国立天文台(NAOJ)は5月18日、2020年に発見されたIa型超新星「2020eyj」を詳細に観測し、この超新星がヘリウムを主成分とする星周物質に包まれていたことを解明し、この超新星爆発に伴う電波の検出に成功。検出された電波の強さを理論モデルと比較した結果、爆発前の白色矮星は、毎年太陽質量の0.1%に相当する大量の物質を伴星から受け取っていたことが判明したことを発表した。
同成果は、NAOJ 科学研究部の守屋尭助教を含む40名弱の研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。
遠方の銀河までの距離を算出するための“ものさし”として使われているIa型超新星は、連星系を構成する白色矮星において発生することが知られている。白色矮星が強い重力でもって伴星の外層部の物質を奪い取って自身に「質量降着」させ、それが太陽質量の約1.4倍(チャンドラセカール限界)を超えると暴走的な核融合反応を招き、自身をも吹き飛ばす超新星爆発となるとされる。しかし、このように説明すると、Ia型超新星の爆発のメカニズムが解明されているかのように思われるかもしれないが、実はまだわかっていない部分も多いという。
そうしたIa型超新星の爆発メカニズムにおいて注目されているのが、伴星からの物質の降着で、その降着物質は、多くの場合は水素が主成分とされるが、水素の外層を失った伴星の場合は、水素が核融合することでできる“燃えかす”のヘリウムが主成分であるとも考えられているという。
また、伴星から流れ出す物質は、すべてが白色矮星に降り積もるわけではなく、どちらの星をも包む「星周物質」を形成する可能性もあるともされているほか、星周物質に包まれた白色矮星が超新星爆発を起こすと、星周物質内で衝撃波が生じて強い電波が放射されることがあることも予想されているにも関わらず、これまでに星周物質に包まれたIa型超新星は多数見つかっているものの、その超新星爆発に伴う電波放射が検出されたことはなかったという。
そこで研究チームは、2020年に発見されたIa型超新星の2020eyjの詳細観測を実施。その結果、同超新星がヘリウムを主成分とする星周物質に包まれていたことを突き止めることに成功したほか、同超新星爆発に伴う電波の検出にも成功したとする。検出された電波の強さを、守屋助教の計算した理論モデルと比較した結果、爆発前の白色矮星は、毎年太陽質量の0.1%に相当する大量の物質を伴星から受け取っていたことが確認されたという。なお、最外層の主成分がヘリウムで構成される伴星からの降着がきっかけとなるIa型超新星爆発が観測的に捉えられたのは、2020eyjが初だという。
今回の成果を踏まえ、研究チームでは未解明の部分が多いIa型超新星の爆発前の様子やその爆発メカニズムについての理解が深まることが期待されるとしており、今後、電波を放つIa型超新星のさらなる捜索により、白色矮星が爆発に至る道筋を解明することを目指すとしている。