【データに見る「ECの地殻変動」】<第15回>情報チャネルのデジタル化にEC化率の押し上げを期待

日々の業務で「チャネル」という言葉が頻繁に使われている。オムニチャネルに代表されるように一般的にチャネルというと販売チャネルが真っ先に頭に浮かぶだろう。

商品がメーカーから卸を経て小売りに到達するまでの物理経路は「流通チャネル」。消費者は商品情報を店員や雑誌、SNS、広告、企業サイトなどから入手するが、それらは「情報チャネル」といわれる。つまりチャネルには販売チャネル、流通チャネル、情報チャネルの3種類が存在する。

毎度、おなじみの経産省による2021年の物販系EC市場規模は、13兆2865億円でEC化率は8.78%だった。差し引き91.22%、約140兆円はリアル店舗を通じた販売か、テレビ、カタログなどの他の通販による販売ということだ。

数字だけ見ると小売りにおけるデジタルの効果はまだまだのように見えてしまう。だが、これはあくまでも販売チャネルに限定した話である。ネット時代の今、SNS、ネット広告、ブログなどデジタル系の情報チャネルの利用度はとても高いに違いない。

<デジタル効果を指数化>

具体的な数字を見てみよう。消費者庁の「令和3年消費者意識基本調査」によれば、商品・サービス購入時の情報源(複数回答)として「店頭・店員」は63.2%、「テレビ・ラジオの番組・広告」は62.7%となっている。

一方、デジタル系の情報源は「ネット広告」が40.6%%、「ネットの記事やブログ」が41.0%、「SNSでの口コミ・評価」が31.1%、「公式サイト」が42.2%だ。非デジタル系には劣るがこれらデジタル系は決して低い値ではない。情報チャネルとしてデジタルの活用度はそれなりだ。

なお、これらは回答率の数字である。EC化率は金額ベースでの比率なので情報チャネルとしてのデジタルの活用効果も金額ベースで推計してみたくなった。そこで複数のリソースをもとに独自手法で算出したところ43.94%となった。

年代別で推計すると20代は70.72%、30代は66.05%、40代は55.95%と高い。他方、50代は45.34%、60代は22.29%、70代以降は9.00%と年代によって大きなバラツキが出た。ちなみにEC化率に対抗し、筆者はこの数値を「デジタル効果指数」と命名したい。

<EC化率上昇に期待>

さて、このデジタル効果指数をどう捉えるか。EC化率は8.78%。対するデジタル効果指数は43.94%。前者は販売チャネルとしての数値、後者は情報チャネルとしての数値である。

要するにデジタル経由での情報を参考にした購入が金額ベースで43.94%相当あったがECでの購入は8.78%にとどまったということだ。

差し引き35.16%の値が示すもの、それはまさにオムニチャネルの重要性の定量的な示唆と見る。デジタルの情報を参考にするけれども購入はあくまでもリアルチャネルといった具合だ。

これから先、デジタルネーティブ世代の加齢とともにデジタル効果指数はまだ上昇するだろう。つまり情報チャネルのデジタル化は今後も確実に進む。

これがオムニチャネルの進化につながるのは間違いないだろう。他方、少子高齢化による人手不足はリアルチャネルも直撃している。よってオムニチャネルも限界があろう。

従って情報チャネルのデジタル化が販売チャネルのデジタル化、すなわちEC化率の上昇につながることも併せて期待したい。