大阪大学(阪大)は4月21日、アルコール摂取量と腎臓病のリスクを評価した疫学研究報告の網羅的な文献検索(システマティックレビュー)を行い、抽出された11研究(総対象人数1463万4940人)の研究結果をメタ解析の手法を用いて統合した結果、タンパク尿のリスクがアルコールの少量摂取では低下した一方、大量摂取ではタンパク尿リスクの上昇が認められたことを発表。併せて、腎機能低下のリスクが、アルコール摂取量30g/日程度までは低下し、それ以上の摂取量ではほぼ横ばいだったことを発表した。

  • (左)飲酒量とタンパク尿のリスク。(右)飲酒量と腎機能低下のリスク

    (左)飲酒量とタンパク尿のリスク。(右)飲酒量と腎機能低下のリスク(出所:阪大Webサイト)

同成果は、阪大 キャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平教授らの研究チームによるもの。詳細は、栄養学に関する全般を扱うオープンアクセスジャーナル「Nutrients」に掲載された。

少量~中等量の飲酒であれば、まったく飲まないよりも健康に貢献し、腎臓病のリスクを低下させることがこれまで多数報告されていた。しかし、大量の飲酒が腎臓病に及ぼす影響を評価した研究報告は少なく、これまでのところ一定の見解を得られていなかったという。そこで研究チームは今回、アルコール摂取量と腎臓病のリスクを評価した疫学研究報告の網羅的な文献検索を行い、抽出された11研究の研究結果をメタ解析の手法を用いて統合することにしたとする。

その結果、タンパク尿(尿タンパク≧1+)のリスクは、非飲酒者と比較して、アルコール摂取量が12g/日以下の場合は0.87倍と低下するが、36~60g/日では1.09倍に上昇し、60g/日よりも多い場合はさらに1.15倍に上昇したとする。なお、アルコール飲料のおおよその目安としては、350mL缶のビールで14g程度、日本酒約1合で20g程度だ。

また、腎機能低下(糸球体濾過量≦60mL/分/1.73m2)のリスクは、アルコール摂取量12~36g/日で0.82倍に低下し、それ以上の摂取量においてほぼ横ばいだったという。なお、アルコール摂取量60g/日以上での腎機能低下のリスクを評価した疫学研究はわずかであり、今後さらなる研究成果の蓄積が必要としている。

研究チームによると今回の研究は、これまでに発表された疫学研究の結果を統合することによって、大量飲酒がタンパク尿のリスクであることを明らかにすると同時に、アルコール摂取量20g/日程度の適度な飲酒では腎臓病のリスクが低下することが示されたとする。そして、適度な睡眠や禁煙と同様に、飲酒もまったくしないのではなく適量を心がけることによって、心血管系疾患や死亡の重要なリスクである腎臓病の予防につながることが期待できるとした。