米Qlikは4月7日、日本を含めた7カ国・6000人以上を対象としたデータリテラシー調査の結果を発表した。同調査では、日本の200人以上の「経営層」と1000人以上の「従業員」が回答した。

同日には同社日本法人のクリックテック・ジャパンがオンラインで記者説明会を開き、調査のサマリーが解説されるとともに、日本における企業のデータ活用におけるポイントが示された。

  • Qlikのデータリテラシー調査の概要

経営層、従業員とも重要性を認識するもスキル不足

データリテラシーとは、データの読み込み、取り扱い、分析、疑問を持つことができる能力と定義する。企業にとっては、従業員のそうした能力を意思決定に生かし、データから読み取り、分析した内容を組織内に伝えることが求められる。

同調査によれば、経営層も従業員も、2030年にはAI(人工知能)やML(機械学習)と同様に、データリテラシーが最も需要の高いスキルになると予測しているものの、スキル不足が浮き彫りになったという。

従業員の半数は、「AIの利用が拡大してもデータリテラシーにより自らの役割を適切に維持できる」と考え、8割以上の経営層が「データリテラシーは将来、現在のコンピュータの使用能力と同じくらい不可欠になる」とみなしている。だが、「データリテラシースキルに十分自信がある」と答えたのは、回答者の5%に過ぎなかった。

  • 経営層と従業員のデータリテラシーへの意識

従業員はデータリテラシー習得に自費を投資

背景には、データリテラシーを身に着けられる環境が企業に整っていないことが挙げられる。

「勤め先が、より自動化されたデータ主導型の職場環境に従業員が対応できるよう準備を進めていると思う」と回答した従業員はわずか17%だった(グローバル 21%)。

企業によってはデータリテラシーのトレーニング環境が整いつつあるものの、主にデータアナリストやデータサイエンティストなど、データ関連の仕事に就いている従業員を対象にしているケースが多いそうだ。

加えて、同調査によれば、経営層の間で最も多かった考え方は、「将来の職場に対応するスキルの習得は、企業や教育機関の責任というより、個人の責任である」というものだったという。

実際に今回の調査でも従業員の3分の2以上は自分の時間と資金を投じており、データリテラシー習得のために毎月平均約7時間、年平均約21万円を費やしている。

  • 日本、グローバルともにデータリテラシー習得に従業員が自費を投じている

だが、従業員の調査回答者の27%(グローバル35%)は、「勤務先がスキルアップやトレーニングの機会を十分に提供していないという理由で過去12カ月の間に離職した」とも回答している。

企業に求められるスキルアップの機会提供

調査結果を踏まえて、米Qlik CLO(Chief Learning Officer、最高教育責任者)のケビン・ハネガン氏は、「ビジネスリーダーには、従業員がより適切にデータを利用して意思決定を行い、プラスの結果を生み出すためのサポートやスキルアップの機会が必要であるということを認識してほしい。従業員がデータによるインサイトを使用して自信を持った意思決定が下せ、生産性が向上するよう支援する必要がある」と結論づけた。

  • 米Qlik CLOのケビン・ハネガン氏

また、ハネガン氏は、リアルタイムにデータを取得・処理し、人の直観と組み合わせて効果的な意思決定を行う「アクティブインテリジェンス」を企業が備え、ROI(投資収益率)を最大化するうえでのポイントを5つ挙げた。5つのポイントは以下となる。

1. アクティブインテリジェンスによりサポートされたデータリテラシー文化を育む
2. ツールとリテラシーにより、データを民主化する
3. 持続的な学習を実践し、時代に適応する
4. データの信頼性を高める
5. 継続的な改善とポジティブな変化のためのデータ活用

「経営層は従業員に、将来の成長や成功にデータリテラシーがメリットをもたらすことを認識させる必要がある。また、ツールやスキルを技術チームに提供するだけでなく、組織全体のデータ文化を醸成し、データを全従業員の手に渡るようにすることが重要だ」とハネガン氏。

日本企業ではトップダウンとボトムアップの連携が鍵に

日本独特の文化や環境、現状を踏まえたうえでのデータ活用のポイントとしては、 「CDO(チーフデータオフィサー)などのデータ責任者の設置」「全社的なデータ活用文化の醸成」「従業員教育への投資」が挙げられた。

  • クリックテック・ジャパンによるデータ活用における日本企業への提言

クリックテック・ジャパン カントリー・マネージャーの今井浩氏は、「今回の調査結果は、データ活用について適切な投資を行えているか否かで、企業が働き手から選別される時代が到来したことを示している。優秀な人材が集うデータドリブンな企業になるためには、企業としてのデータにまつわるコミットメントを示すCDOのようなデータ責任者が必要となる。部門ごとのサイロ化に陥らないための全社的なデータ活用を実践するうえでは、従業員全員がデータを共有・活用しようとする文化を醸成し、それを支えるプロセスや基盤を整備しなければならない。もちろん、ワークショップ、トレーニングなどの教育も欠かせない」と語った。

  • クリックテック・ジャパン カントリー・マネージャー 今井 浩氏

クリックテック・ジャパンがデータ活用支援で関わってきた企業のうち、データ活用を成功させた企業では、「経営層と現場が同じゴールを共有できている」ことが共通点として挙げられるという。そのため、今井氏は「トップダウンとボトムアップの連携」の重要性を指摘する。

例えば、トップダウンでは、責任者となる人材のディレクションに加え、改善をタスク化する部門を立ち上げる。ボトムアップでは、現場の改革・改善の必要性を強く持っている人材を探して、起用することが重要になるという。

「課題を認識している人がボランティアで、自由に、バーチャルに参加できるタスクチームを作り、自走自律で改善を進める取り組みも有効だろう。重要なのは役職ではなく、業務改革や現状を変える必要性に対する意識だ」(今井氏)