クリックテック・ジャパンは5月12日、都内で記者説明会を開催した。説明会には、来日した米Qlik CEOのMike Capone(マイク・カポネ)氏が出席したほか、本田技研工業(ホンダ)の事例が紹介された。
Talendを買収し、2024年にはプラットフォームを統合
冒頭、カポネ氏は「現在、当社が抱えるユーザーは3万5000に達し、世界100カ国超でサービスを提供している。CEOに就任した5年前の来日時はアナリティクスの話がメインだったが、それから大きく変化し、アナリティクスに加え、エンドツーエンドでの統合分析、機械学習、AI、自動化のプラットフォームなど多岐にわたっている」との認識を示した。
同社では5年間で9社を買収し、最近では10社目としてデータ管理ソリューションを提供するTalendの買収を発表しており、近ごろ買収の完了を予定。Talendの買収により、完全なプラットフォームを構築し、全面的にクラウド化していく考えだ。
カポネ氏は「Qlikが持つデータ統合やAutoMLなどを備えてインサイトを提供するデータ分析の強みと、Talendが有するデータガバナンスやデータトランスフォーメーションを組み合わせることで、欠けていた部分が補完され、完全な形でプラットフォームを構築できる。サポートに変更はなく、順次TalendのさまざまサービスをQlikのプラットフォームに組み込み、シームレスな形にしていく。プラットフォームの統合は2024年を目指している」と説明した。
キャパシティモデルの価格設定に移行、生成AIの可能性
一方、提供ついてもユーザーの要望に応えるため、従来のライセンス形態からキャパシティ(容量)モデルの価格設定に移行していく。
同氏は「クラウド化に伴い、スタートさせる。コンサンプションベースでコスト管理を可能とし、利用した分だけの支払いになるため、ユーザーが望む機能を柔軟に使用できる予測可能なコスト構造を提供する。ライセンス特有の導入障壁を取り除き、組織全体でデータ活用ができるようにしていく」と述べた。現在、Qlik Cloud Data Integration向けに利用可能、広範にはQlik Cloud Analytics向けにも提供を予定している。
続いて、カポネ氏は生成AIについて言及した。同氏は「生成AIは魔法ではなく、処理能力やアルゴリズムが改善したためAIが向上している。AIによるパターン認知などを支えているのはデータがあってこそだ。当社は100%データ構築、分析に邁進している企業であり、プラットフォームそのものもさまざまなデータソースを支えている。これにより、パワフルにAIを向上させていくことが可能だ」としている。
4月に開催された年次イベント「QlikWorld 2023」においても、生成AIとQlikを統合したユースケースの紹介があり、OpenAIのChatGPTと同社のプラットフォームを統合するデモを行ったという。同氏は「安全かつガバナンスが効かせ、データリネージュも含めてコントロールした形でデモを行った。企業のガバナンス的にも許容してもらえるものだった」と振り返っていた。
Qlikを7500人が利用するホンダの事例
次に、本田技研工業 ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部 データドリブンソリューション開発部 顧客理解基盤開発課 課長チーフエンジニアの小川努氏が導入事例を紹介した。小川氏は、Qlikのサービスを活用して優れた成果を上げ、グローバルで50人が選定されるエバンジェリストプログラム「Qlik Luminary 2023」のメンバーにも選ばれている。
ホンダでは、当初アナリティクスソリューションの「QlikView」、その後はBI(ビジネスインテリジェンス)「Qlik Sense」を導入。現在では複数のデータを組み合わせた販売状況の原因分析や品質問題の発生状況、SNSと連携した第三者評価の分析、性能情報もふまえた、自社のポジショニング分析などの用途に活用されている。
同氏は「世の中でDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれているが、どこの企業でも苦労しており、決め方が変わるという言い方がいいのかもしれないと思っている。当社は熱量のある人材が多く、“パッションドリブン”の人たちを“データドリブン”でどのように融合していくという取り組みが、われわれのミッションであり、DXの成果として出てくるところだ」と説明する。
小川氏によると、経験がなくても洞察の中で答えを導き出すことが武器になるという気づきを、Qlikを通じて得ているという。現在、同社ではQlikのサービスを全社展開しており、7500人のユーザーが利用している。
また、同氏は「ライセンスの価格よりも教育にコストがかかることが重要であり、ユーザーの中で情報交換するなど広がりを見せている。当社では特異な使い方をしている側面があり、システムに組み込まれて常に新しいデータが増えていくというよりも、アドホックに誰かしらが利用しているという状況が非常に多い。これは、自己解決したいことに利用しているからだ」と話す。