラスチック向けの2軸混練機を利用する研究開発成果は、これまでにも大学などではいくつかあったが、本格的に生産向けの実機に導入するのは、かなり早い設備投資だろう」としている。
なお、今回披露されたGEIのバイオファウンドリ研究所内の設備群は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のバイオファウンドリ拠点として整備された施設群となる(NEDOでは「バイオファウンドリ拠点」と表記)。
NEDOは、内閣府に設けられた総合イノベーション推進会議が2020年6月に決めたイノベーション戦略の1つ、「バイオ戦略2020が、2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現する」と決めた目標を実施・実現するNEDOバイオファウンドリ拠点として、GEIのバイオファウンドリ研究所の設備投資を支援し、このバイオファウンドリ研究所の設備投資を基に、日本でのバイオものづくり人材育成を実施している。すでに「このバイオファウンドリ研究所では5講座のバイオものづくり人材育成を行っている」と、NEDOの材料・ナノテクノロジー部バイオエコノミー推進室は説明しており、このバイオものづくり人材育成について、「これからも希望者に対して、拡充して実施する計画」と今後も継続していく予定であることを示している。
筆者注2:Green Earth Instituteは、2011年9月に設立された植物や農産物などのバイオマス由来からアミノ酸やバイオ燃料などのグリーン化成品などを製品化する事業を目指すベンチャー企業。代表取締役・CEO(最高経営責任者)は伊原智人氏が務めている。同社の根幹技術は公益財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)がルーツと説明している。2021年12月24日に東京証券取引所マザーズ市場に上場した(現在は東京証券取引所 グロースに変更)。