SAPは5月16日~17日に開催した年次イベント「SAP Sapphire 2023」で、ジェネレーティブAI(生成AI)分野でMicrosoftとの提携を発表した。この提携では、Microsoftの「Azure OpenAI」のAPIを活用し、最初の成果が人事クラウド「SAP SuccessFactors」となる。
今回、Sapphireの会場で、SuccessFactorsのプロダクト&デザイン担当シニアバイスプレジデントのAmy Wilson氏に、人事分野のけるAI活用を中心に話を聞いた。
SapphireでMicrosoftとの提携を発表しました。提携の詳細を教えてください
Wilson氏: AIに関しては大きく3つの取り組みがあり、Microsoftとの提携はその1つとなります。
ChatGPTのようなジェネレーティブAIが得意とするのは、ドキュメントから情報を抽出・照合して、文章を作成するといった創造的な作業の支援です。これをSuccessFactorsに組み合わせるのが今回の提携となります。
Sapphireでは、広範なデータやシナリオに特化したデータを利用して職務内容の作成、面接の質問の作成を支援するというデモを披露しました。サステナビリティ担当、サプライチェーン担当といった役職は全く新しいものではなく、過去のデータがあります。他の求人情報の内容、業務に必要な要件を理解して作成を支援します。
また、リクルート領域でも活用します。候補者に対してキャンペーンを作成するにあたって、これまでと同じメッセージを何度も送るのではなく、新しいアイデアややり方のヒントを得る上で活用できます。
残る2つの取り組み分野が、従来のAIの取り組み、先に発表したIBM Watsonとの提携です。
これまでのAIの取り組みの1つが、Skills Ontologyです。われわれは業界のデータを使ってタクソノミーを作っており、このタクソノミーに基づいて機械学習と自動化を使って従業員のスキルを特定します。これにより、社内に存在しているスキルを簡単に俯瞰できます。
Skills Ontologyを用いて、個人は自分のスキルをアピールできます。また、「このスキルを獲得してはどうですか」とシステムが学習を促すこともできます。従業員のスキル、活動などの情報を自動でタグづけし、その人がどんな人なのかを捉えることができます。
IBM Watsonとの提携では、自然言語処理を用いたデジタルアシスタントを強化します。
これら3つの取り組みは別々ではなく、協調されており、使い勝手や人事の作業効率を改善します。
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作成した職務内容の中に偏見のある言葉が入っていないかをCopilotでスキャンし、「チェアマン」を「エグゼクティブ」に変換するという提案を得た。作成した職務内容をCopolotによって直接SuccessFactorsにアップロードした
今後、生成AIはどのような分野に活用できると見ていますか
Wilson氏: 最初に実現する職務内容の作成支援などは、個人情報を含まず、生成AIが簡単にパワーを発揮できるジャンルです。
将来的に興味深い分野はプライベートな生成AIです。つまり、公開されているデータソースではなく、非公開の候補者のデータや履歴書、社内にあるデータを活用するものです。
ビジネス戦略情報をChatGPTに入れ、この戦略を達成するために、今後2~3年でどのようなスキルが重要になるのかというプロンプトを作成します。これをSuccessFactorsのSkills Ontologyと連携させて、市場の状況、自社にあるスキル、自社のビジネス戦略に合わせて、今後2~3年で必要になるスキルをAIが割り出します。
さらに、そのスキルを開発するために役立つテクニックは何かといった深掘りも支援できるでしょう。これらは、プライベートな環境で行う必要があります。