今年創立10周年を迎えるBox Japanは5月18日、記者説明会を開催した。説明会では、5月に発表された新機能「Box AI」、日本における2022年度の事業総括、2023年度の事業戦略などが紹介された。
同説明会にはBoxの共同創業者兼CEOのアーロン・レヴィ氏とBox Japan代表取締役社長の古市克典氏、専務執行役員の佐藤範之氏が登壇。本稿では、会見の一部始終を紹介する。
ChatGPTのAPIを統合した「Box AI」
説明会にオンライン会議システム経由で参加したレヴィ氏は、日本で5月8日に発表された「Box AI」について紹介した。
Box AI は、高度なAIモデルをクラウドコンテンツであるBoxにネイティブに実装する一連の新機能で、Boxのセキュリティ、コンプライアンス、プライバシーをそのまま活用する。
Box AIを利用することで、高度なAIモデルをクラウドコンテンツであるBoxにネイテインサイトの発見と共有、重要な問題に対する迅速な回答、Boxに格納されている組織のデータに基づくコンテンツ作成が容易になる。
また、OpenAIの最先端のAIモデルである「ChatGPT」をBoxに統合することで、Box上にあるコンテンツを理解し、新たなコンテンツを作成することが可能になる。
「私たちは、昨今の生成 AIの発展により、エンタープライズ・ソフトウェアにおけるプラットフォームの変革期にいますが、エンタープライズ向けのコンテンツほど社会に大きな影響を与える可能性がある分野はないでしょう。今回の連携により、組織が保有するドキュメントやビデオ、プレゼンテーション、スプレッドシートなどの膨大な量のデータを分析し、合成する能力において、大きな改善がみられました。AI を組み合わせることで、コンテンツの価値を引き出し、すべての人がよりスマートに、より生産的に業務に取り組むことができます。コンテンツは組織の最も重要なデータであり、Box AI によって真の業務改革の推進が始まったところです」(レヴィ氏)
レヴィ氏は、Box AIにおいて、AIを利用することで顧客が不安となるセキュリティやプライバシー侵害に最大限対応した上で、AIを全てのBoxの機能に実装していく方針であると説明した。そして、Box AIの登場で、企業や組織のコンテンツデータの活用スタイルが大きく変化する可能性を強調した。
2023年度の目標は「すべてのコンテンツをデジタルで一元管理」
続いて登場した古市氏は、2022年2月1日~2023年1月31日までの「FY23」における日本事業を振り返り、成果として、以下4点を挙げた。
- ARR(Annual Recurring Revenue: 新規年間受注高+アップセル年間受注高)は創業以来9年連続成長
- Box コンサルティングが直近4年間、平均して対前年1.7倍に
- 極めて高い継続率
- BoxWorks Digital Tokyoの登録者は約6,000人
古市氏は、「ARRの成長」に関して以下のように語った。
「FY22の日本郵政さまやキヤノンさまに続き、FY23は三菱重工さま、スズキさま、アイシンさまなど、世界で活躍する企業から大型受注をいただきました。また、Boxはベンダー別売上金額推移およびシェアにおいて、2021年度実績と2022年度予測のいずれも1位を獲得しており、これらの要因からキャズム(ハイテク業界において新製品・新技術を市場に浸透させていく際に見られる、初期市場からメインストリーム市場への移行を阻害する深い溝)越えを確信しました」(古市氏)
このようにFY23を大成功ともいえる形で締めくくったBox Japanだが、これから迎えるFY24(2023年2月1日~2024年1月31日)は、DX(デジタルトランスフォーメーション)実現の「はじめの一歩」として、すべてのコンテンツをデジタルにして一元管理することや、セキュリティと使い勝手の二兎獲得を実現するための施策を実施していくという。
また、最近の動向に対して「PPAP対策」「ランサムウェア対策」「AI活用」といった対応策も講じる。
「セキュリティ脆弱なパスワード付きZIP(PPAP)について、一部組織は対処済みであるものの、いまだに過半数で放置されているという現状があります」(古市氏)
顧客獲得の面では、大手製造企業もBoxを導入するようになったことを踏まえ、FY23では獲得に難航した官公庁、自治体、病院、銀行といった顧客の獲得に向けて動き、加えて地方企業や中小企業といった顧客候補にもリーチする。
説明会の最後に登壇した佐藤氏は、「日本の顧客事例とユースケース」として、「SUZUKI」「みずほグループ」「埼玉県」といった事例を紹介した。
「新規顧客であるみずほグループさまや埼玉県さまは、FY24で注力したい業界のお客さまです。みずほグループさまは、『セキュアなコラボレーション』『顧客接点のDX化』『みずほデジタルコネクトへの採用』といった点で、埼玉県さまは『情報資産の電子化・ペーパレス実現』『コンテンツ一元管理』『ISMAP対応・セキュリティ強化』といった内容で導入を決めてくださいました」(佐藤氏)
Box Japanは、既存の顧客、そして新たな業界の新規顧客の支援を進めるとともに、日本社会へ引き続き貢献する考えだという。