楽天モバイルと米AST SpaceMobileは4月26日、低軌道衛星によるモバイル・ブロードバンド通信を使用した市販スマートフォン(スマホ)間でのエンド・トゥ・エンドでの音声通話試験に、4月21日10時31分(現地時間2023年4月20日20時31分)に成功したと発表した。同様の試験の成功は世界初とのこと。

  • 低軌道衛星のイメージ

  • 音声通話試験するASTのAbel Avellan氏(左)と技術者

今回の試験では、2022年9月にASTが打ち上げた試験衛星である「BlueWalker3(ブルーウォーカー3)」とASTが保有する特許取得済みのシステムとアーキテクチャを利用し、米テキサス州ミッドランドにいるASTのChairman兼CEOのAbel Avellan氏と東京の楽天モバイルのエンジニア間で、市販のスマートフォンを用いて音声通話を実現した。

試験で使用したスマートフォンは、改造など手を加えることなく通常仕様のものを利用したとのこと。

  • ASTの技術者チーム

音声通話には米AT&Tの周波数を使用し、衛星と市販スマートフォンとの直接通信による音声通話を世界で初めて実現したという。今回の成功は、地球低軌道に展開した史上最大規模という商用通信アレイの強度を実証するものという。

  • 試験に参加したAST、楽天モバイル、Vodafone、AT&Tのエンジニア・チーム

なおASTは、世界35社以上の通信事業者と覚書や予備契約を締結しているといい、今回の試験には楽天モバイルの他、英VodafoneとAT&Tの技術者も参加して実施したとのこと。またASTは今回の試験で、音声通話の試験に加えて多様な種類のスマートフォンやデバイスでの初期互換性試験も実施したという。

スマートフォンに関しては、宇宙から多様な電話端末やデバイスにブロードバンド接続を提供する際に重要という、加入者識別モジュール(SIM)とネットワーク情報をBlueWalker 3と直接交換することに成功したとのこと。

また、スマートフォンのアップリンクとダウンリンクの信号強度に関する追加試験と測定により、モバイル・ブロードバンド速度および4G LTE、5G波形に対応できることも確認できたとしている。

楽天グループとASTは、ASTが低軌道衛星(LEO、Low Earth Orbit)で構築するモバイル・ブロードバンド通信が市販スマートフォンとの直接通信を目指す「SpaceMobile(スペースモバイル)」プロジェクトを推進している。

両社は2020年3月に戦略的パートナーシップを締結しており、これに基づき、楽天モバイルが割り当てられている周波数帯を使用したスペースモバイル・サービスの日本での提供に向けて、開発を進めているとのこと。

スペースモバイルでは、テキスト・メッセージに加え、音声やWebブラウジングなどのブロードバンド通信を市販のスマートフォンで利用できるサービス構想を描いているといい、幅広いユーザーに利用できるサービスとなることを目指すという。

楽天モバイルは、日本で同サービスが実現することで、これまでモバイル通信サービスの提供が難しかった山岳地帯や離島などでも通信サービスの提供が可能となり、日本国土のエリアカバー率を大きく向上させられるとしている。

また、大規模災害発生時に地上の基地局設備が被災した場合にも、低軌道衛星を経由して被災地へ通信サービスを提供できるため、自然災害の多い日本における通信インフラの冗長性強化に貢献できるという。