国立極地研究所(極地研)と東京大学(東大)の両者は5月18日、日本の南極観測隊(JARE29)が収集したアングライト隕石「Asuka 881371」と、日本とベルギーの合同南極観測隊(JARE54とBELARE-SAMBA2012-23)が収集したアングライト隕石「Asuka 12209」を、酸素同位体分析設備で分析した結果、どちらのアングライト隕石にも、異なる2つの天体起源を示す酸素同位体が存在していることが示されたと共同で発表した。

  • ナンセン氷原の裸氷上のアングライト隕石「Asuka 12209」

    ナンセン氷原の裸氷上のアングライト隕石「Asuka 12209」(出所:極地研Webサイト)

同成果は、英・オープン大学のBen Rider-Stokes大学院生を中心とする、極地研、東大の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の天文学術誌「Nature Astronomy」に掲載された。

アングライトは、太陽系最古の火山岩として知られている。今回の研究では、南極で収集された2つのアングライトの隕石を調べた結果、どちらの隕石からも異なる2つの天体起源を示す酸素同位体が発見された。研究チームによると、このような発見は初めてだという。

そして試料の同位体比年代を測定した結果、この隕石試料の形成時期が、木星の形成や移動の推定年代と重なることが判明したとする。つまり、隕石の母天体の衝突イベントが木星の移動によって引き起こされたことが示唆されたのである。この研究成果は、木星の形成と移動に関する同位体的証拠を示す初めてのものだとしている。

研究チームは現在、隕石試料の水素含有量を調査し、衝突イベントが太陽系への水の供給という点でどのような役割を果たしていたかを評価しているとする。

今回の研究により、太陽系におけるとても大きなイベントに関する重要な知見が、1g未満というごく少量の物質から得られた。Rider-Stokes大学院生は今回の発見に対し、今後も回収できるサンプルが微量だったとしても、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による火星衛星探査計画「MMX」のようなサンプルリターン計画は重要であることを示唆しているとした。