新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、急遽リモートワークの必要性に迫られた企業も少なくない。あれから3年が経過し、少しずつではあるが社会は以前の状態に戻りつつある。リモートワークを実施するうえで、ネットワークは1つの重要な要素であり、今後も継続されていくことが見込まれている。
今回、中小企業向けアクセスポイントなどの製品「Aruba Instant On」を統括する、Aruba, a Hewlett Packard Enterprise company バイスプレジデント スモール&ミディアムビジネス事業統括のアモル・ミトラ氏に話を伺った。
中小企業の課題解決を支援する「Aruba Instant On」
ご存知の方も多いとは思うが、ArubaはHPEにおいてインテリジェントエッジのビジネスを手がけ、ネットワーキングやデータ通信を担っている。ビジネスポートフォリオは大きくエンタープライズ向けと中小企業向け製品を提供し、Instant Onは2019年にスタートした。
ミトラ氏は、中小企業向け製品の提供を至った背景について「中小企業が現在、そして未来に抱えるであろう課題に対応したかったからです。世界中の中小企業が抱える課題は年々大きくなっており、われわれとしてはビジネスチャンスとして捉えています」と述べる。
同氏によると、中小企業が抱える課題はセキュリティの脅威や、人材・予算不足、サプライチェーン、インフレなど大企業と同様のものもあるが、中小企業特有の課題としてIT専任の人材がいないことを挙げている。
そこで、同社はこうした課題を抱える中小企業に対して、適切かつ求められる製品ポートフォリオを構築し、中小企業の要望・ニーズに対応するため、Instant Onを提供している。
同製品群についてミトラ氏は「名前の通り、瞬時に使える製品です。プラグ・アンド・プレイであり、シンプルで使い勝手も良く、エンタープライズクラスのセキュリティが担保でき、低価格です。また、自動化やスマートな機能を持ち、高速なネットワーキング、デバイス間の接続を高度なソフトウェアで可能とし、Web GUIベースの専用モバイルアプリでセットアップできるため、中小企業は簡単・迅速にネットワークを稼働させることが可能です」と、そのメリットを説く。
エンタープライズレベルのセキュリティで中小企業の懸念を払しょく
Aruba Instant Onは、Wi-Fiアクセスポイントと有線スイッチの2製品で構成している。アクセスポイントとして屋内用のWi-Fi6に対応した「Instant On AP25」「同AP22」、Wi-Fi5対応の「同AP15」「同AP12」「同AP11」、卓上型の「同AP11D」、屋外用の「AP17」となる。
また、スイッチは非管理型の「同1430 Switch Series」、スマート管理の「同1830 Switch Series」「同1930 Switch Series」、スマート管理スタッカブルの「同1960 Switch Series」のラインアップを揃えている。
ミトラ氏は「無線、有線いずれの製品もアプリで管理できます。アプリはクラウドで管理されているプラットフォームのため、ユーザーは柔軟性と俊敏性を保ちつつ遠隔地から管理することを可能としています」と話す。
アプリはアクセスポイント、スイッチともに共通の管理画面を持ち、ファームウェアを自動配布してバグ修正用の保守ソフトを自動的にインストールし、ネットワーク上に配置されたすべてのデバイスをマップで確認できる。また、遠隔からの監視・管理もでき、校正作業や管理作業を不要としている。
モバイルアプリはApple、Androidの各アプリストアでインストールし、アカウントの作成・有効化、デバイスの選択、SSIDとパスワードを設定すれば完了する。コンシューマ向けのアクセスポイントのセットアップと比較して特段変わりはなく、ブラウザからも設定は可能だ。
ただ、セキュリティに対する懸念も多い。この点については、エンタープライズ向けのセキュリティ機能を組み込んでいる。具体的には、Wi-FiセキュリティプロトコルのWPA2、WPA3に準拠した機能を持つ。また、データ暗号化機能に加え、物理的なセキュリティとして壁に立て付けた際に盗難を防止する機能も有している。
つまり、アクセスセキュリティ、データ暗号化、物理的の3つの側面からセキュリティを担保しているというわけだ。そして、3台以上のアクセスポイントをメッシュ化するセキュアスマートメッシュ機能は、通信のセキュリティを確保している。
さらに、製品はハードウェア購入費用のみとなることから、サブスクリプション料金やライセンス料金は不要とし、コスト低減を可能としていることに加え、電話やチャット、コミュニティでのサポートも提供している。
しかし、中小企業向け製品を提供する競合が多いのも事実であり、米CisconoのMeraki GoやD-Link、TP-Link、ネットギア、Ubiquitiなどが挙げられる。ミトラ氏は、こうした競合他社との違いについて「Arubaは競合他社と比較してシンプル、セキュア、スマートであることが最大の強みです」と説明している。
日本におけるビジネス展開、4つの提言
中小企業でも扱いやすい製品として打ち出しているInstant Onだが、日本におけるビジネスについてはどのように考えているのか。
ミトラ氏は「日本市場は急速に成長しており、中小企業に対して製品の提供に注力しています。コロナ禍を経て中小企業の市場におけるビジネスチャンスは拡大し、多くのビジネスが再生しているからです。日本ではパートナー、オンライン、サービスプロバイダの3つの販売系を活用していきます。日本語対応などローカライズにも力を入れています」と話す。
そして、同氏は日本の中小企業に向けた提言として以下の4点を挙げている。
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クラウドベースのソリューション導入
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コスト管理
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安定供給が可能なベンダーの選定
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Networking as a Service
クラウドベースのソリューション導入については、中小企業が成長する中で人手不足やIT専門性がない状況においては、柔軟性、俊敏性が求められることから、国内外からのネットワーク管理の要望が高まっているからだ。
ミトラ氏は「クラウドベースであれば遠隔地からの管理など、柔軟性と俊敏性を担保できるとともに、ビジネスが伸長していけば、成長に合わせて拡張していくことが可能だからです。コロナ禍において中小企業もオフィスに出社できない状況に陥り、リモートからの管理の重要性が再認識されました。そリモートワークの環境に適応できた企業は、すでにクラウドベースのソリューションを導入していた企業です」と説明する
コスト管理に関しては、企業の予算は縮小されることから、ネットワークをはじめとしたITインフラコストの増大に配慮しなければならないと指摘。同氏は「ネットワーク機器のTCO(総保有コスト)が増大しないように注意が必要です。Instant Onは機能アップデートなどで追加の料金は発生しませんし、単一のコスト、価格で提供することで、現在から未来にかけて必要なケイパビリティを提供しています」と強調する。
3つ目は現在の状況を鑑みた提言だ。昨今では半導体不足に伴う製品供給の遅れもあり、安定的に製品を供給することがベンダー側でも喫緊の課題となっている。
この点について、ミトラ氏は「流通においては在庫を持つことが重要です。スピードとボリュームが必要となり、販売代理店が適切な在庫水準を保つようにしており、3つの販売経路を介して市場に製品を提供できるようにしています。そのため、適切な在庫を持ちつつ需要を満たすことが可能になっています。ベンダーとして製品を迅速かつ予測可能な形で提供できるベンダーを求めるべきです」と力を込める。
そして、4つ目のNetwork as a Serviceは「将来的に中小企業の多くはネットワークをサービスとして利用することが見込まれています。そのため、中小企業がベンダーを選定する際は、Networking as a Serviceに向けた道筋を示すベンダーを見つけるべきです。新しい技術のため、企業により採用の速度は異なりますが、今後は拡大していくことが予想されています」と、同氏は予測している。
今後もArubaでは日本市場へのコミットを強めていくと、ミトラ氏は述べていることから、同社製品が中小企業の課題解決を支援していくことを期待したいところだ。