マイナビは3月14日~17日、オンライン・イベント「TECH+EXPO 2023 Spring for ハイブリッドワーク 『働く』を再構築する」を開催した。本稿では、カゴメ 常務執行役員 CHOを務める有沢正人氏が登壇した特別講演「個人も組織もともに成長するためのカゴメの『生き方改革』」の内容をお届けする。

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ジョブ型人事への改革、成功のカギは?

講演冒頭、有沢氏は従業員エンゲージメントやジョブ型人事制度について、「ツールとしては、ジョブ型は非常に優れているが、導入すればエンゲージメントが向上するというわけではない」と切り出した。

カゴメが考えるエンゲージメントとは、同社の社長・山口聡氏のメッセージにある「信頼感がある環境の中で個々のメンバーが1つのチームとして働き、能力を最大限に発揮して、組織の目標を達成できている状態」だという。

また、エンゲージメント・サーベイについては、有沢氏は「目的ではなくツール」だとした上で、同社では多くの調査を実施していると語る。

「モニタリングとスコア向上に向け、現状把握と課題抽出に利用しています」(有沢氏)

その上で、ジョブ型人事への改革においては、従来の人的資源の発想から「人的資本」への変化が大きな流れだと同氏は説明し、「人件費ではなくて人的投資だと考えるべき」だと強調した。現在は個人が自身でキャリアを決める時代になりつつある。そのため、これまでのような囲い込み型の人事から「選び、選ばれる関係」に変えていく必要があるのだ。

  • カゴメが目指す変革の方向性/出典:人材版伊藤レポート

「今までは離職率を気にしていましたが、これからはいかに良い人が来てくれるかを気にする時代に入りつつあります」(有沢氏)

同氏は「人事制度改革では、経営戦略と人材戦略の連動が必要であり、それには運用面が重要」だとした上で、「いかに運用するかが、人事や経営の腕の見せどころ」だと語る。仮に、ジョブ・グレードを導入しても、それだけでは成功しない。併せて評価と報酬も変える必要があるのだ。

カゴメ流「ジョブ型人事制度プロジェクト」の進め方

では一連の人事制度改革を、カゴメはどう進めたのか。

有沢氏によると、まずトップの制度から変え、その後、部長、課長という流れで変えていったという。ジョブ・ディスクリプションの代わりに、同社ではKPI評価シートや年間の目標シートを作成し、全員分を全社員に公開している。さらに、本部長・執行役員・取締役以上の登用・昇進・異動を管轄する報酬諮問委員会の導入や、社外取締役の増員も行った。

  • ジョブ型人事制度プロジェクトの流れ

「ジョブ型を導入するなら、ここまでやる必要があります」(有沢氏)

制度改定「3つのポイント」

有沢氏はジョブ型人事制度での改訂ポイントとして、以下の3点を挙げる。

  • 1.年功型から職務型等級制度への移行(Pay for Job)
  • 2.より業績/評価と連動した報酬制度への改革(Pay for Performance)
  • 3.メリハリを付けた明確な処遇の実現(Pay for Differentiation)
  • カゴメでは処遇との関連性も公開した結果、社員の納得感を得られ、モチベーションも上がったそうだ。

    有沢氏が入社するまで、同社では降格・降職・降級が全くなかったが、ジョブ型の導入により、これらが当たり前になった。もちろん、もし降格しても再昇格するチャンスは数多く用意されているという。

    また、同社では仕事の内容などを点数化して、グローバル・ジョブ・グレードとして評価し、公開している。これにより、例えば経営企画室長と生産部長、支店長と工場長のどちらが偉いのかなどという煩わしい議論がなくなったそうだ。公開には、各自が自身のキャリアの目標を立てやすくなるメリットもあったと有沢氏は言う。

    さらに同社では、役員や管理職の変動報酬の比率を上げた上で、社長の報酬実額を社内報に掲載した。この時、社内では大騒ぎになると同時に雰囲気が大きく変わったと同氏は振り返る。

    「Ready Go!の状態になり、一体感が出てきたかなと感じました」(有沢氏)