島津製作所と龍谷大学による循環型社会の創出を目指した包括連携協定

島津製作所と龍谷大学は5月23日、循環型社会づくりへの貢献に向けた「包括連携協定」を締結したことを発表し、合同で会見を開いた。

この協定により、島津製作所が自社内で進めている排出する梱包材をポリエチレン容器に再生して社内で利用する「自己循環型リサイクル」の仕組みに龍谷大学が加わることとなる。また、龍谷大学が推進する学生に向けた環境教育に島津製作所が協力するなど、多方面で協業を進めていくという。

  • 記者会見の様子

    記者会見の様子。左から島津製作所の稲垣史則専務執行役員、龍谷大学の深尾昌峰副学長

島津製作所における環境経営

島津製作所では、以前からプラスチック使用量の削減やバイオマス、リサイクル由来素材への代替などを推進する形で環境経営を行われてきた。例えば、独自の環境配慮認定製品エコプロダクツPlusを生産・販売してきたほか、現在使用している装置と比較し、同社の新モデル装置でのCO2排出削減量・消費電力などのランニングコスト削減量をシミュレーションできる「ECOシミュレーション」というアプリなども提供してきた。

  • 島津製作所の環境経営の概要

    島津製作所の環境経営の概要

また、今回の包括協定で龍谷大学が加わる自己循環型リサイクルの形態になる以前からサステナブルなプラスチック利用の研究および取り組みが行われてきたという。その中で注力してきたのが梱包材の代替化であり、2020年あたりから検討が進められてきた。そして現在、同社の廃プラスチック由来の再生品として、感染性廃棄物BOXやゴミ袋はすでに社内で導入しているという。

例えば、同社の研究開発部門では、液体クロマトグラフなどの分析計測装置を使用した際に排出される廃液の保管に、今回の包括協定においても活用されるポリエチレン容器(ポリ容器)を使用しているという。通常こうしたポリ容器は新品のペレット(粒状のプラスチック樹脂)をもとに作られているのだが、島津製作所はプラスチックの一種であるポリエチレンの使用量を減らすために、使用済みの梱包材をペレット化し、新品のペレットに混ぜて再生材配合率30%のポリ容器を作成。すでに社外の協力先での量産を実現しており、本社工場に導入しているという。

  • サステナブルなプラスチック利用のイメージ

    サステナブルなプラスチック利用のイメージ

龍谷大学のエコキャンパス化に向けた活動

一方で龍谷大学でも2022年1月27日にカーボンニュートラル宣言がだされたほか、2022年4月には脱炭素社会や地域循環共生圏の実現に寄与するべく環境省と「地域脱炭素の推進に関する協力協定」を締結している。また、龍谷ソーラーパークを和歌山県や京都府をはじめとする各県に設置しており、2023年6月から龍谷大学で使用するすべての電力が再生可能エネルギー100%となることを目指し、着実に活動を進めている。

  • 龍谷ソーラーパーク

    龍谷ソーラーパーク

包括連携協定による自己循環型リサイクルの形

今回の包括連携協定の大きな取り組みとして挙げられている自己循環型リサイクルの具体的な内容としては、龍谷大学が排出した廃プラスチック梱包材を島津製作所が回収。それをプラスチックのペレット化し、そのペレットを利用して廃液用ポリ容器を製造。龍谷大学の先端理工学部および農学部の実験機器に利用するということが想定されている。

  • 自己循環型リサイクルの仕組み

    自己循環型リサイクルの仕組み

龍谷大学の先端理工学部および農学部では、年間約550個(2021年度実績)の廃液用ポリ容器を使用しており、将来的にはすべての廃液用ポリ容器を自己循環型リサイクルにより製造された廃液用ポリ容器に変換し、年間約0.2tのプラスチックを再生利用することで循環型社会形成に近づけたいとしている。

今回の包括協定は島津製作所側から龍谷大学へオファーしたとのことで、環境問題に対し以前から積極的に活動に取り組んでいる龍谷大学とともに、この取り組みを「京都発の新たな取り組み」として全国に広げていきたいと意気込みをみせた。

また、龍谷大学の深尾昌峰副学長は、今回の包括協定により学生たちの身近な実験資材が循環型のモデルになってることで、グリーン人材の育成および価値形成もできるだろうと、教育者の立場ならではの視点をみせた。