Scaled Agile-Japanは4月19日、大規模組織向けのアジャイルフレームワークであるSAFe(Scaled Agile Framework、セーフ)の最新版「SAFe 6.0」を解説するオンライン記者説明会を開催した。説明会では、新たにリリースされたSAFeのオンラインラーニングプラットフォーム「SAFe Studio」も紹介された。
アジャイルリリースに関わるメンバーの役割を再定義
システム開発を大規模に行ううえでのフレームワークからスタートしたSAFeは、2020年のSAFe5.0へのアップデートでビジネスのアジリティ向上にも適用範囲を拡大した。
SAFe5.0では組織のアジリティ獲得や、市場変化に対応できる体制構築のためのガイダンスがカバーされた。一方で、コロナ禍を経て、自社プロダクトやサービスをより早く提供することが企業の新たな課題になってきている。そのため、SAFe6.0では「フローの加速」に焦点を当ててアップデートを行ったという。
Scaled Agile-Japan カントリーマネージャーの古場達朗氏は、「市場変化が激しく、プロダクトライフサイクルも短期化する中で、より魅力的なプロダクトを競合に先駆けて提供するために必要なのがフローの加速だ。SAFe6.0ではビジネスを加速させるためのガイダンスが進化した」と説明した。
SAFeはリーンとアジャイルの考え方をベースにしており、企業がどのような工程でSAFeを導入するべきか示したインプリメンテーションロードマップを提供する。また、組織が獲得すべきスキルを7つのコアコンピテンシーとして提示し、開発における4つのコアバリューや、SAFe実践における10のプリンシパル(原則)も定義している。
SAFe6.0ではそれらがアップデートされた。また、プロダクト・サービスのリリースにあたって、ビジネス・開発双方から関わるメンバーの役割と責任を明確化した「責任ホイール図」も刷新された。責任ホイール図では、スクラムマスター、チームコーチ、ART(アジャイルリリーストレイン)など新たな役割も定義し、各役割の連携の要点も図で示している。
フローを加速する「8つのアクセラレーター」
SAFe6.0では、開発のバリューストリームのフローを加速する「8つのフローアクセラレーター」を新たに定義した。
アクセラレーターの適用方法は、チームフロー、ARTフロー、ソリューショントレインフロー、ポートフォリオフローとSAFeの各レベルで異なる。そのため、各アクセラレーターをバリューストリームに適用し、実践するうえでのテクニックなどを4つの記事で解説している。
米Scaled Agile 最高製品責任者のインバー・オーレン氏は、「フローの中では工程やバッチといった阻害要因が存在する。SAFe6.0ではそれらの要因を特定・改善し、バリューフローを加速するための存在として8つのフローアクセラレーターを定義した」と解説した。
このほか、テクノロジーとビジネスがより緊密にコラボレーションしてビジネスアジリティを実現するためのSAFeの活用パターンとして、「ビジネストレイン」「複合ポートフォリオ」「アジャイルビジネスファンクション」「アジャイルエグゼクティブチーム」の5つを新たに示した。
SAFe6.0ではソフトウェア開発にとって重要なテクノロジーとして、AI、ビッグデータ、クラウドを挙げており、それらを活用するための新しいガイダンスも公開している。加えて、SAFeにOKR(Objective and Key Result)を取り入れる際のガイダンスも拡充した。
SAFeの学習・実践・管理をサポートする「SAFe Studio」
今後はSAFe6.0のアップデート内容を学ぶためのトレーニングメニューのほか、スキルを証明する認定資格が提供される予定だ。また、日本語、フランス語、ドイツ語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語を含む多言語での提供も開始する。
トレーニングコースやオンライン学習コンテンツなど、SAFeの理解と実践のためのリソースを統合的に管理できるオンラインラーニングプラットフォームがSAFe Studioだ。
同プラットフォームは「SAFe Enterprise Subscription」というサブスクリプションプランとともに提供される。
プラットフォームではフレームワークの記事が統合して提供され、ポッドキャストでのラーニングも可能だ。また、従業員の関心や役割に応じて、記事などのコンテンツをキュレーションした形で提供したり、SAFe実践をサポートするアプリケーションを利用したりできる。
同プラットフォームでは、社内のSAFe認定者および取得スキルを統合的に管理できる。開発チームのマネージャーやリーダーは、同プラットフォームを用いて社内の認定者がどのチームに所属しているか把握することも可能だ。
「SAFe Studioは、SAFeの学習・実践・管理を企業の全事業単位で実践するために作られたプラットフォームだ。GDPR(General Data Protection Regulation)に対応するなど、エンタープライズグレードの機能とセキュリテイを実装している。現在提供している機能は全体の一部であり、今後も新機能のリリースを継続していく」とオーレン氏は語った。