昨今、世間を騒がせているテキスト型の生成AI「ChatGPT」。チャットプラスの調査によると、日本におけるChatGPTの認知度は約4割。すでに業務の効率化に活用しているビジネスパーソンも少なくないだろう。
この新技術を受け入れている企業は、どのように自社のサービスと連携させているのだろうか。本稿では、5月10~12日の期間、東京ビックサイトで開催された展示会「第7回 AI・人工知能EXPO【春】」でみた、ChatGPTを活用したサービスの事例を3つ紹介していこう。
AI文字起こし+AI要約
最初に紹介したいのは、時空テクノロジーズが提供する音声文字起こしサービス「Logmeets(ログミーツ)」の追加機能である「ログミーツGPT‐3/4」だ。展示ブースには「AI文字起こし+AI要約=異次元の生産性」とキャッチコピーが大きく掲げられていた。
ログミーツは、オンライン・オフラインで問わず会議の内容を記録するAI技術を活用したクラウドサービス。専用のモバイル端末とWindowsアプリの2種類の「ログミーツレコーダー」を使うことで、会話を自動で文字起こしを行い、音声データと共にセキュリティクラウドに保存できる。文字起こしされたテキストデータは検索や編集、共有を行うこともできる。
そして、追加機能であるログミーツGPT‐3/4は、AIによる文字起こしに加えて、ChatGPTを活用したAIによる要約機能も提供。これにより、情報整理の効率化が期待できる。要約だけでなく、校正や文章生成、翻訳、情報分類、ToDo抽出などの機能をワンクリックで利用でき、ユーザーによるボタンのカスタマイズや組織内共有も可能で、幅広い用途に対応する。
ログミーツは、すでに300社以上の上場企業やベンチャー、自治体などに導入されている。また、同社はChatGPTの導入コンサルティング事業も開始。導入方法や研修、システム開発の支援など、あらゆる要望に対応していく考えだ。
人間らしくなったAIチャットボット
次に紹介したいのは、チャットプラスが提供するAIチャットボット「ChatPlus」。
ChatPlusはAI搭載型のチャットボットツールで、ホームページやアプリに埋め込むことができる。Webページにタグを貼るだけで、すぐにチャットボットを開始でき、ユーザーとリアルタイムで会話できる。有人によるチャット以外にも、チャットボットによる自動応答、AIによる応答、有人とチャットボットによるハイブリットなど、さまざまな運用に合わせてカスタマイズできる。
発行アカウント数は1万8000IDを突破しており、スタートアップ企業から大企業、外資系企業、自治体や政府系機関まで、さまざまな組織が利用しているという。そしてChatPlusは4月、ChatGPTの技術を活用した新機能をリリースした。一つずつ紹介していこう。
まず、Q&Aデータの生成が簡略化された。テキストデータやPDF、Word、PowerPoint、ExcelのファイルからQ&Aを自動生成できる。生成したQ&Aはワンクリックで、AIチャットボットの学習データに移行できる。
また、質問文を入力するだけでChatGPTから回答例を生成することも可能。チャットオペレーターとのチャットの履歴からChatGPTがQ&Aを作成できる。これまで人間が行っていたQ&Aの作成作業が自動化され、AIチャットボット構築にかかる工数の削減につながるとしている。
さらに、フリーワードの質問にも回答できるようになった。訪問者のフリーワード入力に対して、事前のQ&Aを用意することなく、ChatGPTによる高精度な回答ができるようになった。
また、他のAIの補完としてもChatGPTを活用している。以前から導入している質問応答AIモデルのWatsonやSosekiなどが回答できない場合にChatGPTから回答を生成するようにもできる。
加えて、AIによるAI学習データの作成も可能で、例えば、Watsonの学習データをChatGPTで生成できるとのことだ。「ChatGPTとの連携により、まるで人間と話しているようなチャットボットが実現できました」と、担当者は説明していた。
同社は今後、メール履歴や通話履歴からQ&Aの生成、ボイスチャットやWeb会議システムとの連携、加えて他のAIとの連携を進めていく計画だ。
LINE×ChatGPT
最後に紹介するのは、おなじみのアプリケーション「LINE」がChatGPTと連携した事例だ。piconが提供する「AIチャットくん」は、LINE上でメッセージを送るだけでAIが質問に答えてくれるサービス。
認証が不要で友達追加するだけで会話を始めることができ、例えば、献立作成やビジネスメールの作成、人生相談といったことを答えてくれる。利用料金は、毎日5通まで無料。月額980円のプレミアムプランに加入することで無制限のチャットが可能になる。
また、OpenAIの音声認識モデル「Whisper API」を活用しており、人間が発した声や会話をAIが解析しテキストデータへ変換、その内容をもとにChatGPTが返答することもできるという。
3月1日のリリースから1カ月で累計ユーザーは100万人を超え、総メッセージ数は2000万回を超えた。また、50歳以上のユーザーが全体の14.5%を占めており、幅広い年齢層が利用していることが分かる。
「ChatGPTに対して『使いたいけど難しそう』と思っている人は少なくないはずです。もっと気軽にAIとの会話を体感してほしいという思いから、日本人が使い慣れたLINEで利用できるサービスを作りました」と、担当者は説明した。
同社は今後、台湾などの海外展開や継続的なPRを続け、2023年中に登録ユーザー1000万人を目指すとのことだ。
OpenAIは5月18日、ついにChatGPTの公式アプリを海外でリリースした。まずはiOS対応アプリの提供を開始し、Android向けのリリースも間もなく行われる見込み。現在は米国のユーザーのみが対象だが、利用できる国は数週間以内に拡大する予定という。「ChatGPTが当たり前の世界」がだんだんと近づいてきているようだ。