NECは6月2日、NEC玉川事業場(神奈川県川崎市中原区)にて、2025年6月の竣工を予定している「NECイノベーション新棟(仮称)」(以下、新棟)の起工式を執り行った。

起工式の終了後にはメディア向けの説明会が開かれ、NEC 取締役 Corporate EVP 兼 CTO 兼 グローバルイノベーションビジネスユ二ット長の西原基夫氏が新棟のコンセプトや想定ユーザー、新棟で取り組む活動の方針などを説明した。

  • 「NECイノベーション新棟(仮称)」起工式の様子

    「NECイノベーション新棟(仮称)」起工式の様子

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約1万人が利用するオープンノベーション拠点

説明会の冒頭で西原氏は、「新棟は、先端技術と新規事業を繋げて新しい価値を生み出すことができる、開かれた、野心的な場としたい。世界中の技術者やビジネスリーダー、社会課題を認識している人々を呼び込み、交流することでイノベーションを創造し、そうした取り組みを当社の継続的な事業創造にも繋げていきたい」と語った。

  • NEC 取締役 Corporate EVP 兼 CTO 兼 グローバルイノベーションビジネスユ二ット長の西原基夫氏

    NEC 取締役 Corporate EVP 兼 CTO 兼 グローバルイノベーションビジネスユ二ット長 西原基夫氏

NECは新棟の基本コンセプトを「NECが技術と新規事業を繋げ、社会価値創造を行い続けるためのイノベーション拠点」としている。

そのため、同拠点は同社の研究開発・事業開発系組織がメインの執務拠点として利用するが、基本的には社内外の人材が柔軟に活用できるオープンな場として運用するという。

例えば、国内の他拠点で働くエンジニアがプロジェクトの進捗に合わせて集中的に利用したり、営業系組織の担当者が顧客とのリレーション構築やビジネスのアイデア探しに立ち寄るといったセカンド・サテライトオフィスとしての利用も想定しているそうだ。

パートナー企業、大学などのアカデミア、投資家、スタートアップなどによるスポット利用やオフィス入居も受け入れて、約1万人が事業、交流、実証実験、共同研究などを行える場として新棟を整備する計画だ。

  • 「NECイノベーション新棟(仮称)」の外観(500分の1スケール模型)

    「NECイノベーション新棟(仮称)」の外観(500分の1スケール模型)

新棟の3~4階は実証実験の専用フロアとなり、耐火、耐荷重など一般的なオフィスビルでは実現できないスペックの実験スペースを設け、各種センサの設置・取り外しも自由な空間とする予定だ。このほか、グローバルに展開する同社の研究所や新事業開発拠点とAR(拡張現実)、VR(仮想現実)技術を活用してリアルタイムに連携できるよう整備する計画が明かされた。

  • 「NECイノベーション新棟(仮称)」の全体イメージ

    「NECイノベーション新棟(仮称)」の全体イメージ

BIRD INITIATIVEなどと連携し新事業開発を支援

西原氏は新棟で取り組むこととして、「テクノロジー実証を通じたNECの未来の可能性を示し、エコシステムを構築」「NECに閉じないオープンイノベーション/共同研究・大学連携」「世界中の優秀な人材が集う世界を舞台に挑戦する人材創造」の3つを掲げた。

テクノロジー実証をサポートするため、新棟では、思いつきや初期段階の研究などを実験できるスペースや、ビル内情報データのオープンソース利用できるシステムを整備。実証やデモにビル関係者や入居者が積極的に参加できるような場づくりも支援する。

新規事業の創造に取り組みやすくなるよう、プロジェクトスペースだけでなく、新規事業開発相談やメンタリングの窓口も設ける予定だ。

新棟ではリアル・オンラインイベントやネットワーキングを開催し、施設見学も日常的に受け入れる。加えて、NECのOBや退職者を交えたアルムナイコミュニティ形成、副業との兼務や時短などさまざまな雇用形態の試験運用も行うという。

  • 「NECイノベーション新棟(仮称)」の利用シーン

    「NECイノベーション新棟(仮称)」の利用シーン

社外のステークホルダーとの共創活動や新事業創出は、北米・欧州でのスタートアップ企業の立ち上げを支援する「NEC X」や、研究開発から新規事業を創出するためのコンサルティング事業を展開する「BIRD INITIATIVE」と連携して取り組む計画だ。

NEC Xは直近2年間で12の事業化の実績がある。BIRD INITIATIVEにおける国内企業のコンサルティング実績は直近1年間で34社となる。

「共同研究から開発、事業創出、VC(ベンチャーキャピタル)などの投資家を巻き込んだ共同投資、ビジネスを軌道に乗せてスケールさせるところまで、当社には新事業開発におけるエンドトゥエンドのノウハウがある。そうした実績・経験を活用して、アクセラレーションや協業先マッチング、実証実験のサポートなどを行い、新棟全体で事業創造に向けたムードを創出していきたい」と西原氏は新棟の目指す姿を説明した。

  • 「NECイノベーション新棟(仮称)」ではスタートアップや大企業との共創活動を拡大させる

    「NECイノベーション新棟(仮称)」ではスタートアップや大企業との共創活動を拡大させる