生産性の向上、労働者不足、急速に変化する状況への対応--。われわれは厳しい環境の中で仕事をしているのかもしれない。Microsoftが公開したブログからは、時間に追われる労働者の実態が浮き彫りになった。
働く人が置かれている状況
このブログは、日本を含む世界31市場でフルタイムの従業員や自営業者3万1000人を対象に行った「Work Trend Index」(調査期間は2月1日~3月14日)に、「Microsoft 365」の生産性についてのデータ、LinkedInのEconomic Graphの雇用動向などを組み合わせ、働く人が置かれている状況をまとめた。
最初に指摘するのが、データがわれわれの処理能力を上回っているという「デジタルの負債」だ。電子メールなどのコミュニケーションや会議といったデジタルでの活動が、キャパを上回っているとも言えるだろう。
調査によると64%が「仕事をするための時間とエネルギーの確保に苦慮している」と回答している。このような状況にある場合、新しいアイディアや戦略的に考えることにも苦慮する可能性が3.5倍高いという。
勤務時間においてコミュニケーションが占める比率が高くなっており、69%が「中断されずに集中できる時間を十分に確保できない」と回答した。また「仕事中に情報を検索する時間が長すぎることに悩んでいる」という人は62%とも。同意される方も多いのではないか。
Microsoft 365の使用データからは、平均的な従業員は就労時間の57%を会議、メール、チャットなどのコミュニケーションに費やしており、文書や表計算、プレゼンなどのコンテンツ作成に費やす時間は43%となった。
電子メールも相変わらず多い。メールの使用が多い上位25%は、週8.8時間をメールに費やしているという。会議についても、上位25%は週7.5時間を会議に費やしているとのことだ。
生産性の阻害要因に対する推奨アクション
生産性の阻害要因として(1)非効率な会議、(2)明確なゴールがない、(3)会議が多すぎる、(4)インスピレーションが湧かない、(5)必要としている情報を簡単に得られないの5つを挙げている。その中でも、会議については2020年2月以降、1週間あたりのTeams会議や通話は192%増と3倍近くに増えていることから、阻害要因の(1)と(3)に出てくるのも納得といえよう。
調査では会議で困っていることとして「バーチャル会議でのブレストが難しい」(58%)、「遅れて参加するとキャッチアップが難しい」(57%)、「会議後の次のステップが不明確」(55%)、「会議内容の要約が難しい」(56%)などが挙がったという。また、自分が欠席すると問題になると考える人は35%と3人に1人だが、取り残されることへの不安(FOMO:Fear of Missing Out)もある。
このような状況から、Microsoftでは以下のアクションを推奨している。
- 自分たちの組織において、生産性を阻害している要因を特定して対応する
- 勤務時間の抜本的な見直しにより、集中する時間を確保する
- 会議はその時その時のイベントではなく、デジタルの成果物として考える。そのために、AIを活用して会議を記録したり、トランスクリプトを残したり、コーディングを活用して自分に最適な方法とタイミングで会議に参加することを推奨する
Microsoftはこのレポートで、AIが生産性の支援になるとしながら、従業員も「分析的な作業」(79%)、「事務的な作業」(76%)、「クリエイティブな作業」(73%)など、回答者の多くがAIを活用することに抵抗がない、と回答していることを紹介する。
また、AIの支援を求める分野としては、「必要とする情報や答えを発見する」(86%)「会議やアクションアイテムの要約」(80%)「1日の計画」(77%)などが挙がったという。一方で、新しい働き方のためには「分析力」「柔軟性」「感情的知性」などの新しいスキルが必要とも記している。